ガンは癌にあらず --春ウコン免疫賦活剤が制する成人病--

第4章

第4章 試   論

        目   次

 4.1 試論(その一) 春ウコンは強く免疫を賦活

  4.1.1 春ウコンは広範囲の疾患に同時並行的に卓効

  4.1.2 春ウコンは健常人以上にヒトの免疫を賦活
   1)免疫力を高いレベルに賦活
   2)免疫系の構築と春ウコンによる治癒期間および免疫記憶
   3)「免疫力増強は癌治療で未達成」(権威の発言)は否定可能か?
   4)広範囲な適用拡大, 動物実験による確認とその限界
   5)有力な治療法の少ない疾患と免疫賦活,制癌剤の副作用軽減

  4.1.3 免疫賦活メカニズム・・・投与量に最適値(オプティマム)の存在
   1)免疫系の基幹部分に作用
   2)最適量(オプティマム)と免疫賦活の仕組・・・用法用量の重要性
   3)春ウコンの活性成分と免疫系の受容体
   4)多糖類による免疫賦活
   5)味覚と免疫系のオプティマムの類似性
   6)免疫賦活で癌を唯一抑えたW.コーレー
   7)漢方薬,天然物の生理活性

 4.1.4 プラシーボ効果を否定できるか?

 4.2 試論(そのニ)癌などの成人病は感染症,病原体は[ウイロイド・ライク]

  4.2.1 生命科学で言われていること
   1)DNA~RNA~蛋白質の関係
   2)形質転換
   3)クロマチン
   4)有糸期とクロマチン
   5)DNAポリメラーゼ

  4.2.2 癌などの成人病の多くは感染症・・・・治癒と再発は可逆的
   1)可逆性と感染症
   2)今後の感染症の確認法のあり方
   3)潜伏する病原体の減衰傾向

  4.2.3 癌などの成人病の病原体は[ウイロイドライク]
   1)欠陥遺伝子類と[突然変異]
   2)病原体[ウイロイドライク]の推測
   3)[ウイロイドライク]のイメージ
   4)[ウイロイドライク]による疾患の分類
   5)確認試験はPCR法
   6)[がん遺伝子]と[ウイロイドライク]

  4.2.4 治癒の速度と治癒率
   1)発症の直後(投薬前)の春ウコン法の効果
   2)長期投薬後(臓器治療薬損傷)の春ウコン法の対応

  4.2.5 疾患の再発と悪化速度に影響する要因

  4.2.6 コッホの三原則と感染症の確認試験
   1)微生物感染症の確認
   2)無生物的感染症の確認

  4.2.7 癌などの成人病発症の諸説と春ウコンによる抑止と治癒との矛盾

  4.2.8 生薬と漢方薬の復活は?
   1) 医薬の近年の歴史
   2) 現在の医薬のいくつかの課題と春ウコン

 4.3 試論(その三)家系は[ウイロイドライク]の垂直(母子)感染~感染,発症,分類
 
  4.3.1 体質と家系は垂直感染:[ウイロイドライク]⇔体形は遺伝:「遺伝子」

  4.3.2 癌などの成人病の感染,発症,治癒のメカニズムの推定
   1)感染と継代
   2)発症
   3)各種要因による免疫低下と春ウコンの効果, 広範な適用拡大を予測
   4)用法容量の数学モデルへの展開と疾患の発症,消滅
   5)疾患の回復と細胞の修復
   6)病原体DNAとRNAの選択的除去技術と万能細胞

  4.3.3 臓器親和性と疾患
   1)ウイロイドライクの臓器親和性
   2)多種類のウイロイドライク

  4.3.4 太古からのウイロイドライク類とウイルス類の集積:先天的
   1) ウイロイドライクは親から子へ・・・そして風土病
   2)合併症はウイロイドライクによる複数感染の高確率疾患

  4.3.5 新しいウイロイドライク類,ウイルス類の感染は水平感染:後天的
   1)新規なウイロイドライク,ウイルス源
   2)感染原因の拡大と生活習慣
   3)水平感染と感染力

  4.3.6 遺伝子とウイロイドライク,ウイルス類・・・・・いくつかの課題

 4.4 試論(その四)「加齢現象はウイロイドライクやウイルスの活発化」

  4.4.1 視力,聴力,嗅覚と感覚器

  4.4.2 うつ病と神経
   1)モノアミン仮説
   2)ストレスなどの免疫低下要因とうつ病

  4.4.3 記憶と外観
   1)記憶
   2)白髪・禿髪 
   3)皮膚と消化器

  4.4.4 広範な慢性障害

 4.5 試論(その五) 癌は悪化も回復も極めて速い

  4.5.1 癌などの発症と悪化・・・・・癌は免疫に極めて敏感

  4.5.2 癌は悪化も速いが回復も速い

  4.5.3 癌の転移

  4.5.4 なぜ, 春ウコンはほとんどの癌にきくのか

  4.5.5 なぜ, 春ウコンは誰にでも同じように効くのか

  4.5.6 なぜ, 癌からの回復は速いのか

  4.5.7 再発癌,転移癌も治まる

  4.5.8 癌治療後に長期健常のケース

  4.5.9 「癌化」と「癌の回復」への新解釈
   1)癌は細胞の異常増殖
   2)癌は細胞の異常化数の増加⇔成人病との類似性
   3)癌化⇔回復と悪性新生物

  4.5.10 アジュバント化学療法(骨髄抑制t))の回避理由と予防の重要性

  4.5.11 癌対策の要点(効用と限界)

  4.5.12 癌・成人病は恐くない?早期発見は可能か?
   1)早期発見の難しさ
   2)予防策が重要

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             第4章 試  論

 この章は, 第1章で得られた多くの知見から, 帰納法によって考えられることを組み立て, 断定的な書き方で「試論」としてまとめたものである. 専門家の方々からの忌憚のないご批判をお願いしたいと考えている.

 この本を書き始めた当初は, 「多種類の癌をはじめとする多くの疾患を, このようにすれば治まる」ということを書くだけで充分に意義のあることと考えていた. そして, なぜ治まるのかということにまで言及するつもりはなかった.

 しかし本書を書き進める間に, 癌以外に春ウコンで治まる疾患は, 細菌やウイルスのように病原体がわかっているものだけでなく, 原因がよく分からない多くの疾患が治まることが次第に明らかになってきた. そして, [原因不明の疾患の病原体の共通性]と[治癒のメカニズムの共通性]とがあり, これらが相互に関連しているように思えてきた.
また, 春ウコンを友人や知人に勧める場合, 本人が納得して摂取することが重要である. 試論ではあっても, [なぜ効果があるのか, どうすると効果がなくなるか, 抑えた後は何を注意すべきか, なぜ予防が大事か, など]を一緒に伝える必要があると考えた. さらに, 今後, 医療関係者が春ウコンを検討する場合にも, 効果・効能だけでなく, 納得できる理由が必要である.

 そして, その理由が[生命科学]でわかってきていることと矛盾なく調和することができるか, また, 多くの疾患が治まりにくいと説明している定説のどこと相違があるか, についても考えてみた.

 そこで, これまでに得られた知見をもとに, 多くの疾患に有効な理由, 疾患群の病原体の推測, 疾患の感染, などを[試論]としてまとめた. また, この試論に続けて, その根拠と関連する事項を述べた.

 以下に5項目の試論を提起したが, これらは相互に関連している. そのため, 根拠にあげた例や内容が, それぞれの試論に繰り返し出てくるので, 読みにくい場合のあることを前もってお断りしておきたい.

 今後, 多くの方々による実証によってこの試論が検討され, より確実なものとして明らかにされることを期待したい. また, 癌をはじめとする実証は, 始まったばかりと考えている. 多くの例が, 疾患を脱して健康な生活にはいり, 工夫をしながら数年~十数年間, この生活を継続している状況である. よって, 結論が得られた訳ではない. しかし, 第1章に紹介した有効例以外に, たくさんある原因不明の疾患を抑える可能性があると考えている. この試論が, 適用拡大のために何らかの手がかりとなり, 医学と医療の発展に資することも期待したい.

 副作用と後遺症がない春ウコンは, QOL(生活の質)に優れていて, 扱いやすい. そこで, 今まで経験している疾患の延長線上にある, 様々な疾患への応用が出てくると予測している. また, さらに, 試論の考え方が, 春ウコン以外の植物, 天然物の生理活性探索に拡がることもあわせて期待したい.

 

4.1 試論(その一)  

春ウコンは強く免疫を賦活

試 論 (その一)

 春ウコンの適量摂取により, 現在の医薬では治癒しにくいと言われている末期癌や成人病を初めとして, 広範囲の細菌系とウイルス類系の疾患を同時並行的に短期間のうちに抑えることができる. この多面性と同時並行性は, 春ウコンが免疫系に作用して, 免疫系を[健常者をはるかに超える免疫レベルに上げている]ことを示している.

 多種類の癌に極めて高い確率で卓効を示すのは, 春ウコンが個人差の少ない基幹的な免疫機構に作用していることを示している. 逆に言えば, 免疫系の基幹部分に個人差が少なく, また, 各種の癌と免疫機構の関係が極めて類似しているため, 春ウコンによって多種類の癌が高い確率で治癒するとも言える.

 また, 春ウコンを過剰摂取すると, 治癒効果を発揮しなくなる. 摂取量にオプティマム(最適値)が存在することから, 免疫賦活が[春ウコンの複数の有効成分と免疫系の多種類の受容体(サイト)の競争反応によって起こる]と予測できる. 30万以上もの化合物が制癌剤として基礎~臨床試験が行われた結果, 臨床的に極めて有効な制癌剤はないと言われているので, 単一物質での免疫賦活がむずかしいことも予測できる.

 一方, 春ウコンの摂取によって効果のある疾患の適応範囲は, 現在確認できた範囲を超えて, 更に拡大していくことが容易に予測できる.

 

4.1.1 春ウコンは広範囲の疾患に同時並行的に卓効
 春ウコンは, 疾患原因がはっきりしていない癌や成人病を初めとして, ウイルス性疾患のヘルペスや風邪から, 長期間にわたって治癒できていない細菌性疾患に至るまで, 広範囲の疾患に有効である. しかも, 多くの疾患を抱えている人でも, それらが同時並行で治癒していく.

 現在までに経験している有効例を表10に示す. これらの疾患群は, 末期癌や風邪を患った人たちが春ウコンを摂取した時に, 同時並行で副次的に治まった疾患である. 適応症はさらに多面的に拡がって行くことが容易に推測できる.

 この広範囲で多種多様な疾患の原因と春ウコンの治癒のメカニズムの関係を, 検討する価値は大きい. 春ウコンに含まれる活性成分は何か, 活性成分は単一なのかそれとも複数あるのか, 活性成分は身体のどの部分にどのように作用しているのか, など色々なことが考えられる. 活性成分は確定できていないが, 以下にそれらについて考察する.

表10  春ウコンにより治癒した適応症の発展と拡大

画像の説明

  イ)再発防止中、ロ)改善傾向

 

4.1.2 春ウコンは健常人のレベル以上にヒトの免疫を賦活

1) 免疫力を高いレベルに賦活
 春ウコンが, 体内の各種臓器に生じた色々な種類の病原が引き起こした疾患を, 並行して同時に治癒に向かわせている. これから次の2つのことが考えられる.

ⓐ 春ウコンの成分と反応する受容体を持っている臓器細胞が, 反応後に活性化して病原体をおさえることができる物質や細胞を作る. この物質や細胞が体液によって運ばれて, 病原体の活性を抑える.

ⓑ たくさんの種類の病原体が春ウコンの多成分と反応する複数サイトを持っていて, このサイトと反応することによって病原体が死滅する.

 春ウコンは, 細菌類やウイルス類および病原体不明の癌や成人病などの, 多種多様の病原体に効果を発揮している. しかし, 多種類の病原体が同じ受容体を持っているとは考えにくい. 春ウコンの多種類の成分が, この広い範囲のさまざまな病原体に反応して治癒をもたらしている, とも考えにくい. よって, 春ウコン成分の受容体を持っている臓器(器官)が, 多種多様な病原体(細菌類やウイルス類など)を攻撃できる機能を持っている<ⓐ>ということになる. これは, 免疫系細胞以外にはあり得ない.

 春ウコンが抑えた多種多様な疾患は, 健常者なら治まっている疾患である.また, 健常者の範疇にある人も罹患している蓄膿症のような慢性疾患も治っている. 春ウコンの摂取により, 加齢に伴って低下した免疫機能が発病以前の状況より良くなり, [健常者をはるかに超える, 高い免疫状態]の体になったと考えると, これらの現象は理解できる.
以上のことから, 癌などのこれらの疾患治癒は, 免疫機能の影響を強く受けていると推測できる. このことについて以下にいくつかの側面から考察してみることにする.

 また, 多くの疾患が治癒に向かう経過は似ている. このことから, 多くの成人病の病原体が引き起こす疾患のメカニズムが類似していると推測できる. その点については試論(その二)で改めて考察することにした.
  
2) 免疫系の構築と春ウコンによる治癒期間および免疫記憶
 感染性の疾患に罹れば, 疾患を抑えようとする免疫系の仕組ができてくることが知られている. そのため, 春ウコンの摂取で免疫力を上げさえすれば, 大方の感染症はすでに免疫系ができているので, 3ヶ月以内で抑えることができるようである. 発病後の初期の場合は, より速やかに治まる.

 暴走を始めた末期癌や転移癌でも, 同様に抑えることができる. このことは,癌は免疫系で抑えることができる感染症であることを逆に証明しているといえる. これについては, 試論(その二)(その五)で詳しく取り上げた. 癌や成人病の発症は, 免疫力が下がったことにより, 病原体が細胞に作用して発症に至ったと理解できる. 免疫力の低下は, よく知られているように, 加齢,過労,ストレス,寒さ,投薬(制癌剤,ステロイド等)などにより起こる. 免疫力が一定レベル以下まで低下したときに, さまざまな疾患が, 順次, 発症してくる.

 概括的に言えば, 細菌類やウイルス類による積年の疾患の場合には, 抗原抗体反応の基礎(免疫システム)ができているので, 春ウコンを摂取すると約1ヶ月で症状が退き始め, 3ヶ月でほぼ完治する. その点では癌や成人病も同じように見える. 一方, その人にとって新種の疾患を罹ったときには, 春ウコンを摂取し続けても免疫系のシステムができるまでに2ヶ月近くかかり, そこから春ウコンによる免疫賦活が有効に効き始めて完治に向かう. 本書で示した類天疱瘡の例(参照:1.5(1))はこれに当たると考えられる. また, 新種のインフルエンザのように免疫系(TLRなどイ))にある程度の類似の認識があるような場合には, 全く初めての疾患よりは短時間で治癒に向かうようである.

 一方, 抗原抗体反応の一般的な解説13)では, [免疫記憶]について, [一度罹ったら一生続く免疫と短期間にうすれる免疫について, 免疫記憶にかかわるリンパ球が全身分布か局所分布かで違いが出る]と説明している. C型肝炎の結果からは, [抗原が潜伏している間は抗体が存在し, 抗原が淘汰されれば抗体がなくなる]と考えられる(参:1.5(2)). [身体が記憶しているのではなく, 潜伏する抗原に対する単純な反応であり, 抗原が体内にある限り免疫系は抗原に比例して抗体を作り, 準備された状況にある]と解釈できる.

 また, 抗原潜伏の可否は, 個人の免疫状態と抗原の特質(臓器などへの親和性)で決まると考えられるので, 一般的に免疫記憶といわれていることの個人差は, 大きいことが予測できる. 結核への感染を調べるツベルクリン検査で, 陰性と判断されてBCG接種を受けても, 翌年には再び陰性と判定された経験のある人はたくさんいる. 免疫力が高ければ, BCG接種程度の結核菌はすぐに淘汰されてしまうからである. 免疫記憶の個人差が大きい例の一つといえる.
 イ)参照:4.1.3の3)

3) 「癌治療での免疫力増強は未達成」(癌の権威の認識)は否定可能か?
 免疫に関連して, 抗癌剤治療の世界的権威の一人と言われているニューヨーク大学フランコ・マギア教授がインタビュー1)のなかで「実際の癌治療において免疫力の増強が期待される効果を生み出したことはない」との見解, 国立がんセンター名誉総長・垣添忠生氏の講演7)のなかでの「サプリメントや健康食品で癌を予防できるものはない」という説明, 厚生労働省の班研究報告書で「健康食品の摂取だけで癌が縮小した, もしくは生存が延長したということをヒトで証明した臨床試験は, いずれの健康食品においても検索されませんでした」2)と報告, などに代表される捉え方が, 現在の世界的な癌研究の権威の共通認識である.

 これにら対して, 春ウコンは臨床的に免疫系を健常人以上に上げることができた稀に見る医薬組成物と言える. 免疫力のレベルは中高年になるとピーク時の1/3~1/4ほどに落ちると言われているが, 春ウコンはこれを補うレベル以上に免疫力を賦活させているということができる. [免疫力を上げれば良い]と推測できていても, 今までは臨床的に確かな手段がなく, 免疫賦活が簡単にはできなかったのである. しかし, 春ウコンを使用する方法で広範な可能性が見えてきたといえる.

 一方, 出版物・文献などを調べると, 日々草3), オリーブの葉の抽出物4)およびノニ5)の主作用には, 春ウコンに極めて近い生理活性(癌・糖尿病などの改善効果)が見られる. 「臨床的に免疫力を上げるものはない」という, これまでの共通認識とは異なる. 春ウコンに限らず, これらの植物に難病対策の糸口が見える.

 また, これにとどまらず, 免疫賦活剤は沢山あると推測できる. このことは後述する生薬・漢方の項で理解いただけると思う. これらの生理活性物質の優劣は, 主として[効果の大きさ, 効果の安定性(製品の力価の安定性・再現性, 活性成分溶出の安定性など), 副作用の少なさ]などによって決まってくるが, 春ウコンはこれらの点で満足できるものである.

4) 広範囲な適用拡大, 動物実験による確認とその限界
 [ヒトの免疫賦活物質についての確認は, ヒトでのみ可能]である. これ以外の動物実験やインビトロ実験での確認の意義は, ヒトの臨床を補佐するための部分的なものになる. ただ, ヒトの免疫系の情報がここまで集まると, 動物実験による確認の意味が明らかになり, 動物実験による確認実験の方針が立てやすくなる. 人間を使った研究ができないはの当然であるが, 今後の詳細な研究は動物実験を駆使することになる.

 医師の手を離れた末期癌の人たちに春ウコンを勧めた結果として, [ヒトの多くの疾患と免疫系について考察できる, 多数の情報]を得ることができた. 意図したわけではないが, ヒト免疫系を免疫賦活したときの効果効能についての結果が, 自然と集まった. その結果は驚くようなこととなった. しかし, 今まで得られた多面的な結果は, 抑えることができる全疾患を解明する途上にある. 今までの結果から, [免疫賦活が有効な疾患の範囲は, 更に大きく拡がる]ことが, 容易に予測できる.

5) 有力な治療法の少ない疾患と免疫賦活,制癌剤の副作用軽減

 ① 癌は, 「免疫監視説」か, 「免疫逃避説」のいずれか?
癌については, [バーネットの免疫監視説]にもかかわらず癌が発生することに対して, 「癌は免疫から逃れることによって起こる」との[逃避機構(sneaking through)説]や[多段階発癌説]などがある. 癌は自覚症状を伴う末期に近づくと回復が難しいと見られているので, 一般的には[発癌→増殖→悪化]の一方通行の説などで説明されてきている. また, 最近ではミクロな解明がますます進み, [遺伝子のコピーミスは当然であり, 癌にならないほうが奇跡],[パスウェイを抑える分子標的薬をすり抜ける道を考え出す癌],[遺伝子異常は各人が別個],[低酸素誘導因子HIF-1の発見],[正常細胞の裏切り, 癌細胞を援助],[癌幹細胞説(親分子分癌)z)]などが, 研究結果を解析して提案されている.

 しかし, 春ウコンによって癌が治まってみると, 癌が免疫をスリ抜けるのではなく, また, [親分子分関係の癌]があるようにも見えない. [ [免疫機能]か[免疫の監視機構]のどちらかの働きが悪くなることが癌の増殖を許すことになる, と考えることができる. いずれにせよ, 癌は免疫系の機能低下が原因となって悪化し始める. しかし, 春ウコンによって免疫力が大きく上がると回復する.

 これは[免疫系が非自己(感染源)と認識している癌]を免疫力が抑えた, としか考えられない. [逃避機構説]などには反するが, [免疫系は癌を非自己としっかり認識していて, 癌は免疫系から逃れることはできない]ことになる. これらのことから, 春ウコンによって癌が治癒することで, 現在は話題とならない[バーネット説]の正しさが証明されたといってよい. なお, 癌については諸説あるが, 後に試論(二)のなかで, それらを含めて検討してみた. また, 試論(五)で, 癌について総合的に検討し取りまとめた.

 ② 「自己免疫」疾患は存在しない?
 アレルギー性疾患の花粉症,喘息,アレルギー性発疹,アトピー性皮膚炎,じん麻疹, および, 自己免疫疾患と言われている膠原病のシェーグレン症候群,関節炎,へバーデン結節などが春ウコンで軽快している.
「免疫には細胞性免疫Th-1l)と液性免疫Th-2m)があり, Th-1を活性化しTh-2を抑制することにより, 多くの疾患から回復する」,「樹状細胞n)はTh-2応答を抑制しTh-1応答を高める」と言われている. また, 「アレルギーなどの疾患はTh-2が上がることにより起こる」と言われている. これらの自己免疫疾患の治癒は, 「春ウコンが樹状細胞を活性化してTh-2をTh-1側に寄せてTh-1免疫を活性化した」と解釈することも可能である.

 しかし, これらの疾患も, 春ウコンが免疫を賦活した結果, 単純に病原体を抑えて症状が治まっているように見える. すなわち, ⓐアレルギー性疾患,じん麻疹などは, 肝臓,腎臓,膵臓などの疾患を抑えることにより, 解毒機能が大きく向上した結果として抑えることができた, ⓑシェーグレン症候群は涙腺,唾液腺,味蕾にある病原体を免疫系が抑えたので分泌が復活した, ⓒヘパーデン結節と関節炎は[関節内で痛みの原因となる蛋白質増殖(病原体RNAが関与)を抑えることができた], とも考えられる.

 肝臓,腎臓,膵臓などによる解毒限界を超え, 身体にとっての異種蛋白質(非自己)などが体内を回り始めたとき起きる症状がアレルギー反応, と見るとわかりやすい. 異種物質に対して起きる抗原抗体反応が発疹(凝集反応)なのであろう. また, アトピー性皮膚炎も同様の疾患と考えられる.

 自己免疫疾患の定義からすれば, シェーグレン症候群は数十日の短期間で簡単には治まりそうもない. また, なかなか治らなかったアレルギー湿疹が簡単に治ったことも理解し難い. これらの疾患と診断されたことが誤診だったとは思えない.

 自己免疫系のこれらの疾患も, 単純な感染症と考えられそうである. ただ免疫賦活法がなかったので抑えることができなかっただけであろう. 症例数を増やして再現性を確認する必要があるが, 治療法の可能性が見えてきた.

 ③ その他の原因不明の症候群,制癌剤の副作用軽減
 [免疫系のどの部分がどのような理由で不全になっていくのか], [加齢との関係は何か], など, その原因究明は疾患と免疫系と春ウコンとの関係で興味深い.

 しかし, さらにこの事実を中心に研究を深めていくと, 原因と治療法のわかっていない成人病領域の多くの疾患と[△△△症候群(シンドローム)]といわれる疾患のいくつかに, 春ウコンは解決の道を示せるのではないかと予測している.

 制癌剤の副作用軽減については, 1.2に簡単に述べた.

 

4.1.3 免疫賦活メカニズム・・・投与量に最適値(オプティマム)の存在

1) 免疫系の基幹部分に作用
 春ウコンの広範囲の適応性から見て, 春ウコンは免疫系の広範囲な活性をつかさどる基幹部分に作用していることを示している. どの人にも殆ど同じ効果を示すのは, ヒトの免疫系, とくに, 基幹部分の個人差が全くないからだと考えられる. 特に, 基幹部分の差異は全くないことと, 各種の癌と免疫系との関係が同じために, 春ウコンによる免疫賦活で, 多種類の癌からの極めて高い回復率を示すのであろう.

 加齢と共に免疫機能の低下が大きくなり, 癌, 糖尿病をはじめとする多くの成人病系疾患が発現してくる. 癌や糖尿病などの成人病, 細菌性の感染症, 原因の不確定な類天疱瘡に至るまで春ウコンで治まるところをみると, これらの疾患は免疫系の機能不全が原因であると, 容易に推測できる.

 春ウコンで回復する免疫系の機能(メカニズム)を推測してみると, ①免疫細胞を産生する組織(B細胞やT細胞を産生する骨髄),②これら①の細胞を活性化する組織(胸腺など)などの基幹的臓器,③機能劣化した免疫細胞の攻撃力を増加(マクロファージ, キラーT細胞など何種類かの免疫細胞に共通するサイト(受容体)に春ウコン成分が同時に入る,④異物を感知する感度の向上(TLRなどの鋭敏化),⑤伝達力の向上(TLRからの指令の伝播力, 樹状細胞の活性化など),⑥宿主での継体の抑制(コピーの抑制),⑦抗体生産機能の増強,などが考えられる.

 春ウコンの広い活性から見て, 免疫細胞(T細胞やマクロファージなど)を個別に活性化しているのではなく, 免疫細胞全般にかかわる骨髄や胸腺を賦活化していると見た方が, 妥当と考える. [春ウコンは個別の免疫細胞を賦活化していない]と, 春ウコン成分と免疫細胞との直接反応を否定できる材料があるわけではない. しかし, これだけ広い範囲の免疫賦活化を見ると, 多種類の免疫細胞個々を賦活化するのではなく, 膨大な量の免疫細胞を賦活化し続けることができる胸腺のような臓器を活性化している, と見るのが自然であろう.

 また, 春ウコンは脳下垂体腫瘍に即効的効果を示していない. 単純に結論は出せないが, [下垂体腫瘍が他の癌と異なり時間がかかるのか], [免疫賦活の影響が脳には届かないのか]は, さらに経過を追って判断していくことになる. また, 脳関門は精緻にできているので, ヒトの生体成分以外はここを通過しにくい. [春ウコンの成分が免疫細胞の受容体と反応して活性化しているとすると, 多分, 免疫細胞は脳関門を通過できない. よって, 変化はなにも起こらないということが懸念材料である], とも考えた.

 とりわけ胸腺は, 加齢と共に縮小して行き, 死を迎える. よって, 胸腺の大きさと活力に, 免疫力はある程度比例していると推測できる. 春ウコンは, 活力の落ちてきた胸腺を活性化(能力増強)している可能性は大きい. また, 通常, 免疫細胞の活性化を胸腺が行っていることから考えても, 結論は同じになるだろう. たぶん, これが, [LAK療法a)などを含めた免疫細胞療法による癌治療のむずかしさ]と関連する課題, でもあるのだろう.

 以上を含め, 免疫賦活のメカニズム解明は, 大変興味ある今後の課題である.

2)最適量(オプティマム)と免疫賦活の仕組・・・用法用量の重要性

 ① オプティマムの存在
 春ウコンの摂取量と活性効果との間には最適量(オプティマム)がある. 糖尿病(1.3.(1))の例にあるように, 「3g/日で効果があり, 15g/日では全く効果がなくなり疾患が少しずつ悪化し, 5g/日に戻して卓効が再び出た」という結果となった. 摂取量が多くなった場合は, 特段の毒性や副作用もなく, 単に効かなくなるだけのようである.

画像の説明

図10  投薬と効果の関係 (単一成分系と多成分多サイト系の比較)

 ② 免疫賦活のメカニズム
 生理活性にオプティマムがあるということは, [春ウコンには免疫系を活性化するのに必要な複数の必須成分が入っている. これが免疫系の何種類かの受容体(サイト)にバランスよく入ったときに免疫系は大きく活性化する. 春ウコンの過剰摂取で活性が低下することは, 免疫系細胞の複数種類ある受容体(サイト)に, 大過剰にある複数の必須成分のうち, 反応性の強い成分が競争反応で独占的に受容体に入るので不活性となる]と予想できる. この結果から, 1.7(1)で考えた多くの事項は消えることになった.   

画像の説明
  図11 「春ウコン多成分と免疫系多種受容体の競争反応」のイメージ図

 すなわち, 摂取量が少ないうちは成分量に比例してサイトと反応して, 活性成分が有効に使われ, 免疫賦活をしている. サイトに対して過剰量を摂取すると, 平衡反応で有利な成分, あるいは, 反応速度の大きな成分がサイトの大部分を占めることになり, 免疫賦活に必須な複数成分が十分にサイトを占めることができなくなり, その結果として活性が下がってくるのだろう.

 筆者Aはかつて免疫賦活剤(β-1,3-D-グルカン系)の開発段階の臨床試験で春ウコンと同様のオプティマム現象を経験したことがある. この符合は, [免疫賦活が多成分系で起こっていることを示唆している]と考えている.

 体内の重要な信号は, 単一物質では発信されないようにできている. ひとつの物質で簡単に強い信号が発信されると, 身体は制御し難くなることも起こるので, これを避けるような仕組みができているのだろう. 味覚についても類似した生理現象があるので, この節の5)に示した. これらの仕組みは, 免疫賦活物質の探索などでは重要な留意点となる.

 ③ 用法用量を決める要因
 どの程度で過剰量になるかは今後の検討事項となる. しかし, 粗い服用方法で春ウコンが効果を発揮していることから, ピーク(有効量)の巾は大きいと考えている. このことは, 春ウコンの摂取量が必要最小限を越えていれば多少の誤差があっても許容されることを示している. 大まかな使用量でも効果が確保できる, 使いやすい免疫賦活剤である. また, 春ウコンの必須成分の溶離する順序や速度などと免疫系細胞のサイトとその成分の結合状況は, メカニズムを考える上で見逃せない要素と考えている.

 単一成分の薬の場合は, 薬の過剰摂取で効果が失われることはなく, 余分な薬が体外に排泄されるだけである. 一方, 春ウコンにはオプティマムがあることから, 1日量を一度に全部を摂取したのでは, 単位重量当りの効果が小さくなる. 大きな効果を得るためには1日の間に何回かに分けて摂った方が良いことが分る. よって, 図12が, 多少, 歪んだ形となる. このように, 単一成分系の医薬とは, 摂取に当たっての注意の仕方が, 当然, 違ってくる. 疾患が悪くなってくると薬剤を少し多量に摂取したくなるのが一般的な感覚である. 摂りすぎが無効につながるこの種の生理活性物質は, 用法用量などについて医師の指導が必要となる.

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図12 「春ウコンの摂取量・用法用量と効果の関係」の想像図

 また, 高齢者の場合に, 壮年の場合の半量程度で大きな効果を挙げる例が出た.

 高齢化により免疫力が落ちたときに摂取量を減量しないと, 過剰摂取が起こることがオプティマム現象から推測できる. しかし, 4.3.2の3)の図20にある「τとaの数値」をどのように決めるかは今後の課題である. 例えば, 胸腺の大きさや活性度の影響を受ける可能性があるので, [春ウコンの摂取量/日=α( g/日)]を, 試みに, つぎのような式に表わしてみた.

α= (2×[各自のτ]/4τ)([各自の体重kg]/10kg)( g/日)
[各自のτ]:壮年(50歳)を2τと仮定(→将来は測定法を開発)

 春ウコンは広い範囲で活性があるので, τを想定しながら摂取量を決め, 効果を見ながら摂取量の増減をさせても大きなリスクはないと言える.

 免疫活性を上げる仕組は複雑にできているようである. 米国を中心とした制癌剤の開発で, 30万種類以上の化学物質を調べたなかで, 癌を抑えるほどまで免疫を上げることができた物質は見つかっていない. これは, 一つの物質が特定のサイトに作用しただけでは免疫系は十分に賦活できず, 反応性の異なる何種類かの物質が何種類かのサイトに同時に作用して, 初めて癌を抑える程度にまで活性化のメカニズムが動き始める, と考えられる. 免疫賦活剤(制癌剤を含む)の探索は, [複数成分の組み合わせ]という, 従来路線と抜本的に異なる方向に踏み出すことで, 大きな成果が得られることになるだろう.

3)春ウコンの活性成分と免疫系の受容体
 オプティマムがあることからわかることは, 春ウコンの一成分を取り出して作用させても免疫系の活性化は起こせないということである. 春ウコンで糖尿病が良くなった人が, クルクミン含量の多い秋ウコンを摂取したところ, 糖尿病を悪化させてインスリン治療に入った. このケースを考えると, 春ウコンの含有成分は, 癌や糖尿病などを抑えるために必要な[理想に近い成分バランス]を持っていると考えられる.

 ウコン(秋ウコン)というとクルクミンが活性成分として話題となる. 2004年に, 米国NIHでもこれを取り上げ, [4プロジェクト(癌の3テーマとアルツハイマー)]6)を進めた. クルクミンも免疫細胞のサイトを抑える物質の一つである可能性を否定できないが, クルクミンだけを取り出して摂取しても免疫の大きな賦活化は得られないと考えている(なお, 2008年にこのプロジェクトは中止されたという情報があった. 糖尿病患者がウコン摂取で効果がなかったことからも, 中止原因をある程度は推測できる).

 ウコン(秋ウコン)とキョウオウ(薑黄:春ウコン)の外観は似ているが, 分析結果を比較する, と表10のように明確な差異があるイ)ロ). また, 春ウコンと秋ウコンの生理活性には明らかに差異があることを経験している(参照:1.3(1)). また, M.D.アンダーソンの記事[カレーのスパイスを新薬に]8)に, 特定業者のクルクミン8g/日をがん患者に摂取させた, とある. 効果についての記述がないので比較はできないが, その後, 大きな話題となっていないので結果は不明である. 今後の比較研究に委ねたい.

 クルクミン類, セスキテルペン類, 未知の成分を含めた活性成分とその含量の違いが, 免疫系に及ぼす大きな差異となって現れると考えている. そのメカニズムなどの詳細は, 今後の研究を待つことになる.

表11  ウコン類の分析結果イ)ロ)

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     イ)(財)日本食品分析センター:高速液体クロマトグラフ法・ソックスレー抽出法・直接灰化法
     ロ)松尾 健ら:広島県保険環境センター研究報告,No10,7(2002)

 成人病のなかには, 春ウコンだけでは十分な効果が得られないものがあるかも知れない. 春ウコンをベースとして, 併用すべき生理活性剤の検討をその周辺に広げることが得策と考える.

 春ウコンに含まれている幾つかの活性物質が免疫系細胞のどこに作用しているかを確定するには, 今後, 膨大な研究が必要になる. 例えば, 免疫系のどのような受容体(サイト)と成分の何が反応するのかは, 大変興味があるが, 後日の研究に委ねたい. また, TLR(Toll-like Receptor:トル様受容体)のTLR-9, TLR-7, TLR-3などからの情報をT細胞やB細胞など免疫細胞の活性化につなげる必要がある. 春ウコンがここにどのように作用しているかにも興味があるが, 現段階では全く推測できていない.

 しかし, [免疫系が, 〈細菌,ウイルス〉と〈癌,成人病の病原体〉とを同列に並べて非自己と認識している]ことは, 癌や成人病の発症についての諸説との比較のうえで極めて重要なことである.
 
 以上のことから, この項の最初に述べたことの繰り返しになるが, 免疫系細胞を賦活化する器官または多種類の免疫系細胞にある受容体に, 春ウコンに含まれている何種類かの活性成分がバランス良く反応した時に, 免疫活性がピークに至る. このため, ピーク量を超えて春ウコンを過剰摂取すると, 反応性の強い活性成分が免疫系のサイトを抑えることになり, 免疫活性は低下する. 癌や糖尿病に限らず, 多くの疾患でもこのことが起こると推測できる. 単一成分系の医薬を過剰摂取すると, 過剰量が排泄されるだけになるのと, 大きな違いがでる.

4)多糖類による免疫賦活
 春ウコンに限らず, 免疫療法剤は似たような仕組が要求されると推測している. 1980年代後半, ハーバード大学のジョイス博士はβ-1,3-D-グルカンがマクロファージ細胞膜上にあるCR3受容体と結合し, マクロファージを活性化すると発表している. しかし, この活性化は癌を始めとする疾患を抑えるほどに免疫力を上げることができず, 治療の面からは大きな成果につながらなかったようである.

 ジョイス博士の研究も, 当初のサンプルには免疫活性があったと推測している. CR3受容体に結合するβ-1,3-D-グルカン以外に他種の受容体と結合する他の成分があり, その結果, 免疫賦活が起きたので注目したのだろう. 実験材料の精製度が上がるに従って免疫賦活力は下がったものと思われる. 精製段階で抜けていった他の成分としては, 精製条件でβ-1,3-D-グルカンと近い挙動をする物質, 例えば糖タンパクなど, ではなかったかと考える. 逆に, 複数成分を持たない免疫療法剤に効果を期待することは難しいようだ. このことからも菌糸培養によって作った純粋のグルカンは, 免疫活性が極めて小さくなると予想される.

 また, 癌の民間療法剤にキノコ類を原料にしたものが多い. 効果がないわけではなく, 再現性に問題があるのであろう. そのため, [どうも信用できない商品]として疑問符がついていると思っている. ①天候による成分変化,②産地による活性の差異,③製品の製造条件,④有効成分の抽出条件,などによって, 主成分グルカン類の含量や分子量, および他の有効成分の含量などにバラツキが出るだろう. これが活性の不安定につながる可能性がある.

 一方, 原料天然物の天候による出来具合や生産ロットによる差異を吸収して,製品中の多くの有効成分を一定の割合として一定の活性を出すこと(力価の安定性)には, かなりの技術力が必要となることも確かなことであろう. これと比べて, 春ウコンの活性は, 2.1(6)で述べたように安定している. 性能が安定した原料の組み合わせが, 品質管理上の重要事項となる.

 このような視点から, 癌の民間療法・漢方薬・既存の免疫療法剤を見直してみる必要がある. [新しい免疫活性化機構]と[新しい免疫賦活剤]の発見につながるだろう.

5)味覚と免疫系のオプティマムの類似性
 味覚についても免疫系と類似したことが起こっている. ある特定濃度のグルタミン酸ナトリウム, イノシン酸ナトリウムおよびそれらの混合物の水溶液の[うま味]を測定すると, 2物質の1:1混合物が最も強いうま味を示す. これを[相乗効果]と説明している.

 味蕾(みらい)の2種類のサイトを2種類の物質が夫々きれいに抑えたときに強い刺激として伝達されるとすると, 免疫賦活でもこれに近い現象が起こっていると考えることができる.特定濃度と特定割合以外は強いうま味を感じないが, 春ウコン摂取の過不足によって効果を発揮しないことと類似の現象である, と解釈できる.

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グルタミン酸・イノシン酸ナトリウム塩混合物の相乗効果(うまみの強さ)

 

6)免疫賦活で癌を唯一抑えたW.コーレーイ) 
 [コーレー説]のように, [丹毒のような病原を体に入れて, それに対する免疫を活性化させ, この免疫力を使って癌を抑える方法]もある. この方法は, 免疫力を上げて癌を抑えることを示した唯一の方法である. リスクは大きいが, 免疫と癌との関係で極めて興味のある方法である.

 話はやや横道にそれるが, コーレー説の延長線上から推測すると, 「初期の癌を手術して取り除いてしまうと, 癌を叩こうとして活性化していた免疫系の矛先はたくさんある癌の小さい芽に向かい, これらを淘汰してしまう」と考えることもできる. 初期の癌の場合は, 手術後の処置に制癌剤を使わなくても, 癌の芽まで治まってしまう可能性があるように思われる.

  イ)ウイリアム・コーレー(W.B.Coley,1862~1936)

7)漢方薬,天然物の生理活性
 30年以上前の話になるが, 欧州の著名な製薬企業ウエルカム社が漢方薬に含まれる生理活性物質を大々的に研究したことがある. 結論は, [漢方薬の成分には見るべき生理活性物質はなかった]というものであった. 漢方薬から, ジキタリスやモルヒネのように強い活性を示す特長のある物質の発見を期待したようである. そして, 漢方薬から抽出した単一成分では, 見るべき生理活性を持った物質は皆無という結論だったのだろう.

 漢方薬は確かに薬としての効果を出している. そのため, ウエルカム社の結果を聞いた当時は, [有効成分がない]という結論を理解できなかった. 春ウコンの結果から眺めてみると, 漢方薬は多成分が多くのサイトと反応した結果の生理活性効果であり, 「免疫系の色々な部分に作用してそれぞれの疾患を抑える」と理解できるようになった.

 また, 伏谷伸宏博士(東京大学教授名誉教授, 現・北海道大学客員教授, 天然物化学)から, 「天然物の研究者が生理活性を調べている時に, 各種の分画手段を使って単一成分に分けていくと, 当初測定されていた生理活性が, 全て分画成分の中から消えてしまうことがしばしば起こる. 春ウコンが癌に効いたのなら, 当面, そのままの状態で摂取し続けたほうが良い」ということを教えて頂いた. 1990年頃のことである. その後の経過を考えてみると, 春ウコンの活性も[単一物質で起きてくる生理活性ではない]という証が出てきた. 回り道をすることなく成果が出て来つつあるので, 伏谷博士の指摘は的確で貴重な情報であった.

 ウエルカム社の漢方薬についての研究も, 漢方薬から純粋な有機物を単離して調べた結果, これが持つ効能を再現できなかったのだと思う. 同社の研究成果が報道された時, 多くの研究者の間に, [漢方薬には見るべき活性はなさそうだ]との考え方が浸透して行った. そして, 酵素阻害剤の研究が加速されたのもこの頃からである.

 漢方薬の効果を確かなものと認めて, 漢方薬から単離した有機物を組み合わせて生理活性を再現する研究に入っていれば, 結論は異なったものになっていたと考えている. そして, 新たな医薬の領域が創出され, 医薬・医学に対する考え方が変わっていた可能性が大きい(参照:4.1.3の2)③).

 なお, 天然物から活性物質を単離して, 結晶化または油状化すると, 溶解性が全く変わってしまうものもある. 自然の状況にある化合物が徐々に溶離してくる時には溶液(血中など)に溶けだすものでも, 単離すると物性がかわり, 天然物と同じ溶解性を実現することは難しくなることもしばしば起こる. 自然のままが良いとされる理由は多々ありそうである.

 

4.1.4 プラシーボ効果を否定できるか?
 「春ウコンの効果はプラシーボ効果イ)ではない, と言い切れるか」と聞かれたときに, 思わず「末期癌にプラシーボ効果をテストすることはできない」と答えたことがあった. しかし, プラシーボ効果で免疫力が上がることもあるので, よく吟味しておくべき課題であろう.

 今までの例から考えてみると, 肺癌(1)のD氏, 糖尿病のR氏の例から, 春ウコンの効果は[プラシーボ効果ではない]と証明できたと考えている.

 <肺癌(1)のD氏の例>

  • ①多くの情報の中から玄米療法を選んでやっていたが効果がなかった.
  • ②いろいろなことを言ってくる人たちの一人が春ウコンを持ってきた. 大した期待もなく始めて癌に効果が現れた.
  • ③肺癌が消えると, 春ウコンが抑えたとは思わず, 再発して初めて春ウコンの摂取を継続したところ, 再び肺癌が消えた.
  • ④D氏は肺癌再発を春ウコンが抑えても, 近代医薬に期待した.
  • ⑤春ウコン以上に期待した「イレッサ」の臨床試験に加わり, 期待した成果が得られず, 結果として極めて不幸であったが逝去された.

 D氏の場合, 本人は春ウコンの効果を必ずしも信じていた訳ではなかったが, 春ウコンが肺癌に大きな効果を出していた. 玄米食や期待したイレッサで効果がなかった一連の流れを見ると, 春ウコンの効果はプラシーボ効果ではなく肺癌にはっきり効いていたと言える. よって, プラシーボ効果否定の材料である.

 <糖尿病のRDさんの例>

  • ①風邪予防と思って春ウコンを摂ったところ, [糖尿病を抑える]という予測もしない結果となった.
  • ②糖尿病が治ったと思って春ウコンをやめたところ数年で再発した.
  • ③ウコンで治ったことを思い出し, 期待しながらウコン(秋ウコン)を急いで摂ったが効果なく, インスリン治療に入ることになった.
  • ④インスリン治療中に, 高価で効きそうだというウコン・ウコンミックスを摂ったが顕著な効果はなかった. 春ウコンに切換えてヘモグロビンA1cが急速に下がった.
  • ⑤誤飲ではあったが, 春ウコンを大量に摂取して効果がなくなった.
  • ⑥インシュリンを減量すると, これに応じてヘモグロビンA1cが上がった. 春ウコンをそのまま続けていると, 6ヶ月後に予期しなかったことであるが, ヘモグロビンA1cが急に下がり始めた.

 R氏の場合, 考えてもいなかった[糖尿病に大きな効果]を得た. 治ったと思った糖尿病が再発した. 期待を持って摂ったウコン(秋ウコン)と高価なウコンミックスは, ともに効果を発揮しなかった. 春ウコンに変えて大きな効果を得たが, 過剰摂取で効かなくなった. インスリンを減らして血糖値は上がったが, 9ヶ月したところで予期しない効果が出た.

 このように, D氏とR氏に予想もしていない結果が次々と導き出されたということは, 春ウコンが明確な効果を持っていることを示している. これらから, プラシーボ効果でないことを証明できたといえる.
  イ)偽薬効果:心理的な治療効果. 薬の効果判定の際に, 二重盲検法で使う偽薬(主剤を配合してい
   ない外見上は見分けがつかない薬剤).

 

4.2 試論(そのニ) 

癌などの成人病イ)は感染症,病原体は[ウイロイド・ライク]

                イ) [成人病]とした理由を下記の試論(その二)で説明

試 論 (そのニ)
 
 多くの癌と成人病は, 春ウコンの短期間摂取後に治癒状態となる. しかし, 春ウコンの摂取をやめると, 治癒した末期癌・成人病など広範囲の疾患が再発する. よって, これらの疾患は, 免疫系が非自己と認識して発症を抑えている[感染症]である. 感染症だからこそ, 春ウコンによる免疫賦活で抑えることができる. また, 摂取を中断すると再発するので, 春ウコンの短期間摂取では病原体を完全に取り除くことはできていない. しかし, 摂取を長期間続けると再発の頻度は[減衰傾向]を示す. これは病原体の減少を示している.免疫力は諸要因で簡単に減少するが、大きく上昇させるためには強力な免疫賦活剤が必要となる。

 この病原体を, 植物の病原体ウイロイドのように裸のDNA, RNAに近い物質と推測した. これを総称して[ウイロイド・ライク(ヒトウイロイド)](仮称, 以後はウイロイドライクと略記する)と呼ぶことにした. また, ウイロドライクには臓器親和性があり, 固有臓器を宿主として継代している. 再発過程から考えると急性~慢性の多種類がある.

 ウイロイドライクは, ヒトの免疫状況に応じて極めて敏感に反応する. 免疫力の高低に応じて, この疾患発症の可否が決まる. ウイロイドライクを病原体とする疾患は, 免疫力が高い状態では発症しにくいので, 感染症として見逃してしまうことが多い. よって, 感染症の科学的評価法と言われる[コッホの三原則]には, 免疫力が高い状態にある健康な動物を使うので, ウイロイドライクやウイルスの評価法として適切な方法といえない.

 癌遺伝子と言われる核酸類は, DNAポリメラーゼによる校正,修復が不能なDNA類なので, ヒトの遺伝子とはいえない. 免疫系が非自己(異物)と認識している病原体であり, ウイロイドライクと部分的に重なる.

 ウイロイドライクは, 4カテゴリー以上(細胞の分泌機能の阻害, 解毒機能の阻害, 細胞分裂の促進, 蛋白質合成の促進, など)に分類できる. 加齢が大きな要因となる免疫力低下で, これらの病原体による疾患は発症する. よって, ウイロイドライクによる疾患を[成人病],[免疫病]とした.

 癌の原因については, [突然変異遺伝子の蓄積説],[免疫逃避機構説],[癌抑制遺伝子再生不能説],[免疫監視機構説]などの多くの説が提起されている. 春ウコンで免疫賦活をして癌を抑えてみると, [免疫監視機構説]を提唱したバーネットの説が正しいといえる.

 また, 優れた抗ウイルス薬のない現在, 春ウコンはウイルス系疾患の有力な解決策となる.

 

4.2.1 生命科学で言われていること

 生命科学の常識11)と考えられている多くのことのなかで, この試論に関係があると思われる事実5項目を, 最初に挙げてみる.

1)DNA~RNA~蛋白質の関係
 DNA,RNA,蛋白質の関係を図示すると下記のようになる. DNAは主として細胞の核内にあるが, 親DNA鎖を鋳型として子DNA鎖ができる. DNAの塩基配列はRNAに写しとられ, 核外にDNAの情報を運ぶ. このRNAをmRNA(伝令RNA)という. このRNAが蛋白質合成をするリボソーム粒子に結合し, tRNA(転移RNA)という情報解読RNAによってアミノ酸配列情報に翻訳される.

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図13 生体内で形質転換によって起こるDNA-RNA-蛋白質の反応

2)形質転換
 DNAを細胞と混合すると細胞内にDNAが入る. このDNAにより細胞の遺伝的性質が変わるが, この変化を形質転換という. また, 細胞の核内にDNAを注入すると, これに対応するRNAが合成され, 同時にこのDNAに固有の蛋白質が合成され始める. これらは試験管内(「インビトロ」という)では容易に反応が進み, 蛋白質合成が盛んに起こる.

3)クロマチン
 細胞内の染色体DNAはヒストンという5種類の蛋白質と結合している. また, 弱い結合で付いたり離れたりしている非ヒストン蛋白質があり, この複合体をクロマチンという. 体内の各細胞はすべて同じ遺伝子(染色体DNA)を持っている. クロマチン構造には, ヌクレオソーム,ソレノイド,チューブ,染色体がある. 臓器別の機能, 細胞別の機能は, クロマチン構造の差異から生まれるはずであるが, 詳細は不明である. 1単位のクロマチンを図14に示す. ヒトのクロマチンは25百万単位から構成され, 全長は約1.5mになる.

4)有糸期とクロマチン
 クロマチンは, 普段は核内に広く分散している. 有糸期という細胞分裂時期になると, クロマチンは凝縮して染色体の形をとる. 図15に示す.

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図14 クロマチン(染色質)の1単位
       

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図15 有糸期のクロマチン(染色体)

5)DNAポリメラーゼ
 DNAポリメラーゼは, [遺伝子DNA]を鋳型としてDNAを正確に合成するとともに, 損傷を受けたり誤った塩基対が入ったDNA部分を除去して正しい塩基対のDNAへと修復,合成する酵素である.
[DNA合成],[校正読み],[切り取り修復]のこれらの3つの酵素機能が一つにまとまっているので, DNAは極めて正確に合成される. 同様に, DNA→RNA, RNA→蛋白質も極めて正確に合成される仕組みを持っている.

 以上の5項目が, 生命科学で明らかにされていることのなかで, 本書の試論に関連する重要な点である. これらを含めた身体の複雑な仕組みは、極めて論理的に精緻にできているので、長期間の生存が可能となる。また、[生命現象の中で、一般的に非論理的な説明がなされている現象は、非自己(異物)によって起こるか、事実の見落としがある]、と考えられる。

 また, 各臓器の使命・機能はクロマチン構造の違いがもたらすものと言える. 構造次第でホルモン,酵素などが生成する.

 また, [各臓器の機能不全は, クロマチン構造が形質転換などによって変化した結果起こる]と考えることができる. さらに, 免疫機構があるので, [インビトロ(試験管内)では容易に起こるが, インビボ(生体内)では簡単には起こらない反応がある]ことも推測できる. 同時に, [インビトロでは起こらずに, インビボでは容易に起こる反応がある]ことも予測できる. これらのことについては, 試論(二)を中心に試論全体でもう少し詳しく触れてみる. 生命科学でわかってきている事実と試論を矛盾なく説明できるかについても, 併せて考えた.
    
 

 

4.2.2 癌などの成人病の多くは感染症・・・・・治癒と再発は可逆的

1) 可逆性と感染症
 肺や肝臓などの癌および糖尿病などの疾患を, 春ウコンは約3ヶ月程度で同時並行的に抑えることができる. 疾患によらず治癒の経過は似ている. しかし, 春ウコン摂取を中止すると疾患は徐々に悪化する. 悪化した病状も春ウコンを再び摂取すると良くなる. 病状回復の可否は春ウコンの摂取次第であり, 可逆的と言える.

 この可逆的な現象は, [疾患原因は免疫系が非自己(異物)と認識している病原体であり, 〈春ウコン摂取の有無=免疫賦活の有無〉により, 治癒したり再発したりする感染症]と見ることができる.

 3ヶ月程度で癌が悪化⇔寛解⇔治癒を可逆的に往復する速度から見ると, 癌は[突然変異が蓄積し, 長年かけて出てくる慢性的な疾患]との一般的な見方と大きく矛盾することがわかる. 免疫力を上げて癌を抑えることができるので, 今までの癌を説明する諸説(参照:4.2.7)とは, 全く別のメカニズムを考える必要が出てくる(参照:4.5.7~8で触れてみた).

 春ウコンで癌を抑えると, 傷や穴ができることもなく, アポトーシスは起こっていないようである. 肺癌,膀胱癌,脳下垂体腫瘍などでは, 何ら不都合な問題も起こらずに, 機能が復元している. 一般的には, 癌は[異常増殖]と捉えているが, [細胞の異常変形が増加]しているとも見える. これらをどのように解釈したらよいかについては, 下記の模式図の図16のように, [癌化細胞⇔治癒細胞]で理解できると考えた. 詳細説明は4.5.7で説明する.

 なお, 一般的な解釈との混乱をさけるため, 4.2.3の4)と4.3.1の1)では, 癌は癌化細胞の[異常増殖]または[癌化]とした.

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 図16  [発症⇒癌化⇒治癒⇔再発]の模式図 
 
 他の成人病も, 癌とほとんど類似のメカニズム[感染⇒浸潤⇒発症⇒癌化⇔治癒]が, 免疫状態しだいで起こっていると考えられる. ひとたび発症すると, 免疫賦活によって治癒状態になっても, 感染細胞数は発症前より飛躍的に増大しているので, 免疫力が落ちたときの再発速度は大きい.癌と同様に, 発症前の予防と治癒後のアフターケアが重要である.

2) 今後の感染症の確認方法のあり方
 免疫賦活による治療が可能となってはじめて, [免疫系で抑えることができる疾患]=[非自己(異物, 病原体)が起こしている感染症]と確認できる. このような疾患は, 今後, 多く発見されると予測できる.

 免疫賦活によって容易に抑えることができる疾患群は, 病原体が免疫系に対して敏感に反応する疾患である. 免疫力が落ちてくる中高年~老齢期になってやっと発症する. この種の感染症の病原体を健康な動物に接種する実験を行っても,免疫力が高いので発症がなかなか起こらず,死因と感染症との因果関係を明確にすることは簡単ではない.

 的確な免疫の指標を選び, ヒトに近い長寿命の動物の免疫力を強制的に下げた状態で接種実験をして, 初めて, 感染の科学的な評価が可能となるのだろう(参照:4.2.6の2)). 羊のスクレイピー病の話題9)では, 「病原体をたくさん含む病巣組織を健康な2匹の羊の眼球内に注射した. 待つこと16ヶ月と22ヶ月にスクレイピー病がやっと発症した」と言う. スクレイピー病は免疫系に簡単に抑えられる感染症なのであろう. 発症までの潜伏期は, 免疫が下がるのを待っていた期間だったと考えられる. スクレイピー病は死の直前まで発症しない疾患なので, BSEを感染している若い牛でも, ヒトへの再感染の危険がある. 癌の発症も, 現象的に見るとBSEの発症に近い.

 どの感染症も免疫が関与しないものはない. とりわけ, 細胞の機能を利用して増殖するウイルスなどは免疫の関与が大きいと思われる. その感染症としての評価判定に[健康な個体]=[免疫系の強い状態の動物]を使うのは, 適当でないということになるだろう(参照:4.2.6の1),2)).

 例えば, 風邪ウイルスの感染性評価に健康な動物を使い, 「十分な餌と暖かいケージ」という環境で飼育すると, 恐らく風邪を発症しないであろう. しかし, 実験動物を氷水に浸けて免疫力を下げると, たちどころに風邪を発症するはずである. 癌やBSE・HIVなどの疾患も, 全く同じようなことが起こっていると推測できそうだ.

 また, 感染するスクレイピー病・BSEなどをはじめとして, 感染しないと言われている「癌,糖尿病,高血圧,うつ病」9)も, 免疫力の強い若年層では発症が少ない. これらも, 病原体を接種後に免疫力を強制的に下げると, 即刻, 発症させることが可能となろう(参照:4.3.2の 2)). これと同様に, アジュバント療法の結果(参照:4.5.7)は, 制癌剤によって免疫力が低下したことにより発病した実例とみなせる.

3) 潜伏する病原体の減衰傾向
 種々の疾患を春ウコンによって治癒の状況にすることは可能である. しかし, 摂取を中止すると, 癌や成人病は疾患が再発するということは, 病原体を短期間で除去,死滅させることができない感染症であることを示している.

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 一般的に言って, どのような薬剤を使用しても,ほとんどの疾患を完治させることが難しいであろう. なぜなら, 細菌,ウイルス,真菌などは, 投薬をすると大部分のものは死滅するが, 一部は免疫系が影響し難いところに潜伏してしまい, 一見, 病状が治まった状況になる. ところが, ひとたび体調が落ちると潜伏しているところから病原体が増殖し始め, 再発することがある. 免疫系のしっかりしている人は, 菌は持っているが発症しない, いわゆる, [健康保菌者]と言われる人になるのだろう.

 これと同様に, 癌や糖尿病などの成人病も, 春ウコンによって治癒したような状況になる. しかし, 病原体の特徴から見て, 短期間の春ウコン摂取では完璧に取り除くことができていない. それゆえ, 細菌,ウイルス,真菌などの一般的な感染症が潜伏しているケースとくらべると, 癌は簡単に再発し, 糖尿病は癌ほど速くはないが, 同様に再発してくる.

 一方, 長期間, 春ウコンを摂取していると, 病原体(感染細胞)量は減衰し, 再発の確率は大幅に減少していくようである. C型肝炎の例は, 病原体(抗原)が体内から減ったので抗体が減ったと解釈できる(参照:1.5(2),春ウコン摂取後に抗体が減少した). また, 免疫力が上がってきているので, この面からも再発しにくくなっているとも言える(参照:数量的な考察は4.2.4).

 1.1.1に述べた大出血が治まった後の出血の場合, 初めの年は週に何回かの小出血と多少の痛みが見られたので, 春ウコン摂取を継続しながら, 同時に局所加熱のための貼付型発熱体を併用した. 年と共に軽度出血の頻度と痛みの強度が減少し, 4~5年後には数回/半年以下となり, 10年を過ぎると数回/年以下となった. 20年経過した現在では, 過労後に1~2回/年となっている.

 癌や糖尿病などの成人病から, 病原体がはっきりしているウイルスや細菌類の疾患に至るまで, 春ウコンを摂り続ける限り疾患の休眠状態が長く続く. このことは, 春ウコンが癌などの致命的な疾患から患者を延命に導くことに, 多大な貢献があることを示している. また, 糖尿病性網膜症治療の終了なども, 大きな救いである.

 また, 若年層や壮年期の突然発症する癌や成人病を春ウコンの摂取で抑えることができ, 患者を絶望から救い, 志を遂げるまでの猶予期間を[生活の質(QOL)]が良い状態で過ごすことができる. 基礎体力がある間は延命できているようなので, 患者にとって極めて大きな意義がある.

 

4.2.3 癌などの成人病の病原体は[ウイロイドライク]

1)欠陥遺伝子類と[突然変異]
 DNAを複製するとき, 「インビトロでは, 親の分子鎖を鋳型として塩基対の相補結合y)の規則に従って間違いなくDNA鎖が複製される. 一方, 生体内では複製エラーが起こり, 欠失,挿入,置換,転座などがしばしば起こる」と言われている. しかし, [生体内でも, 規則に従って正確に複製する]とならないと, 科学的には理解しにくいことである.

表13  しばしば起こるといわれる突然変異の種類と内容

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 複製エラーが起こるのではなく, [複製エラーの原型に相当するDNAが生体内に非自己として存在し, これを原型(鋳型)として, 細胞にある複製の機能を使って正確に複製する]とした方が矛盾もなく, 自然である. 欠失,挿入,置換,複製エラーなどの不規則な現象が, 規則正しく生体内で繰り返し起こるとすると, 体を維持することはむずかしい. 突然変異が簡単に起こることは極めて考えにくいことである.

 これらから, 4.2.7①に引用したE.シュレーディンガーの[突然変異は稀にしか起こらない],[種が淘汰されていないので, ヒトでは突然変異はまれにしか起こらない]との説は, 疑う余地がなさそうである.
また, 自己の遺伝子が読み違いをされたのであればDNAポリメラーゼによって修復される. よって, 自己の遺伝子の読み違いではない. DNAポリメラーゼが正常に機能している条件下で, [DNAポリメラーゼでは修復できない非自己(異物)のDNA群,RNA群, 即ち, 自己の遺伝子でないDNA群,RNA群がある], と考える方が合理的である. DNAポリメラーゼが正常に機能しなくなった時は, 癌化ではなく, その個体の死を意味する.

 そのため, これらの[突然変異]と言われているDNAはもともと細胞内にあり, DNAポリメラーゼが修復の対象とするヒトの遺伝子ではなく, [非自己のDNA]と言える. また, これらの非自己DNAが複製され始めるのは, 細胞をコントロールする力, すなわち, 免疫力が低下してからのことである. また, DNA⇔RNAであるので, RNAの変異も同様, と考えられる.

 よって, 免疫力が下がって複製がはじまった後に, 免疫力が再び上がると複製がおさまることになる. これが, 免疫力の強弱によって起こる, 癌などの疾患の発病⇔回復の[可逆性]につながるのだろう.

 一方, 様々な生物が共通した生物から分化してきたので, 遺伝子が長期的に見て変化してきたことは確かである. しかし, 人の一生の間のような短期間に突然変異が頻繁に起これば直ちに人類の絶滅につながる. そのため, 遺伝子の欠失, 挿入, 置換, 複製エラーなどで癌などができたのではなく, 遺伝子類似の異物(非自己)を生まれつき持っていたか, 感染によって細胞に取り込んだ結果, 免疫力低下によって[発病=複製を開始]したと考える方が妥当である.

2)病原体[ウイロイドライク]の推測
 治癒がむずかしいと言われている多くの癌や成人病が, 春ウコン摂取の有無によって, 治癒したり悪化したりする. 人体に対するこの可逆性から, [細菌類とウイルス類に見られる疾患と投薬の関係]と[癌や成人病と春ウコンの摂取に見られる関係]とが極めて類似していることがわかる. そのため, 癌や成人病の多くは遺伝病ではなく, [免疫系が非自己と認識している病原体が存在する感染症]と考えた方が合理的である.

 春ウコンは, 癌や成人病とヘルペスウイルスや風邪などを同時に抑えるので,これらの病原体を当初はウイルスと考えた. しかし, 癌ウイルスは一部の癌でしか発見されていないので, 癌や成人病の原因を[遺伝子の突然変異], [mRNAの読み違い(複製エラー)]などとする説が主流である.

 これらの[欠陥遺伝子群(DNA群とRNA群)]や[DNAに起こる欠失, 挿入, 置換など]を, [癌・成人病などの疾患原因である病原体]ではないかと推測した. それは, 感染(=形質転換)した結果の核酸類とも考えられる.

 植物分野では, 裸のDNAやRNA類[ウイロイド]が病原体となって感染する病気の存在が, 最近わかってきている. 発見されるウイロイドの数も増えている. 動物でも類似のことが起こっていても不思議はないと考え, この欠陥遺伝子群を動物系のウイロイドと考えて[ウイロイドライク]と呼ぶことにした. ちょうど, ウイルスにある[暗黒期(存在が確認できなくなる時期)]のような状況に近いのではないかと考えたのである.

 一般には, 感染症はコッホの三原則で確認することが科学的評価, と言われている. 欠陥遺伝子群のウイロイドライクを病原体と確定するためにも, この3原則の適応を考慮する必要がある. そのために, このウイロイドライクが親和性を示す動物細胞に感染させ, 核酸増殖の仕組の中で増殖することを確認することになるだろう. しかし, 健康な動物への感染は, [免疫力が大きく下がってから発症する疾患に対する病原体評価]には向いていない. この点については, 後ほど項をあらためて詳しく考察することにする(参照:4.2.6の2)).

 一方, [この欠陥遺伝子群などを免疫系が非自己と認識している場合, 春ウコンで免疫系が活性化されると, 増殖し始めているウイロイドライクをその時点で一斉に抑えてしまう]と見れば, 末期癌や成人病が同時に治まったことも納得できる. よって, これらは遺伝子ではなく非自己(=異物)であると言える. 詳しくは前項4.2.3の 1)に述べたとおりである.

 今までは, 加齢と共に免疫力は下降するだけで阻止できなかった. その結果, 免疫力でしか抑えることができない疾患は, すべて[不治の病]とされてきた. 春ウコンなどで免疫賦活が可能となってみると, 不治の病の中には単純な感染症がたくさん含まれていることがわかってくる, と言ってもよい.

3) [ウイロイドライク]のイメージ
 症状が治癒した後, 春ウコン摂取を中止したときに見られる再発の経過を見ていると, 肺癌などの癌と糖尿病は同じ速さで治癒しても, 再発して悪化する速度はかなり違ってくる. このことは, 癌と癌以外の成人病とでは, 病原体に種類の違いがあると推測できる. また, 同じ癌でも, 前立腺癌と肺癌や肝臓癌とでは悪化⇔回復の様相が大きく違うので, 癌または癌が発症した細胞の性質に違いがあると推測される. ウイロイドライクには増殖速度に緩急の種類がありそうなので, イメージとしては次の表14を考えている.

表14  ウイロイドライクの分類イメージ

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  イ)アレルギー関連(?), ロ)副腎皮質・神経クロム節, ハ)ウイルス性(?)

 この病原体[ウイロイドライク]は, ウイルスのようにDNAとRNAを包む蛋白質などの殻(エンベロープやキャプシッド,キャプソメア)を持つまでに発達したものではなく, 電子顕微鏡で簡単に確認できる形にはなっていない. これらは細菌のように自己増殖ができないために, 普通の臓器細胞や神経細胞を宿主として継体や増殖をする病原体と推測している.

 増殖という点ではウイルスに極めて近い形をとり, 前述したように, 太古から動物細胞を宿主としていた裸に近い病原性DNAや病原性RNAではないかと思われる. 電子顕微鏡で確認できないと言われるC型肝炎ウイルスやウイルスの暗黒期は, ウイロイドライクに近い形態をとっているとも言えるだろう.

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図18  感染症の病原体分類の概要

 以上より, ウイロイドライクは一般的に病原体と言われている原虫(蠕虫),微細藻類,真菌(含糸状菌),古細菌,細菌,マイコプラズマ,ウイルス,[ウイロイドライク],プリオン(?)と同列に並べ考えることができる[一群の病原体]であり, 細菌類,ウイルス類,真菌などと同様に臓器親和性があるように見える.

 なお, ここで, プリオンに(?)を付けた理由は, 蛋白質は自己増殖や細胞を利用した増殖ができないので病原体となりえない, と考えたからである. プリオンは表15の⑥ⓒの結果として生成が起こる現象である.
  
4) [ウイロイドライク]による疾患の分類
 癌などのような増殖速度の速い疾患とその他の疾患とでは病原体[ウイロイドライク]の特性が違うのだろうと考えている. ウイロイドライクの種類, 細胞内での関与の仕方によって, 大別すると3通りの反応, Ⓐ細胞分裂・変形の促進,Ⓑ機能の抑制,Ⓒ蛋白質の合成,が起こり, その結果として各種の疾患が現れると推測している. その例の一部を下記に挙げた.

表15  ウイロイドライクの疾患分類

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   イ)脳下垂体ホルモン, 甲状腺ホルモン, 血糖調節ホルモン, 副腎ホルモン, 性ホルモンなど
   ロ)ノルアドレナリン, セロトニン, ドーパミン, アセチルコリンなど

 どの細胞も同一のDNAを持っているが, 各細胞の使命を決めているのはクロマチンとその構造から生まれる機能と考えられる. 各細胞に入っているウイロイドライクが免疫低下に伴い動き出し, Ⓐは癌化(または, クロマチンを刺激して有糸期状況として細胞分裂)を促進(①),ⒷとⒹはクロマチン機能を抑制して酵素やホルモンの合成を阻害(①②③④⑤),ⒸはDNA→RNA→蛋白質の合成を促進(⑥),が起こると考えている.

 ⒶについてはCT検査,超音波検査,PSA値検査などにより経過のつかみ易い癌の進行経過をみてみると, 免疫力が下がると癌化(細胞分裂)を促すウイロイドライクの機構が直ぐに働き始めて癌化するが, 免疫力が賦活するとこの機構が直ぐに崩れて回復に向かうと言える(参照:4.3.2の2)). ⒷとⒸについては, 細胞に接触して形質転換したウイロイドライクが, 免疫力の低下に伴って機能を発揮する現象と言える. また, 疾患とは見なされないが, 各細胞で同様なことが起こっているのがⒹ老化現象(⑦)であろう. これは4.4試論(その四)で詳しく述べることとする.

 制癌剤の中には奇形児の原因となるナイトロジェンマスタードのような化合物があり, また, 制癌剤化が検討されているサリドマイドも同様に奇形児の原因となることが知られている. これは, 癌の原因となる病原体(ウイロイドライク)と正常な遺伝子とが, 構造や機能の面からみて近いと考えると, 理解できることである. 制癌剤は, 癌(=ウイロイドライク)に作用すると同時に遺伝子にも作用することにもなり, 生命現象の根幹に反応しているとも見られる. 反応することと治療効果とは, 多分, 関連しない. また, 制癌剤の副作用は, この反応に起因しているとも思える. 逆に言えば, ナイトロジェンマスタードやサリドマイドが奇形児の原因となることは, DNAなどと反応するようなので, 納得できることである.

 病原体がDNAやRNAに近いものであり, しかも, 遺伝子の欠陥,挿入,置換や読み違いと言われるほどに遺伝子に極めて近いものであるとすると, これらを抑える方法は, 現時点では治癒の確実性から見て, これらを非自己として峻別して認識できる免疫系に頼る方法が, 最も優れていると考えられる.  

5)確認試験はPCR法
 ここで述べた試論が正しいとすると, 病原体の確認試験は組織内のDNAやRNA分析となる. ウイルスの電子顕微鏡写真で見ているものは蛋白質の殻であり, ウイルスの本質であるDNAを見ようとしても, 結晶化が難しいので電子顕微鏡では難しそうである. また, ウイロイドライクもDNAとすると, 電子顕微鏡で見ることは簡単ではない. まして, 光学的な技術では確認できない.

 これらの分析には, PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)が現在の有力な分析手段となるはずである. 家庭で健康管理に使えるような, PCR法をしのぐ安価,簡便で精度の高い分析法の開発を期待したい.

6)[癌遺伝子]と[ウイロイドライク]
 癌遺伝子としてはras遺伝子を初めとしてstc遺伝子,myc遺伝子などを含めて60種類の癌遺伝子が発見されているという. いろいろな細胞にあるという[癌遺伝子」が, [ウイロイドライク]と部分的には一致すると予測している. しかし, ヒトはどの細胞も同じ遺伝子(長さ約1.5m)を持っているが, これと癌遺伝子とは明らかに異なる. 細胞によって違う[癌遺伝子]のDNAは, 後天的に細胞にはいったもの, 即ち, 形質転換(=感染)によって細胞に入ったものと考えざるを得ない(参照:4.3.1). 癌遺伝子により大きさもかなり違うだろう.

例えば, ras遺伝子は正常な遺伝子の対応する部分の塩基配列と比較してわずか一つの塩基に置換があるという. これが, 単に遺伝子のコピーの時に誤って一ヶ所に別の塩基が入ってしまったとする. これがヒトにとって重要な遺伝子であれば, DNAポリメラーゼによって[校正読み],[切り取り修復]を経て正しい遺伝子となるはずである. 除去,修正,合成がなされないということは, [このDNAはヒトの本来の遺伝子ではない. 免疫が非自己と認識しているDNAであり, たまたま, これがヒトの遺伝子のある部分に極めて近い構造をしていただけである]と考えた方が合理性がある. 一ヶ所の違いはエラーではなく, 免疫系やDNAポリメラーゼから見れば決定的な違いなのであろう.
同様のことが他のがん遺伝子でも起きていると考えると, 配列が近いからといってヒトの遺伝子の読み違いではない. ヒトの免疫系は, これらを「単なる病原性DNA」と認識している, と考えたほうが理にかなう.

 ウイロイドライクの起源は, 生命の誕生からの歴史のなかでとらえるべき課題かも知れない.

 

4.2.4 治癒の速度と治癒率

1)発症の直後(投薬前)の春ウコン法の効果
 治療方法がないとされた末期の肺癌や肝臓癌患者が, 春ウコンを摂取し始めてから30日前後で[寛解(=快方に向かう)]となり, 3ヶ月で[完治]と医師が判断して退院する状況に至っている. また, インスリン投与に入ろうとした糖尿病患者が春ウコンを摂取した場合にも, 癌と殆ど同じ速度で[完治]と診断される状況になっている.
糖尿病患者のなかで, 本格的に糖尿病薬の投薬を始める前に春ウコンで治癒した単純な場合について, 春ウコン摂取後の経過をグラフ化してみた(1.3(3)).   

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図19  糖尿病の治癒の経過

 多くの癌について, 治癒と診断されるに到る状況を数値化できたとすると, 糖尿病のこのケースの経過に極めて近くなるだろう. 癌も糖尿病も免疫賦活をして疾患を抑える点では殆ど同じである. 末期癌は約3ヶ月後に治癒と判断され, 糖尿病の治癒率は92%であった. 癌はCT検査などでは見えなくなるが, 治癒率は糖尿病の治癒率(=約90%)と同程度と考えた方が無難である.

 治癒が難しいと言われている末期癌と糖尿病とが極めて似た経過で治癒に向かい, 春ウコンを摂取し続けるかぎり両疾患共に, 現在の検査技術ではその疾患を検知できない水準の[完治]の状態が長期間継続する. これらは, 日本では最高水準と言われる病院の医師の診断結果でもある.

 また, 完治と診断された癌患者が, 3ヶ月で春ウコン摂取を中断すると, 極めて速く再発する. それは, 癌と認識されない程度の細かい癌が, 図19から約10%程度あると推測できるからである. 10%といっても細かいので数は膨大であり, 癌の元の大きさの全領域に拡がっていると考えると, 急速に元の大きさまで再発することが理解できる. 春ウコンを長期間摂取して0%に近づくほどに, 再発の確率が減ることも理解できる. また, 10%の状態で手術をすれば, 手術のストレスによる免疫低下やHIF-1x)の活性化が癌の悪化を加速する. 同様に, アジュバント化学療法も,制癌剤による免疫低下が癌の悪化を加速するのだろう(参照:4.5.6).

 同じ末期癌でも, 肺癌,肝臓癌,腎臓癌のように速やかに治癒するものもあるが, 消化管膜間質性腫瘍のように治癒速度が, 多少, 遅いものもある. 初期の癌であれば末期癌よりかなり短期間で治まる. 慢性的喀痰症と蓄膿症に苦しんでいた人が春ウコンを摂取し始めたところ, 喀痰症はかなりの速さで改善したが, 蓄膿症の改善速度はそれほど速くなく, 治まるまでに喀痰症の2倍ほどの期間を要した.

 これらの経過からみて, 治癒に至る期間を決める要因は, 病原体の種類, 病原体と体液の接触状況, 免疫力の状況と疾患の進み具合, 投与していた薬の影響などによる, と推測される. 疾患を持っている人の基礎体力の状況によっても治癒力や治癒速度は違ってくるであろう. しかし, 癌については投薬期間もほとんどないので, どの癌も大きな差異もなく終息に向かう.

 一方, 再発にいたる速さは, 病原体が持つ疾患の性質によって決まる. 中途半端に春ウコンの摂取を中断したとき, [癌の再発は速く(前立腺癌などは, 若干遅い)],[糖尿病は遅い]ので, 疾患別に実績を集積して, 傾向を確定する必要がある. また, 再発を回避できる春ウコンの摂取期間を, 疾患別に確定することも, 今後の重要課題である.

2)長期投薬後(臓器治療薬損傷)の春ウコン法の対応 
 多くの疾患で, 春ウコンで[簡単に症状が治まる場合], および, [投薬しているためにある程度までは症状が軽減するが正常値には簡単に至らない場合], があることがわかった. また, [制癌剤治療をした場合は, 治療何ヶ月後に春ウコンが全く効果を出さない期間が発生すること]があることもわかってきた.
以下, 簡単に述べる.

  • ① 糖尿病の場合では, インスリン治療や糖尿病薬投与を長期間受けてしまうと, 完全な復調までに時間がかかる場合がある(参照:インスリン例1.3(1), 糖尿病薬例1.3(5)). インスリンを長期投与した糖尿病の場合は, インスリン分泌機能が退化してしまうため, それを回復させる時間を考える必要がある. また, 糖尿病治療薬(α-グルコシダーゼ阻害剤, スルフォニルウレア系, ビグアナイド系, など)を長期間投薬していると, 春ウコンで大きな改善は見られるものの短期間では完治レベルに到達しない. また, 新陳代謝が早い細胞は春ウコン摂取と同時にインスリン分泌能が回復し, 遅い細胞は代謝に合わせて徐々に回復する. 代謝の遅い細胞の退化した機能を引き出すためには, その細胞の新陳代謝を待つことになる. 投薬を段階的に減らすなど, 損傷要因を除外するための種々の工夫が必要となる.
  • ② 喘息の場合では, ステロイドなどの治療薬の有無によって, 回復経過が大きく異なる(参照:1.5(10)の1)と2)の比較). 喘息の原因を, 非自己蛋白質の解毒機能障害(肝機能など)と推測している. 投薬によって損傷した臓器の新陳代謝に応じて, 春ウコンによる免疫賦活効果が出てくる. C型肝炎の回復事例(参照:1.5(2))なども, 回復期間の推測に参考になる.
  • ③ 癌の場合には, 制癌剤治療を受けると, 突如として春ウコンが全く効果を発揮しない停止期間が出ることがある(参照:4.5.6). 制癌剤によって出現時期と停止期間はまちまちであり, 他の薬剤と特性が大きく異なる。また, 制癌剤の蓄積性のために骨髄抑制は津波のように次々押し寄せる. なお, 詳細は, 今後の検討課題である.

 以上の①と②より, 慢性疾患による長期間の投薬(糖尿病薬,高血圧薬,ステロイドなど)の多くは, 対象臓器にさまざまな損傷を起こすことが予測できる. また, ③より, 制癌剤の大きな副作用の骨髄抑制t)も類似の現象と捉えて良いであろう(参照:4.5.8). 多くの成人病において, 疾患が発症する免疫力の水準は異なるが(参照:4.3.2の2)の図20), [発症~投薬~免疫賦活による回復]のメカニズムは類似している(参照:4.5.7の2)の⑩).

 これらの投薬の影響を消すには, 多分, 臓器細胞の新陳代謝を待つことになる. 各臓器別に, 新陳代謝の速さは大きく異なる. また, 各臓器の細胞が上皮細胞と間質細胞から構成され, それぞれの細胞の新陳代謝速度が大きく違い, また, その構成割合が臓器によって異なる(参照: 4.3.2の5),4.5.4). よって, 各臓器全体の新陳代謝速度も, また, 臓器内の部分別の代謝速度も異なるので, 機能回復に要する期間や様相はこの代謝の影響を大きく受けるので, 各臓器別に特徴が異なる(参照:4.3.2の5)). また, 制癌剤による骨髄抑制(損傷)は, 制癌剤の種類によって大きく異なる(参照:4.5.8).

 そして, 投薬を中止して春ウコンを摂取する場合, 新陳代謝が速い上皮細胞部分は短期間で効果が出始める. 一方, 代謝が遅い間質細胞部分は, 代謝が進むに従い機能回復が進むことになる. よって, 新陳代謝がすべて終わるまでは, 春ウコンの効果は新陳代謝された部分に限られる(参照:制癌剤について4.5.8).

 

4.2.5 疾患の再発と悪化速度に影響する要因
 再発について癌と糖尿病の傾向を比較してみる. 再発に至るまでの期間(悪化速度)は大きく違うようである.  末期癌のように, 治癒との判断と同時に春ウコン摂取を中止すると, 3ヶ月ほどで元の末期癌の状況に戻る. 一方, 糖尿病は再発して悪くなり始めるまでに年単位はかかる. 疾患の発症の免疫レベルが, 癌の場合は極めて低い状態で起こるので, 春ウコンで免疫賦活をして癌を抑えきっても, 摂取をやめるとすぐに低い免疫レベルに戻り, 再発してしまうように見える. また, 成人病の病原体には性質の異なる幾つかの種類がある. 癌と糖尿病が同時に良くなった場合でも, 癌が先に再発してくる. 春ウコンの摂取をやめて疾患が再発するまでの時間は, 免疫低下の程度の影響を受けると同時に, 疾患原因(病原体)の種類による影響も受け, 両者で決まる (参照:1.1.2(11)).

 また, 幾人かの癌と糖尿病についてそれぞれの治癒速度と悪化速度とを比較してみると, 春ウコンを的確に摂取している場合, 治癒していく速さは, 疾患部分の体液の循環状況が関わっていることが推定される. すなわち, 循環の良い場所にある臓器の疾患の治癒に要する期間は100日程であり, 体液の循環があまり良くないと考えられる臓器の疾患の治癒はやや遅くなる.

 このように, 疾患再発までの期間は, 病原体の種類を主要因として, 体液の循環速度の影響をうける疾患の場所が次にくる要因となり, これらを含めて決まってくる傾向があるように見受けられる.

 

4.2.6 コッホの三原則と感染症の確認試験
 癌については, 「遺伝子の病気です. DNAに傷がつく突然変異が蓄積し, 長い時間をかけて出てきます. DNAに傷をつけるのは, タバコ・紫外線・活性酸素などです. ですから生活習慣を改めることが癌予防になります」10)との見方が一般的である. 多くの研究者が「癌は感染症でない」と, [コッホイ)の三原則]9)に沿った実験をして結論づけていると思う. この結論について, これまでの経験の中から考えてみた.  

1)微生物感染症の確認
 病原体を感染症の感染源と確認するための科学的な基準として, 一般的に認められている方法に, 表16の「コッホの三原則」がある.

表16 感染症確認試験の[コッホの三原則]

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 一般的に, 微生物は自己増殖ができるので, 病原菌などの感染症の確認方法としては, [コッホの三原則]は科学的に優れたものである. 法定伝染病のように自力で繁殖する赤痢,コレラ,チフス,ペスト,結核,梅毒,トラコーマ,肺炎などの評価方法としては, 有力な証明手段といえる. しかし, 健康な動物で免疫系がしっかり機能している時には, 感染性の強いものを除いて, ウイルスをはじめとするかなりの感染症で, [コッホの三原則]の②はなかなか起こらないことがあると推測している. 健康保菌者とは, 免疫系が極めてしっかりとしているこのよう人を指すのだろう.

 感染症が発症するまでの期間を潜伏期と言っている. また, ある種の感染症では, 健康な動物に病原体を接種しても, 免疫力が低下して死ぬ直前にならないと発症しないことも有り得る. 潜伏期間に意味がない場合もあり, 個体の免疫力の優劣を測っているだけの場合もあるだろう.

2)無生物的ロ)感染症の確認 
 「ガンや糖尿病や高血圧やうつ病はうつらない」9)との見方が一般的である. しかし, 後述するように(参照:4.5.1および4.5.2), 癌の病原体は免疫力の状況に対応してかなり敏感に反応する. ウイルスやウイロイドライクは微生物のように自力では増殖できず, 生物の細胞を利用してしている. そのため, これらの増殖は生物の免疫力の影響を大きく受けることになる. よって, 免疫力が強く関与する感染症の評価法や基準として, 「コッホの三原則」の実験系を組むことは, 科学的な意味で課題がある.

 よって, 免疫力が低下した条件下でないと, 因果関係がはっきり判る形で癌が発症しない恐れがある. また, 免疫力が低下したときに接種しないと, 感染がすぐに確認できないことになる可能性が大きい. そのため, 「コッホの三原則」の②「分離した病原体を健康な個体(実験動物)に感染させて同じ病気を起こすことができること」を適用すると, この個体が死ぬ直前の免疫レベルになるまで「癌が感染した」との判定はできないことになる.

 特に, 癌は免疫力が下がり, 生命のギリギリのところで発症する. HIVの発症もこれに近い. 同様に, BSE9)やヤコブ病なども, 免疫力低下で病原体が脳関門を通過して初めて発症すると予想できるので, 評価方法に工夫が必要と考えられる. また, ウイロイドライクに限らず, ウイルスでも免疫力に弱いものは, 感染症としては見逃しかねないだろう. 動物への微生物による感染症と生物細胞への形質転換による感染症とは, 感染についての評価方法が大きく違うと考えている.

 また、[Little の実験]ハ)によれば、同系マウスの癌は同系マウスには感染、異系マウスには感染しなかった.この実験は、[癌は同系マウスには感染しやすい]、[癌は感染する]、[癌は感染症である]、ことを示唆している.さらに、[同系マウスは免疫力が弱い]、[同系マウスは感染症に罹りやすい動物である]とも言える。同様に、クモ膜下出血手術などの硬膜移植の際に、明らかにヤコブ病が感染したと見受けられる例もあると聞く。無生物的感染症の評価法は, 癌などのいろいろな疾患を抑えることができたことで, はじめて論議することが可能になった. 今後, この感染症に合わせた免疫力のレベルが測定できるようになれば, 「△△△病はレベルX, □□□病はレベルYで発症」などとなるのではないだろうか. しかし, 免疫力のレベルの測定は, [極めて複雑な免疫系のどこの何]を測定しているか分からなければならないので, かなり困難な研究課題となるであろう.

 ウイルスやウイロイドライクを病原体とする疾患は, 免疫状態の高低次第で発症と治癒を往復する(参照:1.3(5)). 本格的な発症は免疫力の低下によるので, 潜伏期間≒寿命となることもあると考えている. 繰り返しになるが, コレラ,赤痢のような病原菌と違い, ウイルス,ウイロイドライクは自己増殖ができず, 動物の細胞を利用して増殖している. 免疫力が高いと発症しないので, 健康な動物へ接種した場合の潜伏期間は, 意味のある数字ではないのだろう. 発症は感染させた動物の免疫力が落ちてくる老齢期になるのを, 単に待っているようなものである. よって, 潜伏期間が極度に延びる例もあるだろう.

 また, B型肝炎ウイルスは, ヒト以外への感染はチンパンジーに限られることは良く知られている. ヒトの癌の病原体が, 動物の同じ臓器細胞にアフィニティ(親和性)がないケースもあるだろう. ヒトの癌の感染性は, ヒトでしか確認できない可能性もある. さらに, 癌は浸潤で感染することから, スクレイピー病の感染例(参照:4.2.2の2))のような担癌臓器の移植や血球のようなもので免疫から保護して感染させないと, 癌の感染は難しいのかも知れない. また, 実験動物の種類によっても, 感染性は大きく異なると考えている.

 以上より, 感染源の種類によって評価方法や評価条件を選択しないと, 真に科学的な評価とならない.

 また, [ウイルスを電子顕微鏡で見て, 初めて存在が確認できた]ことが, 科学的に病原体の存在が証明されたことの一つに挙げるケースも多い. ウイルスの本質はDNA,RNAであり, PCR法(参照:4.2.3の5))でしかわからない. ウイルスとして電子顕微鏡で見ているものはそれを包む蛋白質の殻である. 細胞中のウイルスには, 殻がない暗黒期と呼ばれる[見えなくなる時期]がある. この暗黒期のウイルスや殻がないと言われるC型肝炎ウイルスと同様に, ウイロイドライクを見ることはできないだろう. これらはPCR法でしか確認できないことになるだろう.

 以上のことを考え, 野口英世博士の偉大さについて付言すれば, 顕微鏡では見ることができず, また, 厳密な科学的証明はコッホの三原則ではできない[狂犬病, 黄熱病など]を, [感染症]と看破したことである.

  イ) Robert Koch(1843~1910)「コッホの条件」「コッホの三原則」と呼ばれる
  ロ)「自己複製を行うシステム」を生命・生物とすると, システムは持っていても生物
   を借りて初めて複製・増殖が可能となるウイルスやウイロイドライクを「無生物的」とした
  ハ)Clarence Cook Little (1888~1971) 1919年の[Littleの実験]によれば、同系マウスに発癌剤
   を用いて癌をつくり、その癌を切除して同系マウスと異系マウスに移植したところ、同系マウ
   スにのみ癌が生着して癌で死んだ。なお、同系マウスは近親交配によって得られる。すなわち,
   父親マウスとその子供マウス、孫マウス、曾孫マウス・・・との間で何代も子孫作りを繰り返
   し、最後には[父親と全く同じ性質のマウス]=[同系マウス]を作る方法である.

 

4.2.7 癌などの成人病発症の諸説と春ウコンによる抑止と治癒との矛盾
 癌や糖尿病などは治り難い疾患と言われている. 発症について種々の説があり, 治癒できないことを支持する理論が多い. これらの疾患を春ウコンで抑えることができてみると, 疾患原因や発症・進行を説明するこれまでの説との間で矛盾点が出てくる.

「癌は遺伝子ホ)の病気であり, DNAに傷がつく突然変異が蓄積し, 長い時間をかけて進行する慢性的な病気である. DNAに傷をつけるのは, たばこ・紫外線・活性酸素などの生活習慣である」10)

 DNAに傷がつく突然変異の蓄積による慢性的疾患を, 春ウコンによって3~4ヶ月で抑えるとは考えにくい. 抑えることができることからすると, 単純な感染症であり, 春ウコンが免疫力を大きく上げて抑えてしまったと考えられる. また, 過労・ストレスなどによる免疫力低下が引き金となって, 癌が急激に発症したと見受けられる人を何人も見ていると, 慢性的に徐々に悪化するとの見方にも無理がある. 肺癌(6)の例では, 3ヶ月間の間隔を置いた全身CT検査の間に, 癌が全く検出されない状態から末期癌となっていた. また, 肺癌(1)では数ヶ月以内で悪化⇔回復を往復しているので, 慢性的な病気ではないと言えそうである. 特に, 末期癌の急激な悪化は, 慢性的な欠陥遺伝子の蓄積では説明しにくい. 春ウコン摂取を中断すると急激に再発するのを見ても, 慢性的に徐々に悪化する疾患とは言いにくい.

 E.シュレーディンガーイ)は著書『生命とは何か?』12)の中で, 2つの大事なことを言っている. 「もしも突然変異がはなはだしばしば起こるものであって, 同一の個体に異なる突然変異が例えば10以上も起こる確率がかなり大きいとしたなら, 普通, 有害な突然変異が有利なものを凌駕してしまい, その結果, 種は淘汰(選択)により改良されはしないで, 不変のままで残るか, あるいは滅びてしまうでしょう. 遺伝子が高度の永続性を持つことの結果として, 比較的に保守的であることが本質的に大切なのです」と言っている. また, 「突然変異によって得られた遺伝子の配列状態が不十分な安定性しかもたないような個体の子孫は『超急進的』で急速に突然変異を重ね, 永く存続する確率が少ないのです」とも言っている. どちらも妥当と考える.

 この説から見ても, [癌細胞の中で, 遺伝子に傷がつく突然変異が正確にたくさんできる]とすると, [しばしば起こらない突然変異]とは言えない. 免疫力が低下すると, インビトロに近い状態になり, [傷がついた遺伝子]と見えるようなDNAやRNAを鋳型としたコピーが可能となると見るべきである.

 また, この突然変異の急激な増殖は, A.H.ハーシーロ)が発見した, 細菌に感染したバクテリオファージの増殖(細菌の細胞を使った爆発的なコピー)に酷似している. また, この現象は, [癌は, 異常細胞の増殖ではなく, 細胞の異常変形の急増], としたときに整合性ある説明ができる(参照:4.5.8の2)).

 これら鋳型となる核酸類について, その由来や源を考える必要がある.

 遺伝子を作るときに誤りを修復する機能を持っているDNAポリメラーゼのメカニズムから見て, コピーした核酸類は[ヒトの遺伝子]とは異なるものである. 「これらが[遺伝子]とすると, DNAポリメラーゼの修復機能が働かないという, 極めて異様なことが起こっていることになる. この機能不全は, 死に直結する」と言ってもよい.

 よって, この[傷がつく突然変異]と見られている核酸類が, 形質転換によって感染しているDNAやRNA類とすると, 条件が整えばヒトの細胞を使って容易に増殖できる. よって, [傷がつく突然変異]と言われるDNA類は, 形質転換によって既に感染していた非自己のDNA類と考えた方が, DNAポリメラーゼの修復も受けずに増殖が起きていることから見ても理解し易い(参照:試論(その三)). それを, 免疫系は異物(非自己)と認識していて, 免疫系が働いている限り, 異物の活動を抑えている. また, 免疫力が下がり増殖し始めても, 免疫力を上げると, この異物の活動を再び抑える.

癌については, [バーネットハ)の免疫監視機構説] がある. この説にもかかわらず癌が発生することに対して, 「癌は免疫から逃れることによって起こる」との[逃避機構説(sneaking through theory,スリ抜け説)]がある. また, 癌は自覚症状の伴う末期に近づくと回復が難しいので, 発癌→増殖→悪化の一方通行の[多段階発癌説]や[逃避機構説]で説明がされている.

 春ウコンによって癌が治まってみると, 癌が免疫をスリ抜けるのではないといえる. [免疫の監視機構]ないし[免疫機能]の働きが悪くなり, 癌細胞の増加を許すことになるのだろう. 癌は, 免疫力が低下してあるレベル以下になると, これが原因となって急速に悪化していく. しかし, 春ウコンで免疫力を大きく賦活することにより, [免疫系が非自己(感染源)と認識している癌を治えた]としか考えられないことが起こっている. [免疫は癌を非自己としっかり認識していて, 免疫系さえしっかりしていれば, 癌は免疫から逃れることはできない]ことになる. よって, バーネット説が正しいことになる. バーネットは免疫賦活ができなかったので[監視機構説]にとどまったが, 春ウコン摂取で, 癌を抑えられるくらいの免疫賦活ができたので, [免疫による抑止機構説]ということになる. よって, 癌化にいたるまでのバーネット説の正しさも証明されたことになる.

癌は多段階発生説で説明されている. 「遺伝子に傷がつく欠陥遺伝子は, 長期間かけて徐々に誘発される. 癌を発生させる欠陥遺伝子を抑制している癌抑制遺伝子<PAC>が再生されなくなると, ブレーキがきかなくなり, 細胞がポリープなどになる. 次に, 癌遺伝子の暴走に癌抑制遺伝子<P53>の故障が加わり, 本格的な癌化が始まる」と一般的に言われている.

(1)「癌抑制遺伝子(APC)が細胞内で正しく再生されなくなると, 癌の芽が次々頭をもたげ, 多くの遺伝子がドミノ倒しのように相次いで変異していく」

 春ウコンが, 相次いで変異して倒れてしまったドミノを, 逆に, 順次起こしていくとは考えにくい. ドミノ倒しは復旧の難しい譬えであるが, 春ウコンによる免疫賦活が, 癌からの復旧をさせている. APC再生を春ウコンが助けるといえなくもないが, 他の成人病が治まることと関連付けてみるとAPC再生説には無理がある.

(2)「P53癌抑制遺伝子が細胞内で故障すると, 癌の芽が次々と頭をもたげる」

 癌が治まるので, [故障したP53癌抑制遺伝子を春ウコンが再生することになる], というのには無理がある. 春ウコンの摂取次第で癌が良くなったり悪くなったりを繰り返したD氏(参照:1.1.2肺癌(1))の例からも, P53癌抑制遺伝子が関与する遺伝病とするには無理がある.

(3)「欠陥遺伝子は, 長期間(10~20年)かけて徐々に誘発される」

 ①で述べたように, 肺癌の例では, 春ウコンの摂取次第で[発症⇔治癒⇔再発]を3ヶ月間程度の期間で往復する. 特に, 再発までに10~20年を必要としないので, [徐々に誘発]とは矛盾する. 発症と再発はメカニズムが異なるとは考えにくい. 免疫力次第で[突然発症⇔急速治癒]を繰り返すだけである.

「mRNAが読み違いを起こし, 間違ったDNAを作り始めるために癌は発症する」

 春ウコンがDNAポリメラーゼに働いて, mRNAの読み違いを修正することはなさそうである. 免疫力が上がるとコピーの仕組みが変わって読み違いがなくなる, とも思えない. また, 物理化学の見地からは, 読み違いが繰り返し正確に起きるのも不自然である. [間違ったDNA]に相当する鋳型があると考える方が自然である. 癌と同様に, 糖尿病は遺伝的欠陥があって起こる疾患であるとする説もある. 春ウコンが遺伝的欠陥を治すとするのも無理がある. 糖尿病も免疫力が上がると治まるので, 癌に近いメカニズムで起こっている.

癌や糖尿病の原因は[遺伝子の突然変異]である.

 突然変異が繰り返し起こり, しかも正確に一つのある特定な遺伝子が産生されてくるのも奇妙な事であり, 突然変異とは言い難い. 法則に則った反応が正確に行われていることが証明されていると考える方が妥当である. これをランダムな突然変異とすると不可解である. もし, 突然変異がよく起こるとするとヒトの体はバラバラになりそうである. ①のシュレーディンガー説は, これを明快に解析し, [突然変異は容易に起こらない]としている.

 また, 癌と成人病のあるものは突然変異の1つである[遺伝子の一部欠失]によって起こるという説もある. 遺伝子の欠失となると治りようもない疾患ということになるが, 春ウコンがこの欠失を補うとすることは無理がある.

 突然変異したとされるDNAは, ヒトの遺伝子に酷似している. しかし, 突然変異でできたものではなく, もともと細胞に存在しているDNA類(ウイロイドライク)が原型となってコピーされたと考えている. [免疫系が非自己(異物)と認識してこの増殖を抑え続けているが, 免疫力がボーダーライン以下に低下するとこれが原因となって, 爆発的に癌化し始める手助けをする], とした方が無理のない説明と考える. 免疫力を上げることは大変であるが, 下げて癌を発生させることは簡単なようである(参照:4.3.2の4)).

 これらのDNA類は, [太古から永年かけて放射線・宇宙線・紫外線などによる突然変異でできたDNAが蓄積,感染,継体してきたもの], [これらの物質から生命体ができ, その名残が残っている], 或いは, [免疫力との関係で, 細胞のある役割をはたしている], などといろいろ想像できるだろう.
   
エールリッヒニ)は「癌は免疫から逃れることによって起こる」,「生体固有の細胞の迷走によって発生する」と言っている.

 免疫から逃れるのではなく, 免疫力が低下した結果, 免疫力が届きにくくなったところから発生すると推測できる. また, 細胞が迷走するわけではなく, 免疫力が低下したために細胞分裂または細胞内異変が促進されたに過ぎず, 免疫賦活をすると分裂または異変が終息してしまうようである. また, 細胞に形質転換をして感染したDNA類を完璧に除去することは難しい. 免疫力の影響を受けにくいところに潜伏し, 継体される. 形質転換(=遺伝的性質が変わる⇒変化した性質が継体される)と言われるゆえんであろう.

 多くの仮説を網羅することはできない. 今までは, 癌は治らないとする論議が中心になっていた. しかし, 免疫力を上げることができてみると, 癌などの疾患は, 長期間にわたって抑えることができることになる. その結果, 癌,成人病についてのメカニズム論議と治療方法は, 現在の論議や方法と全く変わってくるのではないかと思う. 試論(その五)でも少し触れたい.

  ) E.シュレーディンガー(Erwin Schröinger, 1887~1961)
  ロ)A.H.ハーシー(Alfred Day Hershey,1908~)
  ハ)F.バーネット(Frank Macfarlane Burnet,1899~1985)
  ニ)P.エールリッヒ(Paul Ehrlich, 1854~1915) 化学療法を始め, サルバルサン(梅毒治療薬)の
   発見者として有名である.また, 一時期, 癌研究を行い, 現在でも癌研究者が利用する「エールリッ
   ヒ癌」(継体可能な腫瘍細胞)を作ったことでも有名である.
  ホ)R.A.ワインバーグ (Robert Allan Weinberg 1942~) ヒトの細胞で癌遺伝子(ras)をはじ
   めて発見した. また, 癌抑制遺伝子の発見にも携わった.

 

4.2.8 生薬と漢方薬の復活は?

1) 医薬の近年の歴史
 以下は, 筆者Aが医薬の近年の歴史について振り返ってみたものである. 筆者の独善的解釈に基づくものなので, 間違っている点は, ぜひ, ご指摘願いたいと思う.

 二十世紀に入るまでは, インドのアーユル・ヴェーダ医学, 古代ギリシャの薬物書, 中国の漢方医学, ドイツのヒルデガルト薬草学など, 東洋も西洋も病気の治療薬は植物に多くを頼ってきた. 十八世紀末からジキタリスが強心剤として広く使われ始めて以後, モルヒネなどを含めて, 植物に強い生理活性を求めていった. 化学の進歩に伴い, ジキタリスからジキトキシンとジキコリンを抽出, 精製する技術が確立すると, ジキタリスの副作用である毒性が下がり, 患者に大きな恵みとなった. これが医薬品に対して純度の高い製品を求める一つの契機ともなったのであろう.

 二十世紀に入り, ドイツのエーリッヒ(Paul Ehrlich,1854-1915)が微生物を化学合成物質で直接的に殺す方法に初めて着手し, 1910年にサルバルサン(梅毒のスピロヘータに有効)を発見し, 医薬品開発に成功した. 当時の大きな社会問題を解決したことから, 流れが化学合成医薬品開発の方向へと変わりだした. エーリッヒに続いて, 同じくドイツのドマク(Gerhard Domagk,1895-1964)が初めて細菌類に効果的な医薬品プロントジルを開発し, 続いてサルファ剤へと開発を進め, 1940年代以後は, 大きな社会問題であった結核菌を対象としてパス, ヒドラジドに至る多くの注目すべき化合物が開発され, 化学合成医薬品への期待が高まっていった. さらにフレミング(Alexander Fleminng,1881-1955)の抗生物質ペニシリンの登場で合成医薬品が輝かしい成果をあげ, 一段と脚光を浴びて, 化学療法学会の隆盛へとつながっていった.

 制癌剤については, 第二次世界大戦後になって米国が医薬分野に残された大課題として着目し, 大きな研究資金を投入した. 30万種にも及ぶ膨大な数の化合物が絨毯爆撃的に基礎~臨床試験に供され, 5-フルオロウラシル,ナイトロジェンマスタード,シスプラチンに代表される薬剤と抗生物質(マイトマイシンなど)が開発され, また, 3万種類の植物からビンクリスチン,イリノテカン,パクリタキセルなどが開発されてきている. 最近になって, 癌細胞だけを殺す分子標的薬(モノクローナル抗体など)の開発が活発化している. 制癌剤は, 概して免疫を著しく低下させ, 副作用(骨髄抑制など)の強いものが多い. その理由は, 主作用との関連で[癌細胞]だけを特異的に攻撃することができず, [正常細胞]も同時に攻撃することが避けられないためと推測している.

 一方, 成人病(生活習慣病)に対しては, この30年間, 対症療法的に症状を抑えるために, 症状の原因をつくる酵素系を抑える酵素遮断薬を中心とした医薬品が開発されてきている. 例えば[高血圧患者にはAEC阻害剤,カルシウム拮抗剤などの血圧降下剤], [糖尿病患者には血糖降下薬(α-グルコシダーゼ阻害剤など),インスリン], [胃潰瘍患者にはプロトンポンプインヒビター,H2ブロッカー]などが開発されている.

2) 現在の医薬のいくつかの課題と春ウコン
 多くの成人病を同時に併発している患者は極めて多い. 免疫力が下がってくると次々と新しい疾患が出てくるためである. 現状では, 併発している多くの症状を抑えるために, 一度にたくさんの種類の薬剤を摂らざるを得なくなっている. 生涯のみ続けることの多いこの種の医薬にも, 副作用とリバウンドの話題が多く聞かれ, 副作用を抑える薬の開発も盛んになってきている.

 このように華やかな医薬品開発の大きな流れの中で, 植物はだんだんと注目されなくなり, また, 漢方薬は限られた範囲の人たちの医療を支えるものとなってきた(参照:4.1.3の7)).

 この流れのなかで, 米国式の医家向け医薬品の認可基準が主流となり, 医薬品は高純度が要求され, しかも単一成分系となってきている. 合成医薬品の副生成物に目的の生理活性を持つものは一般的にはなく, 代謝の負担になるだけなので, 無害が証明されない限り純品が要求されるのは当然である. しかし, この考え方からは複数成分系の生薬のような生理活性物質は, 医薬品の対象外となってしまう. そして現実には, 複数成分系としては, 認可基準に合う単一品を混合した輸液類,ビタミン剤などに限られ, それら以外は認可されにくくなっている.

 現在の米国式の認可基準では, 免疫系を賦活させて健康体をつくるような多成分が作用する医薬品の認可は難しい. 一方, 春ウコンのように多くの症状を同時に抑えて健康体をとりもどせるうえに副作用が少ないものがあることがわかってくると, その効能と経済性は大変大きい. 薬草の中の有効成分の合成に始まった近年の欧米の医薬品開発は, 活性を強めるための誘導体開発に向かい, さらに発展していった. しかし, 春ウコンのような特色や機構の異なるものがわかってくると, [単一物質の高純度品以外は医薬に認めない]と言う米国流の認可基準を, 多少, 変更していくことも必要かも知れない.

 現時点では, 春ウコンのような植物由来のもの以外に, 強力な免疫賦活剤は見当たらないように思う. しかし, 広く検討した訳ではないので春ウコンが一番良いと言えるかどうかわからない. ただ, 癌や成人病で困っている人たちにとって, ①優れた効果,②極めて少ない副作用(漢方薬でも[上品(常用して副作用の出ないもの)]に位置している),③廉価なうえに多くの疾患を同時並行的に改善する多機能性,④経口で簡便,などの点から直ぐに実施する価値がある方法と考える.

 また, 春ウコンに限らず, 免疫力を上げる天然物はいろいろとあるはずである. 日々草3), オリーブの葉の抽出物4)およびノニ5)に, 春ウコンに似た主作用があると見られる(副作用の程度は不明). また, グァバ,ガジュツ,プロポリス, アガリクス,ウコン類や月桃などの生姜系,苦菜などの様々な植物に, かなりの効用があると言われている. 民間に伝承されている事柄には, 再現性を確保できる手法の確立が必要となるが, 今後の開発の基礎となる貴重な情報がたくさん含まれているように思う.

 天然物が安心で合成品は疑問だ, というつもりは全くない. 身近にある毒キノコやトリカブトなどのように天然物で怖いものは山のようにあり, 合成医薬品で優れているものもたくさんある. また, 身体の構成成分といえども, 偏った量を使うと大きな障害が出ることもある. ただ, ウコン類が属するショウガ科には, 薬効があって副作用の少ないものが多く, 春ウコンの副作用の少なさは極めて稀なことである. 太古から, 人に良さそうな植物を選んで使い続けてきた大きな資産といえる. そのような意味でも, 多成分系で情報が蓄積されているのは西洋の薬草学と東洋の漢方薬なので, この周辺情報の整理から始めると, 免疫賦活を利用した医薬品開発に着手しやすいと考えている.

 また, 免疫系のどの部分の活性が上がるのが効果的かは, 何が疾患原因(異物)であるかによって違ってくると思うので, 疾患別に効果的な天然物も違ってくるかも知れない. また, 他の薬剤と併用するとさらに効果が上昇するかも知れない.  しかし, 筆者らの体を使って比較検討する余裕はない. そこで, 他の薬剤については信念を持って体験している方々の成果を集大成し, データを比較しながら考えるところから始める以外に, 発展の方法はない.

 また, 多くの生理活性物質を比較検討し, 体系化したいとは考えている. 春ウコンはかなり広範な疾患に効果的なものなので, 体系化が終わるまでは, 末期癌の方に勧めることのできる方法は, 筆者らが体験済みの春ウコン法が最良の選択であろう.

 4.1.3の4)にも述べたように, 生薬と漢方薬や天然物全体を見直すことが, 癌や成人病対策の[当面の決め手]であり, 今後, この機運が出てくることを期待している.

 

4.3 試論(その三) 

家系は[ウイロイドライク]の垂直(母子)感染~感染,発症,分類

試論(その三)
 [糖尿病の家系],[一族に癌が多い],[兄弟はみんな高血圧]などとよく言われるが, [家系]や[体質]と言っているものは, [病気の体質を遺伝した]のではなく, [免疫系が非自己と認識しているウイロイドライクを, 親から子供へ垂直感染(母子感染), または, 水平感染(接触感染)した]ものである.

 ウイロイドライクの[感染]とその臓器親和性が, [体質]や[家系]と一般によく言われていることに対する決め手である. 成人になり, 免疫力が下がってから発症する[成人病]イ)の多くは感染症であり、[免疫病]ともいえる.

 ウイロイドライクはDNA,RNAと考えており, これらの感染は, 生命科学で言う[形質転換]である.[体形]は遺伝し, [家系]や[体質]は感染する, と考えている.

 イ)これを厚生労働省は[生活習慣病]と定義しているが, [成人病]、[免疫病]の方が実態に近い.

 

4.3.1 体質と家系は垂直感染:[ウイロイドライク]⇔体形は遺伝:[遺伝子]

 [ヒトの体形と体質]については次のように考える. [体形]は身体を形成するために必要とするたくさんの遺伝子から導かれる. 一方, [体質]は祖先が太古から感染してきたウイロイドライク(病原体核酸類)の集積したものから成り立っている.

 ヒトの細胞は全て同じ遺伝子から成り立っている. 癌細胞などに他の細胞にないDNAが入っているとすると, 感染(形質転換)によるものである. 卵子の[胚盤胞期]以前では感染が起こることはなく, 着床後に母体の血液と接触してから形質転換によって感染が始まる. 親から胎児へウイロイドライクが垂直感染(母子感染)し, 同時に, TLR(Toll様受容体)の中に認識されているウイロイドライクに関連する情報も, 記録され受け継がれていく. ある世代に新たなウイロイドライク類に遭遇(水平感染,接触感染)すると, この世代以後にその垂直感染が始まる. 同時にこの情報がTLRの中に認識される.

 ウイロイドライクの垂直感染率は100%ではなく, また, ウイロイドライクの種類によっても感染率は違っているであろう. ウイルスの例であるが, HIVに感染した妊婦の場合, HIVウイルスの子供への感染率は約20%と言われている(これは帝王切開出産をした場合の感染率である. 普通分娩の場合は, 傷だらけの胎児が産道で母体の血液に触れるので感染率はほぼ100%となる. 貧困地域では帝王切開は望むべくもなく, このため感染率は100%に近づく). また, 母体の健康状態にもよるので, 子供への感染に差異が出る.

 感染率の高いウイルス,ウイロイドライク類もある一方で, 抜け落ちていくものもあると推測している. 食習慣や生活様式の変化も, 集積したウイロイドライクの発症に影響するだろう.
遺伝か感染かは, 本質的に体(免疫系)が[保存しようとしているものか(遺伝)],[排除しようとしているものか(感染)]で判断できる. 排除しようとしているものは体にとって非自己(異物)である. 春ウコンなどによって免疫力を高めることにより活動が抑えられるものは, 体にとっての非自己であると確認できる.

 [体形]は遺伝して子孫に伝えられる. [体質],[家系]と言われる身体にとって不都合な多くの疾患は感染(形質転換)した結果として受け継がれている.

 

4.3.2 癌などの成人病の感染,発症,治癒のメカニズムの推定

1)感染と継代
 実験的にDNAと細胞とを混合するとDNAが細胞に入り, 細胞の遺伝的性質が変化する. このことを[形質転換(=遺伝的性質が変化)]と言うが, ウイロイドライクの感染はこれと同じと考えられる.
ウイロイドライクの継代は定常的に起きていて, 他の細胞に感染しながら増殖を図ろうとする. しかし, 免疫系が正常に機能していれば, 細胞外に出たウイロイドライクは免疫系に淘汰され, 細胞に潜伏したものだけが残る. このため感染細胞はある程度以上に増加しにくい. また, 免疫状況次第では, 感染細胞もマクロファージなどに淘汰される. 一方, 細胞膜を通しての感染[浸潤]も免疫力が低下すると起こる可能性は出る.

 ウイロイドライクの主要な感染ルートである母子感染は, 受精卵が着床したときから始まる. すなわち, 受精卵(胚)が子宮内に降りてきて子宮上皮に栄養芽細胞を介して接着し子宮に定着する. この後, 栄養芽細胞は直接, 母胎の血管と接する<胚盤胞期から着床期Ⅱの胚へとなった時期>13)になる. すなわち, 母体と胚とが相互の毛細血管を通じて連結する. このとき母胎の血液中にあるウイロイドライクは胚に流れ込むことができるので感染が始まる.

 ウイロイドライクに感染した時点から免疫系との戦いは始まり, 浸潤と淘汰を繰り返す. 免疫力があるレベル以下になるまで平衡状態が続気,発症する. 疾患が発症する免疫レベルはウイロイドライクの種類によって異なる. 血球を宿主とするエイズウイルスの発症に到る過程と同じことが, 身体の多種類の細胞で起こっていると推測している.
HIVウイルスを[遺伝した]と言う人はいないであろう. 血球に親和性のあるHIVウイルスと同様に, 太古からのウイロイドライクも色々な臓器への親和性を持って[感染している]と考えている.

2) 発症
 このウイロイドライク(病原体)感染によって形質転換している細胞内の病原体が, 免疫力の低下に伴い活発に活動を始める. 病原体が宿主としている臓器によって疾患の現れ方が異なり, 各種の癌・成人病を発症することになる. 4.2.3の4)の繰り返しとなるが次の表から説明を再開する.

表17 ウイロイドライクの疾患分類
                (前出:4.2.3の3)の表15)

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 イ)脳下垂体ホルモン,甲状腺ホルモン,血糖調節ホルモン,副腎ホルモン,性ホルモン
 ロ)ノルアドレナリン, セロトニン, ドーパミン, アセチルコリンなど

 すでに述べたように, どの細胞も同一のDNAを持っている. 各細胞の使命を決めているのはクロマチン構造の違いであろう. 各細胞に入っているウイロイドライクは, 免疫力が低下するとクロマチンへの影響が可能となる. この結果, 細胞の持つ本来の使命(機能)が失われ, 各種の疾患が発症する.

 免疫力が下がることは, インビトロのような[規制のない状況]に近づくことであり, 細胞に感染 (=形質転換)しているDNA,RNAが機能し始める. 加齢に伴い免疫力がゆっくりと下がっていく時は, ⓣが早めに現れ, ⓠⓡⓢが次に現れ, さらにⓟが現れる. 脳関門で保護されているⓤのアルツハイマーなどはⓟと同様に遅くなって発症する. 加齢以外の他の要因で免疫が急激に下がる場合は, ⓟなどでも増殖速度が大きな癌が早めに現れる.

 ウイロイドライクのタイプは大別して4カテゴリー以上あり, 以下の現象が起こると考えている. なお, ⒶⒷⒹがDNA型, ⒸがRNA型と推測している.

表18 ウイロイドライクの機能障害の分類

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 また, [Ⓐは癌化を加速した結果, 細胞が積層化して生体としての機能が発揮できなくなる], [Ⓑは解毒阻害により蛋白質凝集,毒素蓄積が起こる], [Ⓓは命に関る疾病でないので問題とされずに老化現象として諦めているが, ⓠⓡⓢⓣⓤ以外の各細胞でも同様なことが起こる], などと予測できる.

3)各種要因による免疫低下と春ウコンの効果, 広範な適用拡大を予測
 臓器親和性のある細胞に感染したウイロイドライクは, その臓器で継代を続けている. 発症の可否は個体差が大きく, すでに述べたように, 健康や免疫力の状況によって決まる. 免疫力が落ちⒶ~Ⓓが始まり, 疾患の発症に到る. しかし, 春ウコンのようなもので免疫力を賦活化すると, 活動を始めたウイロイドライクは3ヶ月程度で抑えられ, クロマチン構造は復元を始める. 疾患が抑えられると, 細胞のもつ本来の機能を発揮する.

 免疫低下が引き金となって起こる現象として, Ⓐは急激に起こり, ⒷⒸⒹは緩やかなようである. 免疫上昇による逆反応(回復・治癒)も, Ⓐは急激に起こり, ⒷⒸは緩やかなようであるが, Ⓓによる変形を復元することは難しい.
免疫力が大きく下がり始める年齢の個人差は大きい. 老眼・白髪化などの加齢現象が一つの兆候であろう. 免疫力がピーク時の1/3~1/4となる.
              
 この年齢からは, 厚生労働省が掲げる[生活習慣病の健康対策]を極力心掛けていく必要があるだろう. しかし, 春ウコンのようなもので免疫力を高めることにより, 感染したウイルス・ウイロイドライクの発症を抑えることもできそうなので, 春ウコンの摂取は「生活習慣病」の対策に有効な手段となる.

 表17,表18,図20から, 春ウコンの広範な適用拡大が容易に予測できる(参照:[終わりに]の【これからの課題】の〚適用症の拡大と限界〛).

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図20  ウイロイドライク疾患の発症と免疫力の概観

 また, 免疫系がしっかりできていないと若年層でも生活習慣病と言われるこの種の疾患ⓟからⓥは起こり得るので, 若年性疾患にも春ウコンを試してみる価値は十分あるであろう.

4)用法容量の数学モデルへの展開と疾患の発症,消滅

<免疫力の変動要因>
 成人病といわれる, 癌,糖尿病,リウマチのような多くの疾患は, 免疫力低下状態に連動して発症する. 次の式で表わされるような免疫力阻害要素の影響を受けて発症が決まってくると考えられる.

Ⅾ(免疫力低下)=Σ(f1ストレス+f2過労+f3老化+f4寒さ+f5過剰投薬(ステロイド, 抗癌剤, 抗生剤など)+f6ビタミン不足+f7栄養不足+f8ミネラル過不足+f9不眠+f10肥満+f11運動過不足+・・・・)

 春ウコンの摂取によって各種の疾患が治まるので, 春ウコンの免疫賦活効果は, 上記の免疫力低下要素の各効果を大幅に上回る大きさであることがわかる. しかし, 春ウコンが免疫力低下を抑えるとは言え, これらの要素を小さくすることが望ましいことは言うまでもない. また, D(免疫力低下)の逆を心掛けると免疫力向上につながる.

G(免疫力向上)=Σ(f0免疫賦活剤+f1休養(睡眠)+f2ストレス回避+f3
温+f4ビタミン投与+f5投薬低減+f6笑顔 +f7栄養,ミネラル補給+f8前向きストレス+f9適度な運動+f10 +・・・・)

G'(免疫賦活剤以外による免疫力向上)=Σ(f1+f2+f3+・・・)       

 これらの要素は免疫向上に役立ち, 癌などの発症の抑止効果にはなる. Dが原因で癌にはなるが, 免疫賦活剤以外のG'(f1以下)で癌抑止と治癒を期待するのはむずかしい. 多分, ∣D∣>>∣G'∣であり, ∣f0∣>>∣D∣なのだろう.

 中高年でよく起こる癌,糖尿病などの疾患が, [若年性△△△病]といわれ, 若年層でも発症する. 免疫系の仕組みが構築できていないとも考えられる. この場合に春ウコンが効果を上げるかどうかは不明である. しかし, 若年であっても, それまで生存できていることから, 発症前までは基本的な免疫系がある程度整っていたはずである. よって, 前述したように, 春ウコン摂取を試みる価値は十分にあると考えている.

 自覚症状が出た癌は, すでに末期癌に近い場合が多い. 癌発症の予兆として[風邪がなかなか治らない], [直ぐに眠くなる], [体力が大きく落ちた]などが起こる. これらはよくある事なので, このようなことだけでは[発症した]という指標にはなり得ない. 予兆を示す科学的なメルクマール(指標)が必要である. この指標は, 多分, 免疫状態を表す基本的な尺度のなかにあるであろう.

<免疫力の年内変動と日内変動と疾患の発症,消滅>
 G+Dによって免疫指標の年内変動や日内変動が決まる. 癌を始めとする成人病の芽は, この指標の上下に応じて点滅し, 指標が決定的に下がって発症となる. WD氏の場合を見てみると, 仕事の荷重と気候が定常的に変動していた免疫力G+Dの年内変動がヘモグロビンA1c値換算2.5%前後上下したことになる(参照:1.3(5)). [f1ストレス+f2過労+f4寒さ, など]によるDのピークで, ヘモグロビンA1c値が年内ピークであった. 春ウコンの摂取量を増加して以後の免疫力は高い状態を維持しているので, ピークも現れなくなった. この時点の免疫系を調べておくと, 大変興味のあるデータが出たと思うが, 今から戻ることは不可能である. 誰も, 日々, 免疫の上下が起こり, 癌などの成人病の芽は点滅する.

<数学モデル>
 治癒については, 免疫レベルを測定し, 監視しながら数学モデルに沿って抑えることは可能であろう. また, 一般式としても, 図20のようなモデルがあって式を作成することもできる. しかし, 癌の発症については, [突発的にDが下がり, 3ヶ月で末期]となると, カタストロフィー理論で解く以外に方法はなさそうであり, 予防の心掛けが大切になる.

 春ウコン法は, 用法用量共に許容範囲が比較的広いので, 使いやすい方法と言える. しかし, 最終的には, 図12(参照:4.1.3の2)③),図19(参照:4.2.4),図21(参照:4.5.6)などを勘案し, 多くの症例で精緻なデータを取り, 免疫賦活剤の特性や効能と免疫指標との間に, [数学モデル]を作り上げる必要がある. ここまで研究の完成度を上げると, 多くの人が一段と安心できる確実な方法となる.

5)疾患の回復と細胞の修復
 いくつかの癌の例を見ると, 癌化した細胞が上皮細胞と間質細胞では, 回復後の細胞の修復状況が大きく異なる. 新陳代謝の速い上皮細胞の癌は, 春ウコンにより免疫賦活すると癌が治まり, 壊れた細胞膜も新陳代謝することにより修復される. 一方, 代謝が遅い間質細胞の癌の場合は, 癌が治まっても細胞がなかなか新陳代謝されないので, 長い期間, 細胞膜が壊れたまま修復されない状態が続く.

 また, 糖尿病では, 急性の場合は春ウコンですぐに治まり正常値になるが, 慢性化して長期間の糖尿病薬の投与によって細胞が損傷を受けた場合は, 簡単には疾患が治まる部分とそうならない部分に分かれる. これも, 一つの臓器が新陳代謝速度の異なる上皮細胞と間質細胞で構成されていることにより, 起こってくると考えられる.

 経験したいくつかの例を整理してみると, 以下の事項が考えられる.

<[細胞別の新陳代謝の特質],[臓器別の細胞構成]および[疾患の治癒],[細胞の修復]の関係> 
 投薬による損傷を受けてない限り, 癌を含む多くの成人病は, 春ウコンの免疫賦活によってほぼ同じ速度で治まる. しかし, 疾患は治まっても病原体によって損傷を受けた細胞が修復される速度は, 細胞に固有な細胞分裂の性質[細胞の寿命(再生期間)]によって決まる. 例えば, 小腸粘膜上皮は1~4日, 皮膚は12~14日, 赤血球は4ヶ月, 肝臓,腎臓は18ヶ月で再生されるといわれている. また, 神経細胞や筋細胞のように, 発生期以外は細胞分裂がほとんどない細胞もある.

 大別するとよく分裂する上皮細胞と分裂の少ない間質細胞u)(非上皮性細胞,筋細胞,腺房細胞)に分けられる. 多くの臓器は, これら寿命の異なった細胞の組み合わせで構成され, その構成比は臓器の使命によって異なる.

 以下, 癌の治癒と細胞の修復について, 2つの例を挙げて比較する.

表19  前立腺癌の比較表と前立腺細胞

画像の説明

  • ①前立腺細胞構成は, 上皮細胞が少なく, 大部分が間質細胞である. よって, 癌が治まっても新陳代謝で細胞が入れ替わらず壊れたままなので, 癌だった細胞からPSAが流れ続ける. しかし, 癌細胞は増加しないので, PSA値は上昇しない.
  • ②転移の始まる前のPSA値は700程度である.
  • ③前立腺細胞の新陳代謝は極めて遅く, 10%/年程度である.
  • ④骨に転移した前立腺癌は, 代謝の速い上皮細胞へ転移している. 免疫賦活後3週間で転移癌は消えた. 前立腺から転移した細胞が骨に着いて細胞増殖したとすると, 間質細胞なのでPSA値は落ちないはずである. よって, 転移した細胞が増殖したのではなく, 転移細胞のウイロイドライクが骨の上皮細胞に浸潤して癌化したと考えることができる. 代謝の遅い転移細胞が増殖していないので, [癌は癌細胞が増殖するのではなく, 細胞の異常化が増加(伝播)する]ことを示している(参照:4.5.7の2)). 前立腺の上皮細胞が転移したと考えることもできるが, 確率的には間質細胞が転移するのであろう.
  • ⑤大部分の臓器の癌は単純に治まり,癌マーカーの流出は止まる. 各臓器の間質細胞癌の場合, この細胞に固有の癌マーカーが見つかれば, 流出し続けることを確認できることになろう.

  表20  肺癌の治癒後の影の有無と細胞の種類

画像の説明

  • ①癌の部位によって, 癌が完全に消失する場合と影が残る場合がある. 癌化した細胞の種類によって, このような差異が生じた.
  • ②同じ肺の中でも, 癌化した部位が細胞の性質が違う部位であれば, このようなことが起こっても不思議はない. (1),(4)は新陳代謝が速い上皮細胞, (5)は遅い間質細胞であろう.

<[投薬による細胞の損傷]および[細胞の修復],[疾患の治癒]の関係> 
 多くの成人病の治療に使われる, 酵素阻害剤,ステロイド薬, 制癌剤などは, 症状を一時的に抑えるのには適しているが, 長期的視点で疾患を根本的に治すのには向いていないものが多い.

 疾患を抑えるのには, 免疫賦活をしてウイロイドライクの動きを止めなくてはならない. 薬剤による細胞損傷で, 損傷細胞内に免疫の影響が伝わりにくなる. 投薬によって損傷を受けた細胞の機能回復は, 新陳代謝を待つことになる. 損傷細胞が上皮細胞か間質細胞かによって, 回復に要する時間は大きく異なる. また, 投薬で細胞機能が低下していると, 春ウコンなどで免疫力を上げてウイロイドライクの活動を止めても, 機能回復しない可能性も考えられる. 解明は今後の研究に期待したい. 

 まず, 糖尿病の例で比較する.

表21 糖尿病薬の使用の可否と治癒まで要する期間

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  • ①投薬しないと糖尿病は, 免疫賦活により3ヶ月程度で抑えることができる.
  • ②長期間の投薬で膵臓細胞が損傷を受けている場合, ヘモグロビンA1c値をある程度まで落とし, 免疫力を上げた状態で糖尿病薬を中止し, 新陳代謝で損傷細胞の入れ替わりを待つと, 糖尿病からの回復が期待できる.
  • ③一例では結論を出せないが, 膵臓も肝臓,腎臓と同程度の期間で再生する.
  • ④膵臓は, 約60%が上皮細胞, 約40%が間質細胞と推測できる. 両者とも糖尿病薬の損傷を受けている. 上皮細胞部分は新陳代謝により3ヶ月間で細胞が入れ替わると同時にその部分の膵臓機能が回復したが, 間質細胞部分は血糖降下剤を中止後にゆっくりと回復している, と推測できる.

 同様な比較が, 喘息についてもできる(参照:1.5(10)の1)と2)の比較). 糖尿病と喘息だけでなく, 他の疾患でも同様のことが起こる可能性は大きい.

 また, 投薬中止により春ウコンによる疾患回復の可能性が出てきているので, 投薬による細胞損傷と推測できる一部の例について, 投薬中止による損傷の回復可能性と対象疾患を概略イメージの表とした. 詳細な検討により表を充実していく過程で, 新しい治療法となることが期待できる. また, 投薬による細胞損傷は表22に限らない課題である.

表22  投薬による細胞損傷と疾患回復のイメージ表

画像の説明

  • ①治療薬を急に中断すると危険が伴うことがある. 時間は掛かるが, 免疫力を上げ続けながら投薬量を減らしていく方法が, 無理のない方法であろう.
  • ②制癌剤の副作用は, 代表的な骨髄抑制など, 長期間継続するものが多い. 春ウコンに切り替えても即効性が得られないのは, 副作用の継続性が原因である. 制癌剤の副作用が軽減した部分を春ウコンが免疫賦活することになる. 制癌剤には回復不能な後遺症もある.
  • ③ステロイドの重症副作用は, [感染症,糖尿病,精神障害,骨粗鬆症,副腎不全など]であり, 大きな免疫低下要因であることを示している. 春ウコンで解決できそうな疾患が多い. また, 肝臓障害など, 解毒機能の低下がアレルギーを起こす原因となる. 表21 (5)の④と同様の療法が課題となる.
  • ④ウイロイドライクのカテゴリー別に形質転換の仕方が異なり, 回復の仕方も違ってくるとも考えられる. 少数例の比較なので精緻な論議はできないが, 細胞の種類に留意する視点は重要と考える. 今後の研究に期待したい.

<免疫力の個人差>
 基本的な免疫機構の仕組みは同じでも, 免疫細胞の供給力や経年的な部分劣化などに個人差があるため, 長期的に見ると図20のように係数aが必要となる. しかし, 春ウコンによる免疫賦活の反応を見ると, 短期的に見て春ウコンの活性に個人差は少ない.

6)病原体DNAとRNAの選択的除去技術
 癌の病原体と予測している[DNA,RNA(ウイロイドライク)]の抜本的な治療は, 細胞内にたくさんあるDNA,RNAから, 病原性のDNA,RNA(ウイロイドライク)だけを選択的に除去することになる. 病原体の除去は免疫細胞の認識の眼と釣り上げ技術との組み合わせとなるので, 現在の技術では難しいことであろう.

 

4.3.3 臓器親和性と疾患

1) ウイロイドライクの臓器親和性
 ウイルス類と細菌類は, 特定の組織に好んで感染すると, ここを宿主として継体,増殖するといわれている(臓器親和性). ウイロイドライクも遺伝子に近い形をしているが非自己であり, 垂直感染(母子感染⇒形質転換)をして臓器親和性のある特定の臓器に感染し, ここを宿主細胞として継代を続けていると推測している. 臓器親和性は, 細胞の表面特性(膜蛋白質など)とウイロイドライクに結合している蛋白質との親和性などが一つの要因となって決まるのだろう. そして, 各臓器細胞に親和性のある病原体が, これを宿主として寄生し継代しているが, 免疫力が落ちると発症して疾患に到る.

 [膵臓に入ったウイロイドライク類が増殖し始めると糖尿病, 膵臓癌], [腎臓,脾臓での増殖は高血圧や腎臓癌,脾臓癌], [胃での増殖は胃潰瘍, 胃癌], [神経のクロム節や副腎皮質での増殖はうつ病], [骨細胞での増殖は骨粗鬆症,骨腫瘍], [卵巣での増殖は卵巣膿症,骨粗鬆症,卵巣癌], [肝臓(腎臓を一部含む)での増殖は肝炎, 肝硬変(肝線維症), 脂肪肝, 肝臓癌, アレルギー, アトピー性皮膚炎, じん麻疹など], [腎臓の糸球体での増殖は腎臓炎, ネフローゼ, 腎臓癌], [胆のう周辺での増殖が胆のう炎, 胆のう癌, 胆管癌], [脳では脳腫瘍, アルツハイマーなど], [視神経を侵す場合は近眼・遠視], [房水調節器官での増殖は緑内障], [水晶体での発生が白内障], [他の神経の場合は聴覚・嗅覚・味覚障害], [唾液腺・涙腺などの分泌腺での増殖がシェーグレン症候群], [ウイロイドライク(RNAタイプ?)の病原体が原因となり, 蛋白質放出を関節・脳内で起こしたとき, これが周囲を圧迫すると関節炎,アルツハイマー,ヤコブ病,BSEなど]などになる, と推測している.

 表14 [ウイロイドライクの分類イメージ](参照:4.2.3の3))と重複するが, 説明を補足した.

2)多種類のウイロイドライク
 免疫力低下とともに起こる疾患の病原体としては, ウイロイドライク以外にウイルス類,細菌類なども関与した, 複雑なケースもあると考えている.

 肝臓を例として考えてみる. 肝炎(ウイルス性, 薬物性など)は別として, 肝硬変, 肝線維症, 肝臓癌の病原体は別々のウイロイドライク類と推測している. 肝硬変, 肝線維症が前癌症状とよく言われるが, 順番が決まっている訳ではなく, 前癌症状なしに肝臓癌に突然なる人もいるだろうし, 肝硬変で長期間止まったままの人もいる. このことは病原体が異なると考えた方が自然であり, 現象を理解し易い. 臓器親和性について前の項の1)でのべたが, 細胞の表面特性(膜蛋白質など)とウイロイドライクに結合している蛋白質との親和性などが一つの要因となって決まるとすると, 主骨格(核酸部分)が同じで親和性を示す部分が異なるウイロイドライクは, 膨大な数になる.

 肝硬変や肝線維症のような何らかの疾患で長期間細胞が損傷を受けていると, 病原体が感染して癌になり易くなることは, 多分, 確かなことであろう. これと似たような関係にある多くの例のなかに, [ピロリ菌と胃潰瘍や胃癌], [HPVと子宮頸癌]の関係などがある. 同じ臓器に異なるウイロイドライクが感染している場合に, 治癒しにくい厄介な疾患が, 免疫力低下にともなって, 同時に, あるいは, 次々と起きてくる.

 癌や糖尿病が治まることが確からしいと思い始めた頃に, 図9[老化~免疫~遺伝子~ウイルスと健康] (参照:2.3(3))を作って, 疾患を持っている友人や知人に説明した. 当時は, 「癌=ウイルス説は確からしい」と考えていたので, この図は完全なものではなかった. しかし, ウイルスとウイロイドライクが類似の機構で親和性のある臓器を宿主として継体をしていると考えられるので, 考え方は現在と大差はない.

 以上からみて, 著しく細胞性免疫機能を低下させるHIV(AIDS)にも春ウコンを試してみる価値があるだろう.

 

4.3.4 太古からのウイルス類とウイロイドライク類の集積:先天的

1) ウイロイドライクは親から子へ・・・・・・そして風土病
 癌も成人病も, 昔は[ある限られた地域の風土病的なもの]だったのではないかと推測している. 日本人に糖尿病,近眼,消化器癌などが多いのは, 風土病の垂直感染・水平感染と見ることはできないだろうか. 感染しやすいウイルスやウイロイドライクが共通の疾患として選択的に残り, それが厚生労働省の言う[生活習慣病]の原因となっているのではないかと考えている.

 その地域固有のウイロイドライクと鳥などが運んだウイルスが地域内に拡がり, 地域固有の風土病となって体質・家系を形成し, これに耐えられなかった人が淘汰され, 勝ち残った人はこれらの病原体類を抑える免疫力を多少持つことになる. 病原体に強い体質の子孫が選別されて生き残り, 生き残った家系でもウイロイドライクやウイルスなどが垂直感染し, 成人になり免疫が下がると発病する. これらの感染はまさに形質転換(参照:4.2.1の2))そのものである. 免疫力が強くない限り, この病原体を排除することはできない.

 免疫力低下は種々の環境が作用するので, 個人差は大きく出るであろう. 一方, 病原体に強い体質,仕組みを持っている人は, 発病に至らないこともあるであろう. このようなウイロイドライク(病原性核酸類)の集積と淘汰を太古から繰り返しながら, いわゆる, [体質, 家系, 形質]と言われる性質を形成してきているのではないかと推測している. この中で感染確率が高いものが, [合併症]と言われる疾患となる.

 これらは, 疫学的な調査をして初めて風土病的なものが解析できることであ
る. 日本の場合, 平安時代以後, とりわけ江戸時代以後は, 日本全体の人の流れは世界で例を見ないほど極めて流動的イ)だったために, 全国的にかなり均質化していて, この解析を難しくしているように思う.

 しかし, 近年まで地理的に孤立していた地域の解析から, 貴重な情報が得られることもあるであろう. 九州地方以南に多いと言われる[成人T細胞白血病 (ATL)], アフリカの特定地域にあった[HIV(AIDS)],[エボラ出血熱]などはこの例と考えられる. 現代では世界全体の人の流れが飛躍的に大きくなってきているので. 今後は, 一層, 人類全体が病原性で均質化していくのではないかと予測している.
  イ)「移封・転封」などの国替えによる大移動や「お伊勢参り」などの旅行

2)合併症はウイロイドライクによる複数感染の高確率疾患
 疫学調査によって成人病の発生率を調べた結果は, 種類が多数あるウイロイドライクの感染分布を示すことになる. また, 合併症の調査もよくなされるが, ウイロイドライクを重複して感染する確率の高い疾患を合併症と言っていて, 地域による感染率は異なると考えている. しかし, それぞれは別個に罹っている疾患であり, 必ず合併して出る疾患とは言えない.

 WHO(世界保健機関)によると, [60歳以上の20%近くがうつ病の症状]とある. また, [うつ病の発症率は, パーキンソン病患者で51%, 癌で42%, 糖尿病で27%, 心筋梗塞で25%]14)とのデータもある. これらの合併症と言われる疾患は, WHOが調べた対象地域のウイロイドライクの感染分布を示していることになる.

 これらの疾患の感染率は, 免疫力が加齢などで下がるに従い, 次々に現れてきた別々の疾患の発生率で確認できる. 前項に述べたように, 地域に固有の形質転換的に感染するタイプの疾患が, 成人Tセル白血病のように風土病として拡がっていると考えている. 時代を経て, 多くの疾患の感染がいきわたると, 合併症と言われる病原体を併せ持っている人数が多くなる. よって, これらを併発することも多くなり, あたかも[合併した疾患]と見えるので, 合併症と言われるようになった理由と考える.

 また, 糖尿病には3大合併症[網膜症,腎症,末梢性神経障害]があると言われている. 疾患の発症し易さがあり, 多分, 糖尿病から順に発症するので[糖尿病の合併症]と言われるのだろう. 糖尿病の合併症は, 糖尿病に罹り微小血管が障害を受けた結果として起こってくる疾患と言われている. 一般的な合併症とは, 多少, 意味が異なり, 障害を受けた血管などの部分に感染が起こると考えられる. しかし, これらの疾患は, 免疫力を上げ得れば同時並行的に治まる. 1.3(1)の糖尿病患者のケースが典型的である. 春ウコン摂取後1ヶ月でうつ症状が治まり, 次に, 春ウコン開始後3ヶ月でレーザーによる網膜症治療は不要となり, 同時に糖尿病も良くなった. 障害を受けた血管が修復したことになるので, 糖尿病由来の自律神経障害, 末梢神経障害, 壊疽(エソ), 更には, 一般的な動脈硬化などへの効果も期待できる.

 一方, シェーグレン症候群(参照:1.5(5))は, 唾液腺,涙腺,口角などへのウイロイドライク感染が, 免疫低下とともに同時に発症する感染症, と見ることもできる. これらの器官の細胞に共通性を持つある種のウイロイドライクが, これらの細胞を同時に宿主として継体している, と考えれば理解できる. 春ウコンによる免疫賦活で, 自己免疫疾患といわれているこの疾患の多数の症状が同時に治まる. シェーグレン症候群は, 免疫系が非自己と認識しているウイロイドライクが病原体となる, [狭い範囲の合併症]と言える.

 

4.3.5 新しいウイルスや,ウイロイドライクの感染は水平感染:後天的

1) 新規なウイルス,ウイロイドライク源
 スペイン風邪は, 特定の地域に局在化していたウイルス類が世界的に拡がり,かなりの犠牲を世界中の人たちに強いたあとに, これに耐え忍ぶことができた人が生き残り, 終息に向かった. AIDS,SARS,成人T細胞白血病,鳥インフルエンザなども, 熱帯雨林帯の開発などにより, 森林に閉じ込められていたレトロウイルス類などを, [パンドラの箱]の蓋を開けたように, 世界に向けて飛び出させた結果のようにみえる. 今後もスペイン風邪と同様に新しい病原体が拡がる可能性はまだある.

 また,人工ゲノムの研究が始まっている.形質転換で感染可能なこの種の人工DNAの設計・合成は,未来に大きな禍根を残す可能性があり,重大な懸念材料といえる.

2) 感染原因の拡大と生活習慣
 [食物や嗜好品による刺激](酒,煙草,塩分,肉類などの各種の生活習慣と偏食および微生物などの汚染),[物理的刺激](熱,力,放射線,紫外線,アスベスト,放射性粉塵など),[化学的刺激](薬物,タール,活性酸素など),[微生物的刺激](肝炎ウイルス(B型,C型など),ピロリ菌,HPVs)など), などの作用によって細胞,臓器が損傷を受ける. そこに, 自身の体内にあるウイルスやウイロイドライクが感染する. 何年かして免疫が下がると感染したウイルスやウイロイドライクによる疾患が発症するものと思われる.
また, 前癌症状と言われる疾患になると細胞が損傷し, 癌などの病原体が細胞に入りやすくなる. 生活習慣による細胞の酷使は細胞損傷となるので, 親から受け継いだ癌を損傷細胞へ拡げることを助長するのだろう.

 例えば, 薬物や酒類による肝臓障害, 医薬品の副作用による対象臓器への障害, 煙草や灰塵,アスベストなどによる肺損傷, 熱いものを好む人の胃,食道の糜爛, 交通事故,武道猛稽古などによる脊髄損傷, 皮膚への過剰な紫外線照射, あるいは, 自然界の放射能や原子爆弾,劣化ウラン弾,放射性粉塵を含む放射線被曝, などによる細胞の損傷が, 後年の癌の発症原因につながる.

 また, 古い話では, ロンドンの煙突掃除夫の陰嚢癌, 染料工場従業員の膀胱癌, アクリロニトリル研究者に多いと言われる肝臓癌, コールタールによるうさぎの耳の発癌など, 化学的に損傷を受けた細胞にウイロイドライクが入り, 免疫力低下と共に発癌に至ることも多いと推測できる.

 酷使して損傷した関節に病原体が感染し, 中高年になって免疫力が低下するとともに厄介な関節炎やリューマチになるのも, 類似現象と考えている.
 
3)水平感染と感染力
 垂直感染が起こるとすると, 当然のこととして, 接触感染を含めて水平感染もあり得ることである. 皮膚には見えない傷が無数にあり, これにウイロイドライクやウイルスを含んだ第三者の体液が触れた時にも感染が起こることがあり得る. もちろん, 輸血でも感染は起こると考えられる. しかし, 空気感染で感染するほどの強い感染力はないと思われる. それは, 免疫力で簡単に排除されてしまうからであり, 癌などが, 免疫力の低下状態で浸潤によってのみ感染できることからもわかる(参照:4.5.1①). また, 各疾患の発生率が急速に上昇しないことからも言えるであろう.

 かつてB型肝炎の治療法が確立していなかった時代には, 病院関係者がB型肝炎患者の血液に知らずに触れて, 劇症肝炎を起こして亡くなる医療事故をマスコミがよく取り上げていた. B型肝炎に限らず, 各種の病原体でこのような感染(医療事故)が起こる可能性がある. また, 癌研究者は癌で亡くなることが多いと聞くが, 癌もB型肝炎の事故と同様に感染が起こっている可能性がある. しかし, 感染してもすぐには発症せず, 免疫が下がるまで発症しない疾患については, 疾患と感染の因果関係の立証が難しいので, 話題とされることはないであろう. これは今後の課題になると考えている.

 そして後天的なウイルスやウイロイドライクの蓄積は, 多分, 色々な場面で起こっていて, 子孫にまで廻っていくことになるのであろう. 自身の体の中にいる病原体はもとより, 存外, 身近な色々なところにウイロイドライクは存在し, 疾患の再発・転移の原因となっているのかも知れない.

 

4.3.6 遺伝子とウイルスとウイロイドライク・・・・・いくつかの課題

  • ①細胞の中にウイロイドライクが入った時, 微生物としての同定は難しさがあるであろう. 何らかのトリガーにより著しく増殖が促進され, 癌や成人病となって初めて存在がわかることになると推測している. 感染の初期には, PCR法以外での検出法は難しい. また, ウイルスのように蛋白質の殻がないとすると, 電子顕微鏡などで確認できない. 癌遺伝子説(オンコジーン説)はかなり膨大な研究の末に存在を確認したと聞いているが, ウイロイドライクにも同じようなことが言えるかも知れない.
  • ②[ウイルスと癌に感染した細胞あるいは癌の病原体]だけを攻撃するような精緻な抗ウイルス薬や制癌剤が完成すれば, ウイルスの淘汰と癌の撲滅はできるであろう. しかし, ウイロイドライクが病原体であるとすると, 化学的にみて遺伝子との差異が殆どないので, 病原体だけを化学的・物理化学的に識別して攻撃することは極めて難しいことと考えられる. 素晴らしい制癌剤の出現を期待したいが, 当面, 限られた癌以外は制癌剤で抑えることは難しいようなので, 春ウコンのような免疫賦活剤に頼らざるを得ないと考えている.
  • ③ウイルス,ウイロイドライクは[厄介な居候]のようなものと考えられる. 親和性のある細胞に寄生して継体し, 宿主の免疫力が下がると抑える機能がなくなり, 同時に急激な増殖が始まるようである. 癌に限らず, 風邪,ヘルペス,成人病などのどの疾患も, 免疫の状況次第で発症⇔回復を繰り返す. また, 遺伝子とこれらの疾患の病原体との識別はむずかしいので, 医薬品による病原体除去もむずかしい.
  • ④癌細胞と正常細胞では, 熱に対する強さの差異があると言われている. 1)温度が上がると免疫系が活発になるためなのか, 2)ウイルス,ウイロイドライクが熱に弱いのか, 3)高温になると継代が阻害されるのか, などを解明することが今後の課題である.
     
  • ⑤免疫レベルの簡易測定法開発が重要になる. 癌,糖尿病などの発症と免疫レベルの関係についての研究が進めば, これらの疾患にたいする対処方法が明確になるであろう. 同時に, 治療する上で重要な[春ウコンの用法用量と免疫レベルの関係]も明確になる.
 

4.4 試論(その四) 

加齢現象はウイロイドライクやウイルスの活発化

試論(その四)
 神経親和性のある[ウイルスやウイロイドライク]が, 免疫力の低下にともない活性化する状況が, いわゆる[加齢現象]である. [視力が衰える(老眼など)],[耳が遠くなる],[鼻が利かなくなる],[味がよくわからなくなる]などの五感の後退は, 大きな免疫力低下にともない, 神経細胞に親和性のある[ウイルスやウイロイドライク]が増殖し五感の働きを低下させることに起因する.

 もちろん, 記憶力低下,頭髪(白髪など),成人病,うつ病などの加齢にともない起こる現象も, ウイルス,ウイロイドライクと免疫との関係で推論できる.

 加齢現象と言われるものも, 早めの免疫賦活で進行を回避できるので, 遅延可能となる. 加齢と諦めている症状も免疫力低下による原因が多い.

 一方, 免疫を形成する時期に栄養的な偏りなどにより, 免疫系が不十分な場合に, [若年性の○○○病,△△△病]と呼ばれる症状になると推測している.

 

4.4.1 視力,聴力,嗅覚と感覚器
 生命に直接影響を与えないので軽視されがちであるが, [近視,遠視]のように数値で測れる視力の場合は, 眼鏡の度の進み方で免疫力低下傾向が分かることになる. 免疫が下がり始める年令は個人差が大きい. 眼の悪い人は, 眼鏡を初めてかけた年齢が, 免疫が落ち始める第一段階の目安かも知れない. 十歳前後の胸腺の小さくなって行く時期に一致しているのであろう. また, 老眼が始まる年齢が, 免疫が大きく落ち始める癌年齢のようにも見える.
眼鏡をかけている日本人は大変多い. 視神経に細胞親和性のあるウイロイドライクは日本の風土病といえる. 老眼,緑内障などは, 毛様体と房水調節器官などの視神経細胞周辺組織が感染しているウイロイドライクの活動により起こる.

 筆者Aは春ウコンを摂り始めた時から20年間, 近視の眼鏡に度の変化は全くない. 免疫力向上が視神経親和性のあるウイロイドライクの活性化を抑える.  聴力などの各種の感覚障害は, 神経伝達物質の分泌障害と考えられる.

 

4.4.2 うつ病と神経

1) モノアミン仮説
 かなりの確率でうつ症状が春ウコン摂取で治まる. 4.3.3の1)では, 話を単純化して[神経のクロム節と副腎皮質のウイロイドライクが増殖]とした.

 うつ病の原因に[モノアミン仮説]がある. 神経伝達物質であるセロトニン,ノルアドレナリン,ドーパミンがいずれもモノアミンであることからこの名前がついた. セロトニンは気分の調整, ノルアドレナリンは気力の充実, ドーパミンは行動の動機付け, などの働きに関連すると言われている. そのほかの神経伝達物質として, アセチルコリンやエンケファリン,エンドルフィンなどのポリペチド, も発見されている.

 このモノアミン仮説が正しいとすると3種類のモノアミンを出す器官に障害が出ることになるので, 3種類から1~3種のモノアミンを選ぶ[組み合わせ]から7種類のうつ症状があることになる. アセチルコリンも伝達物質とするとうつ症状の種類は15に増える. さらに沢山の神経伝達物質があると症状の種類は更に増え, これらが免疫力の状況や感染の程度によって変化するので, 複雑な症状が起こることが予測できる. これらの神経伝達物質の分泌器官に潜んでいるウイロイドライクやウイルスが, 免疫力低下に伴って活発に活動を始めると伝達物質の分泌抑制が起こり, うつ症状が始まる. しかし, 春ウコンの摂取でいくつもの分泌抑制が同時並行的におさまる.

 糖尿病の場合のインスリンの分泌と膵臓のβ細胞の関係のように, うつ病はノルアドレナリンなどのモノアミン類の分泌と神経細胞の関係となる. ともに分泌器官をウイロイドライクが抑制している. 春ウコンで免疫力をあげて, この病原体を抑えることができたので, うつ病が解決した. 大部分のうつ病は[心の病]ではなく, モノアミン分泌器官に病原体が作用しているだけの単純な感染症であることが多い.

2)ストレスなどの免疫低下要因とうつ病
 仕事上のストレス, 過労, 寒冷や加齢などによって免疫力が低下するとうつ病は発症し易い. WD氏の糖尿病の変動図8(参照:1.3(5))は, 免疫力の年内変動を示している. また, C型肝炎ウイルスのインターフェロン治療では, 副作用として[うつ症状]が話題となる. インターフェロンによる免疫力の低下が, 潜在的に神経伝達物質分泌器官に感染しているウイロイドライクを活性化することによりうつ症状を引き起こす, と推測できる.

 産後うつの原因も, 過労やストレスによって免疫力が下がった結果として神経伝達物質分泌器官にいるウイロイドライクが動き出すとも見える. また, 60歳以上の老人性うつは, 20%というWHO(世界保健機関)の報告がある. さまざまなうつ症状も類似の状況とすると, これについても春ウコンを試してみる価値がある.

 

4.4.3 記憶と外観

1) 記憶
 記憶力の後退は, 免疫力低下により, 神経細胞に親和性があるウイロイドライクが神経細胞を通って脳関門を通過し, シナプスに到達して活動を始めることにより起こる. ウイロイドライクが原因となって蛋白質生成が始まり, 同時に, 蛋白質の分解・吸収も始まる. 生成速度が吸収速度より大きくなると, 蛋白質が蓄積し始めて浮腫がでる. これが記憶減退の始まりとなる.

 このウイロイドライクの中で, 脳のシナプスなどでの増殖速度が大きく, そのmRNAから導かれる蛋白質がアミロイドβであり, 脳の左右頭頂葉の角回,上縁回あたりに蓄積した場合がアルツハイマー病である.

 また, 同質の疾患としてBSE(狂牛病),ヤコブ病を捉えることができる. 免疫力が下がった結果, 蛋白質の生成速度が大きくなり, 分解速度を超えた時に浮腫ができ始める. これが記憶,運動機能に影響を出す. さらに免疫力は下がっていくので, 蛋白質生成は加速して浮腫は増えるが, 同時に分解,吸収も並行して進んでいるので, 吸収した部分がスポンジ化する.

 免疫力を上げて疾患の進行を止めることができた時に, ①脳内に蓄積されているアミロイドβが吸収されて消失した時に浮腫による影響が復元するか, ②遮断された回路にバイパスが形成されるか, が課題となる. ①②が起これば治癒の可能性がある. 浮腫による脳への影響をどの程度消すことができるか, また, 免疫賦活対応が早くできたか, などが, 症状の軽度化や治癒につながる.

2) 白髪・禿髪 
 中年過ぎによく見られる白髪化,禿髪化は, 毛根細胞に親和性があって感染していたウイロイドライクが, 免疫低下と共に活性化した結果として起こった現象である. 筆者の場合, 45歳頃に白髪が出始め, 白髪量が5%程になった47歳で春ウコンの摂取を始めた. それ以降の20年間, 白髪量の増加傾向は鈍化した. 白髪,禿髪を家系と捉えて話題とすることがあるが, 毛根へのウイロイドライクの垂直感染とみることもできる.

 毛根への多くの障害は, 若年層にも起こる. 円形脱毛症,部分白髪がある. また, 突発性難聴なども含めて, 大きなストレスや過労による免疫力の低下が影響を起こす, 一過性の症状である.

 頭髪の黒色はメラニン色素である. この顆粒の集中,分散によって黒⇔白が決まる. メラニン色素を瞬時で調整しているのがカメレオンである. カメレオンのメカニズムはわからないが, 免疫力次第で顆粒の集中・分散の変化が急速に起こる可能性はある. フランス革命時, バスチーユ牢獄のなかのマリーアントワネットが一夜にして白髪化したと言う古事には多少の誇張があるかも知れないが, この一例とも思える.

3)皮膚と消化器
 皮膚にもウイロイドライクが継体していて, 免疫力の低下とともにシミ,皺が出始める. シミ,皺だけでなく, 皮膚の感染防御機構も免疫とともに衰えることもありうるので, 重要課題となる可能性がある.
同様に, 皮膚に近い消化管膜でも同じようなことが起こる可能性がある. 消化機能の低下も起こるので, 消化器系障害もウイロイドライクの場合がある.

 

4.4.4 広範な慢性障害

 癌,成人病などは, 試論(その二)と試論(その三)に詳しく述べた. また, 加齢後には循環器系,呼吸器系,排泄機能などにもさまざまな影響が出る. これらの中高年で起こってくる症状と疾患について, 免疫系と疾患原因との関係を, 一度は考える必要がある.

 春ウコン程度の免疫賦活剤では, 進んでしまった変化を復元するほどの力はないようだ. しかし, 老化現象の進行速度を下げることはできる. この種の免疫賦活剤を摂取して免疫力を上げることは, 加齢から来る広範な慢性障害の解決につながることも多い. 早めの対応が必要となる.

 加齢の予兆はいろいろのところに出てくる. また, 加齢と共に各種の負荷を過大に敏感に受けるようになる. 過労,ストレス(精神的,環境面など)などの負荷と免疫力低下との関係の解析,検査方法が開発されると, 効果のある対処療法との組み合わせで先手を打てるようになる.

 仕事の苦労と煩悩からのストレスが免疫力低下の主要因である. これらから  の脱出が長寿につながる. [百八の煩悩],[八万四千の煩悩]から遠い世界で研鑽を積む長寿の高僧と聖職者に, 学ぶところは多い.

 

4.5 試論(その五) 

癌は悪化も回復も極めて速い

試論(その五)
 免疫力が極めて下がった状態で癌は発症する. 春ウコンで免疫賦活をしてみると, 大方の癌は3ヶ月以内に抑えることが可能である. 対象者は12年を筆頭に延命中であり, その限界は今後の推移を待つ. 余命数ヶ月と言われた場合でも, 数年単位の延命ができている. 一方, 現在の癌療法では免疫力向上が困難なので, 癌と確定後の平均余命は3年となる(癌患者120万人, 癌による死亡35万人/年).

 各種の癌に対する春ウコンの効力には個人差が少ない. 免疫系の基幹部分(免疫細胞を活性化する胸腺と推測)に作用しているからであり, また, 基幹部分の仕組みに個人差がないことを示している.
一方, どの組織の癌も, 発症と治癒の仕組みが免疫力との関係で類似しているので, 春ウコンが等しく効果を発揮する. 回復速度の個人差も少ない.

 春ウコン法はQOL(生活の質)に優れている. 体調の全般的な改善度が良く, 副作用や後遺症も経験していない.

 

4.5.1 癌の発症と悪化・・・・・癌は免疫に極めて敏感

 癌などの発症と悪化の現象は下記のように考えられる(参照:4.5.7の2)).

  • ①免疫系が正常に働いている生体内(インビボ)では, 細胞内に免疫力の影響が及び, 病原体は動き始めることができない. 癌は浸潤イ)によって拡がり始める. これは, 癌が免疫系に対して極めて弱いので, 浸潤以外の拡がり方ができないからである. 癌は全身の免疫力が下がったときに, 体液を通した転移が可能となる. また, 免疫力が下がってから発症する多くの成人病も, 免疫系に対して極めて弱いので, 病巣の拡大は癌と類似している.

   イ)周囲の組織や臓器に拡がることを指す.細菌類のように体液を通して感染できるほど
    感染力が強くないので, 免疫力が落ちてから浸潤が始まる.

  • ②老化,寒気,強いストレス,不眠,過労などで免疫力が下がり, 免疫力の届きにくい領域(空間)ができる. その領域の細胞に癌ウイロイドライクが潜伏していると, 発癌に至る. 免疫系が攻撃する必要がある領域が拡がると免疫系がここに集中するので, 身体の全域の免疫力が下がっていく.
  • ③[免疫力が下がる]と言うことは, インビボがインビトロ(試験管内)の状態に近づいたことである. インビトロでしか起こらない反応が, インビボでも可能となる. 即ち, ウイロイドライクがインビトロと同じように反応し始める. 各種のウイロイドライクが各細胞の内で, 順次, 活動(機能阻害と複製)を始める. 癌に限らず, 成人となって沢山の疾患を抱えることになるのは, このようなことである.
  • ④春ウコンの効果がわからなかったときは, 免疫力を上げることができなかったので, 成人病のどの症状も悪化傾向を免れなかった. しかし, 春ウコンで免疫力を上げるとこれらの成人病は回復に向かう. 免疫力が上がるとその影響はすぐに細胞内に伝わり, ウイロイドライクの活動は停止する. 免疫系の秩序は元に戻り, 癌などの疾患の回復が始まる.
  • ⑤とりわけ, 癌は免疫力に対して鋭敏に反応する(参照:4.5.2). しかし, 免疫力が賦活すると直ぐに治まるようである. そのことは以下⑦の例㋑~㋬などから言える. 完全に回復するまでの時間が臓器によって異なるのは, 臓器別に再生に要する時間に差異があるからであろう. なお, 癌以外のウイロイドライクによる疾患は, 形質転換による機能抑制である.
  • ⑥免疫力を上げた後の回復の速さからみると, 成人病のなかで癌が最速である. その原因は, 細胞内でのウイロイドライクの反応の仕組みによる. また, ウイロイドライクの蛋白質合成系疾患の回復は, 蓄積した蛋白質の吸収速度および蛋白質による浮腫や刺激の解消情況次第である.
  • ⑦前立腺癌のPSA値上昇が, 春ウコン摂取と殆ど同時に抑えられるのは, 免疫力の上昇と共に癌細胞の増加が止まったからであろう. 摂取一週間以内には増加反応は止まっているようである.
     
  • ⑧癌の処置後に, 時として, 長命の人がいる. 免疫レベルが基本的に高い人が, 一過性の急激な免疫低下で癌を発症し, 処置後に元のレベルに戻った場合と考える. 式で言えば, 4.1.3の2)③のτが大きく, 4.3.2の4)の∣D∣が急激に大きくなり癌を発症し, 処置後に元のτに戻ったケースである. τが小さくなってからの癌は, 免疫賦活以外で長命化することは, 多分, 困難となろう.

表23 癌が免疫力に鋭敏に反応した例

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4.5.2 癌は悪化も速いが回復も速い
 病状を追跡し易い癌について, CT検査,MRI検査,PSA値,超音波検査などの精密検査結果の数値や形状の変化を比較検討すれば, 正確な速度が出せる. 表5(参照:1.2)の個々のケースのデータは, 比較検討を目的としていないので相互に条件が不揃いである. しかし, 全体的に眺めれば, 春ウコンの用法用量を的確に摂取した場合の癌治癒の速さを, ほぼ正確に推測できる.

表24  癌の回復の速さ(治癒までの日数)

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  イ)医師が治癒と判断した春ウコン摂取期間、ロ)PSA値で判断、ハ)消化管膜間質性腫瘍

 試みに, 1.1.2に記した前立腺癌(5)(上記ⓖ)と前立腺癌(3)(上記ⓓ)を比較して, 癌が治まる速度を計算してみる.
 
 ⓖから言えることは, 14日間でPSA値が2831から691まで回復した. 少なくとも, (2831-691)÷2831=0.756, 75.6%以上癌が消失したことになる. ⓓから言えることは, 癌が治まってもPSAを出し続ける細胞があることである. これらから, 図19 「糖尿病の治癒の経過」(参照:4.2.4の1))と同程度以上の速さで癌も回復することがわかる. 図7(参照:1.3.(3))では, 急に悪化した糖尿病の血糖値が, 春ウコン摂取25日で正常値近くまで落ちている. 前立腺癌とほぼ同じことが, 各種の癌でも起きていることが容易に想像できる.

 また, ⓑからは次のことが言える. 春ウコン摂取後15日で, 癌はCT検査では認識できない大きさとなった. 初期に近い癌だったので短期間で小さくなったのだろう. しかし, 血痰が治まっていないので, 35日までは癌は活発に活動していた. ⓐのように末期癌の場合, 春ウコン摂取100日でⓑの15日程度の状況となったようだ. この時点の癌の残存量は, 図18から推測すると8%程度となるので, ⓐの癌は摂取中止後5ヶ月で, CT検査で再発と認識される大きさになったようだ. ⓑは摂取を継続したので1年後も再発はしていない. また, ⓚは春ウコン摂取中は2ヶ月ごと9ヶ月間の検査で癌は発見されず, 中止後3ヶ月で末期肺癌(6個の肺癌)となり, 摂取再開後3ヶ月強で癌が消滅した.

 さらに, ⓙは, 脳内の変化が短時間で起こることを, 感知できた例である. その変化を運動感覚,痛覚として観察でき, 春ウコンの摂取とほとんど同時(8日以内)に変化が起こり始めた. しかし, 90日後のMRI検査で腫瘍の大きさに変化はなく, 継続確認することとした.
CT検査やMRI検査の画像の精度を上げることができれば, 解明は進む. 癌の密度を数値化することより, 癌の回復過程の数値化ができれば, 春ウコン投与によりすぐに快方に向かうことが, はっきり見えてくる. また, 免疫力を測定すれば, 春ウコンによる免疫賦活力は, 免疫力を下げる諸要因に比べて桁違いに大きいことも, 明確にすることが期待できる.

 これらの結果は, 癌発症の諸説にある現在の定説, [癌は遺伝子の病気. DNAに傷がつく突然変異が長時間かけて蓄積する慢性的病気. 原因は生活習慣. 抑制遺伝子の故障と再生不能]との考え方と大きく異なる. [極めて短期間に<悪化⇔回復>を繰り返すので, 急性疾患であり, 遺伝子の故障や再生不能ではない]と言える(参照: 4.2.7).

 

4.5.3 癌の転移
 癌の初期は浸潤で拡がって行く. 癌は初期でもCT,X線,MRI,超音波などの検査で「癌」と予測がつくのは, 浸潤によって拡がっていく異常細胞の密度の高さによるのであろう. この事実は, 免疫力が体液中に残っている間は, 体液を通した転移が極めて起こりにくいことを示している.

 初期の癌は浸潤でしか拡がらず, 体液を通した転移は, 免疫力が極端に落ちた末期にしか起こらないといえる. 大きくなった癌に免疫物質の供給が集中した結果, 体液中に免疫物質が極めて低いレベルとなる. 免疫系が不足してくると, 体液を通した癌の転移が容易に始まるようにみえる. ときには, 発癌条件が整って, 各臓器に個別にある癌がいっせいに発生することもある. 癌は免疫力に対して極めて弱いものと言えそうである. 逆にいえば, 免疫賦活をすることによって, 速やかに癌は回復に向かい, 転移も阻止できる.

 

4.5.4 なぜ, 春ウコンはほとんどの癌に効くのか  
 CT検査,超音波検査,PSA値検査, などにより, 経過の把握しやすい癌の経過を追ってみた. 免疫力が下がると癌細胞化が進み始めて癌化するが, 免疫力が賦活するとこの機構が直ぐに崩れて回復に向かうと言える(参照:4.2.3の4)). 免疫力の状況次第で[速やかに], [可逆的に], 悪化⇔回復を行き来する. 免疫力を上げる機構を使って免疫賦活ができている限り, 癌の再発はなかなか起こらない.

 4.5.1の①~⑦を眺めてみると次のことが言える. 免疫力が低下すると細胞の正常なコントロールが効かなくなる. 細胞内のウイロイドライクが働きだし, 細胞が無秩序な癌化を始めてしまう. この無秩序な癌化細胞増加にともない, 秩序だった細胞で行われていた免疫系によるコントロールはますます効かなくなり, 癌化細胞の増加が加速する. しかし, ここで免疫賦活をすれば, 豊富な免疫物質が体液と接している細胞に届き, その細胞の癌化が止まる. 順次, 内部の細胞に免疫力の影響が浸透し, 癌細胞化がとまる. 免疫力低下と共に癌が発症し, 免疫賦活と共に癌が消失する経過を, 簡単にまとめた.

 一方, 癌は臓器別に多種多様あると言われている. そして, WHO分類ではそれぞれの癌について, 部位ごとに更に細かく分類されている. 当初, いろいろな癌が一様に治まって行くのに驚いたのは, 癌が多種類あると思っていたからである. しかし, 多くの癌が春ウコンで一様に治まった状況から見ると, 癌は免疫系に対してそれほど多様ではないと言える. 癌ができた臓器とその部位の上皮細胞と間質細胞の組織割合が多様なために(参照:4.2.4の1),4.3.2の5)), 癌が多種類あるように見える, と考えた方が理解しやすい.

 また, 29例ではあるが, 脳下垂体腫瘍と乳癌外4種転移癌を除くどの癌も一様に一度は治まっている. 癌化を促すウイロイドライクの基本的な性質と免疫系の基本的なメカニズムとの関係が, どの癌でも酷似していることがわかる. しかし, 脳下垂体腫瘍は, 他の癌の速さで治まらない. この腫瘍が免疫系に対して特殊なものであるのか, 免疫系に脳関門透過性の問題があるのか, 癌は治まって影が残っているのか, の解明は今後の課題となる.

 ウイロイドライクの各臓器への親和性は, このDNA類の両基本部分の端に付いている蛋白質の差によるものと推定している. 免疫系が機能しているときは, 癌を非自己と認識して抑える免疫系の基本的なメカニズムが各臓器の癌で同じなので, 免疫賦活によりいろいろな癌が単純に治まるのであろう.

 

4.5.5 なぜ, 春ウコンは誰にでも同じように効くのか
 免疫系の基幹部分(胸腺と推定)に春ウコンが作用して免疫賦活をしているので, 多くの癌を始めとして広範囲の疾患に卓効を示している. また, 免疫系の基幹部分に個人差が少ないので, 殆どの人に同じような効果を出している. よって, 春ウコンによる免疫賦活は, <免疫細胞をそのまま活性化する器官>=<胸腺>を賦活化していることになる(参照:4.1.3の3)).

 どの人も, 癌発症直前までは免疫機能がしっかりしていて癌を抑えきっている. 癌を発症しても免疫機能はあるので, 春ウコンが免疫賦活すると, 殆どの場合は効果が出る. 92歳の末期前立腺患者(全身の骨にも転移)のPSA値が, 2週間で大きく下がり, 骨の痛みも消えた例を見ると, 年齢に関係なく免疫賦活が起こった. 免疫機構が働かなくなったときが死と考えると, 免疫賦活は死の直前まで可能となる. 同様に, 小児癌にも試みる価値は十分にある.

 また, 基幹部分に遺伝的な異常や奇形があるような場合には, 多分, 生存し続けることが難しいので, 癌治療の対象者とはならないのだろう.

 

4.5.6 なぜ, 癌のからの回復は速いのか
 癌は一般的な成人病の慢性疾患と比べて長期間, 治療薬によって細胞の損傷を続けていないので, 春ウコンで免疫賦活すると病態からの回復が早いようである. 一般的には, 癌は良くなるのも悪くなるのも速い. しかし, 癌の場合でも制癌剤や放射線の治療を受けて骨髄抑制が起こると, この期間は骨髄からの免疫細胞の供給が極端に減少するので, 免疫賦活は不可能に近くなる.

 肺癌(6)(参照:1.1.2(8))の体積変化(初期を100として表示) , および, 卵巣癌(1)(参照:1.1.2(26))の癌マーカーCA-125の実数値の変化について, 春ウコン摂取後の経時変化をグラフ化したところ図21となった. この2例とも, 制癌剤最終投与後2ヶ月で免疫抑制が現れ, 春ウコンが全く効かない状況となったが, 末期癌からの回復の速度が100日程度であることが図21からわかる.

 肺癌(6)の体積は直線的に縮小している. 肺癌への免疫系の影響の結果が, このような経時変化を示した. 肺癌が確認される3ヶ月前の全身CT検査と胸部レントゲン検査では肺癌が全く確認されていないので, わずか3ヶ月間で手術不能の末期癌に近い状態となり, 春ウコン摂取2ヶ月で1/3の大きさに縮小したが、骨髄抑制で中断した.

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図21  癌の経時変化(マーカー値と体積)

 右腎癌全摘手術後, 肺への転移を最も警戒していても発見できなかったのは、肺癌の悪化が、いかに急激だったかを物語っている。

 また,卵巣癌の癌マーカー値は、免疫賦活と同時に急速に低下し,1ヶ月弱で16%まで低下,2ヶ月で正常値上限,3ヶ月で正常値となっている.細胞膜が壊れた細胞がこの速さで修復または新陳代謝していると考えられる.

 一方、前立腺癌は、癌が治まってもすぐに癌マーカーPSA値b)がある程度以下には落ちない.

 PSA値の上昇はとまり,新陳代謝しやすい一部の細胞のPSA値がさがる。しかし、前立腺の大部分の細胞は新陳代謝が遅い性質の細胞なので, 新陳代謝を待たないとPSA値は低下しない. なお, 末期の前立腺癌(5) (参照:1.1.2(13))では, PSA値が23日で2821から691へ急激に低下している. 骨への転移部分の細胞が代謝され, 前立腺部分からのPSA値が残ったと考えているが, 癌の状態は脱して増殖は終息するが, [細胞の修復が直ぐにはされない部分の癌マーカー(PSAなど)の漏出]が継続する.

 多くの癌はすぐに治まるが, 癌によって壊れた疾患部分の修復は, 臓器細胞の構成によって異なる. また, 同じ臓器でも, 癌化した部分の細胞固有の新陳代謝の特質で修復の期間が決まる. そして, 癌が消滅した後に影などとして残る影響の有無も, 癌化した臓器固有の細胞構成と癌化した部分の細胞の特質で決まる.

 

4.5.7 再発癌, 転移癌も治まる
 [転移癌や再発癌は治すのが難しい]とよく言われる. また, 癌幹細胞説では, 抗癌剤や放射線にやたらに強く高い増殖能力をもつ幹細胞が癌治療の後も残っていて再発の原因となる]といわれている.

 一般的にこのように言われている背景を考えて見る. [図20(4.3.2の3))のように, 年とともに免疫力が下がっていく. 年齢を重ねるほど免疫力の水準が落ちていくので, 再発や転移の時点では, 免疫的に最初の発癌時より不利な状況にある. よって, 一般的には回復は難しい]となるのだろう.

 しかし, 数例ではあるが, 転移癌や再発癌を普通の癌と同じように, 春ウコンで抑えることができた. これらの例は, 免疫力を上げることができれば, どの癌も同じように抑えることができることを示している. たとえ幹細胞説のように幹細胞であったとしても, 春ウコンによる免疫賦活で抑えてみると, 大きな差異はないようである.

 

4.5.8 癌治療後に長期健常のケース
 一般的な癌治療を受けた後に, 長期間にわたって健常者を続けている例があり, 特異体質と判断されることが多いようである.

 免疫力と年齢の関係の概略は, 図20(参照:4,3,2の3))のようになるが, 個人差は大きい(図20のaが個人で大きく異なる). 基本的な免疫力が高い状態の人が, 一過性の免疫低下要因(参照:4,3,2の4)のD)によって癌を発症し, 早期発見で癌を取り除いたり抑えたりした後に, 一過性の免疫低下要因を取り除くことができたときは, 長期間生存する可能性がある.

 また, 癌を発症すると, いろいろな民間療法を勧める知人が出てくる. 民間療法の中には, 現在の一般的な治療法とは異なる方法の中に優れた民間療法もありうることである. 春ウコン法は解析を始めたばかりであるが, 全く解析がされていない方法で有効な方法もあるだろう. これらの中にも癌から復帰した長期間健常者を生む素地はある.

4.5.9 [癌化]と[癌の回復]への新解釈
 [癌化]は, [免疫力が低下した時, 細胞が生き延びるための自己防衛として, 周囲にある栄養素を吸収して異常な細胞増殖を始める現象], または, [免疫系が持っている指令が届かなくなったために起こる統制不能な細胞の異常化の増加], と見ることもできる. また, 免疫系は非自己(異物)に対する防御機構だけでなく, 体内の制御機構(司令塔)としても機能している, とも考えられる.

1) 癌は癌細胞の異常増殖
 一般的には, 一部4.2.2の1)で述べたように, [癌化]が始まると, 整然と並んでいた細胞が[異常増殖]を始めて, [フォーカス(異常増殖の集落)]r)を形成すると言われている. これは無秩序に重なり合い, 盛り上がった増殖細胞と言われているが, これをCT,MR,超音波,X線,内視鏡などの検査で癌と診断する. 春ウコンを摂取して癌化を止めた後に再びこれらの検査すると, 癌化が止まるだけでなく, 癌化した細胞が復元しているようである. 癌細胞を排除して穴が開くわけでもなく, 何の不都合もなく復旧し, 元の機能を取り戻している. さらにミクロな検討が必要だが, 大きな損傷もなく, 無秩序と言われる状態が消えている. 傷が修復するように治るのかも知れない. 癌を無秩序な増殖とすると, 秩序だった回復後との対比が理解しにくい.

2)癌は細胞の異常化の急増⇔成人病との類似性

‹癌化>
 癌については, ㋐~㋓などが知られている13).

  • ㋐癌化した細胞では, 正常細胞の時には作っていない蛋白質や酵素を作ることが多い. アイソザイム(イソ酵素)や胎児蛋白質を作り始めることもある. 癌遺伝子が作る蛋白質もある.
  • ㋑遺伝子自身の変異は起こしていないが, その遺伝子の発現の仕組みに変化が起こった場合が多い.
  • ㋒癌化した細胞も, もとの正常な細胞の大方の性質は保持する. そのため, 転移癌でも原発v)の組織のおよその診断がつく.
  • ㋓癌化した細胞は, 周囲の細胞から離れやすくなる.

一方, 以下の㋔も知られている.

  • ㋔DNAと細胞を混合するとDNAが細胞に入り, 形質転換が起こる. この細胞は, 形質転換したDNAに相当する蛋白質合成を, インビトロ状態では盛んに行う(参照:4.2.1の1)と2)).

これらのことから, 以下のことが言える.

  • ⓐ誕生以前から, 胎児の細胞は, 母親の血液を介して母親の様々なウイロイドライク(DNA類(RNAを含む))の形質転換(感染)を受けている. また, 誕生後も, ウイロイドライクの感染を受ける可能性がある.
  • ⓑ何らかの理由で免疫力が下がると, 細胞がインビトロに置かれたような状態となる. インビトロに近い状態になると, ⓒ~ⓙが自由に展開する.
  • ⓒ免疫力による制御が機能しなくなった細胞内では秩序が乱れ始め, 免疫系に非自己(異物)と認識されて抑えられていたDNA類が, その制御からはずれて活動し始める. また, 免疫系によって活動が休止されている乳児蛋白質系のDNA類も活動を再開する.
  • ⓓこの形質転換されたもろもろのDNA類が, [4.2.1の1)に説明した次の図]のように, 細胞の機能をつかって無秩序ににDNA類のコピーを始める.
  • ⓔ同時に, これらのDNA類に対応する各種の蛋白質が, 細胞の機能を使って作り始められる. この反応も制御が利かないので, 蛋白質が作り続けられる.
  • ⓕその結果, 正常時には見当たらない蛋白質や酵素が癌細胞には多く見られるようになる. 多分, それ以外にも形質転換している未知のDNAに対応する蛋白質もたくさんできるだろう.
  • ⓖまた, アイソザイムは, これらの反応の過程でクロマチン構造が影響を受けた結果として作られたものと考えられる.
  • ⓗ制御が利かないので, 周囲にある原料が尽きるまで活動が続き, 細胞が変形しても, 多種類のDNAとそれに対応する蛋白質や酵素が作られる.
  • ⓘこれらの無秩序な細胞が障壁となって,無秩序領域の拡大が加速される.
  • ⓙ細胞膜の接着結合へもこの影響が及び, 周囲の細胞から離れて転移が始まる.

よって, 癌は癌細胞が異常増殖した結果ではなく, 既存細胞の異常化が急激に増加(伝播)したと捉えるべきである(参照:4.3.2の5)の表18の④)]. また, 以上のⓒ~ⓙは, 免疫賦活が起こると直ちに修復に入る.

<バクテリオファージ>
 A.D.ハーシー(Alfred Day Hershey,1908~)は, [バクテリオファージが細菌に感染するとき, ファージ粒子のDNAだけが細菌の中に入り, 細菌の細胞を使ってこのDNAをコピーし始め, 同時に, 蛋白質を合成し始める. やがて細菌はDNAのコピーと蛋白質で一杯になり, 細胞壁が壊れてファージを放出する], ということを見付けた.

<癌とバクテリオファージの類似点と相違点>
 [癌は多細胞生物の宿命である. 単細胞生物には癌が存在しない]と, 一般的に言われている. 多細胞生物の癌化とバクテリオファージを比べてみると, 癌でも, 免疫低下とともにファージが感染した細菌と類似したことが細胞内で起こっている, と考えることもできる. 癌化は, 免疫力が抑えていたウイロイドライク(DNAなど)が免疫低下とともに活動を開始し, [DNAのコピーとこのDNAに相当する蛋白質を作る]ことである.

 この比較から, 癌の発症は, バクテリオファージとほとんど同じであると言える. よって, 単細胞生物の癌はバクテリオファージと言える. 一方, 多細胞動物には免疫系があり, 免疫賦活によって癌を抑えることができること, また, 単細胞生物に見られる硬い外皮がないので, やわらかい細胞膜が大きく伸びて細胞が変形するところが,癌と硬い細胞壁が壊れる単細胞生物のバクテリオファージと異なる点である. また、病原体にはファージのように電子顕微鏡で見ることができる硬い殻がないことから, 癌の原因をウイロイドに近いウイロイドライクとした. また,単細胞生物もウイロイドライクによるファージが考えられる.

 以上を勘案し, 春ウコンで治まった癌について, 発症⇒癌化⇔回復⇔治癒について, 図22に沿って考えてみる. また, 転移についても触れる.  

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  図22(図16の再掲) 癌の発症と治癒⇔再発の模式図

  • ①免疫力が低下すると, 細胞の環境は, 免疫的に見てインビトロ(試験管内)に近い状況となる. これと同時に, 免疫力で抑えられていた病原体 (ウイロイドライク)が, 感染(形質転換)していた細胞内で細胞の機能を利用して激しくコピーし始める. 同時に, 細胞機能を使ってこのウイロイドライクに相当する蛋白質を作り始める. 細胞が変形するほど, 病原体の増殖とこの病原体に相当する蛋白質の産生が続く. ヒトの細胞膜は柔らかいので, 細菌の細胞壁のように壊れることは少なく, 病原体増殖により異常に変形する. これが感染細胞の癌化開始である(参照:4.3,[病原体の感染は主として母子感染],[水平感染もある]).
  • ②感染細胞が癌化して異常変形すると, 細胞膜を通して周囲の正常細胞に癌の感染が始まり, 感染細胞が増える(これを[浸潤]という). なお, 免疫力が多少でも残っていると, 免疫系に弱い癌の病原体は, 体液による感染(転移)を起こすことができない.
  • ③免疫低下が②を加速して癌の発症となり, [癌化細胞]が[フォーカス]r)(異常増殖の癌細胞群の集落が盛り上がった状態)と見えるようになる. 細胞群の一部が壊れて細胞から原形質の流出が始まり, 癌マーカー値が上がる. 上皮細胞の癌は変形してフォーカスとなるのでCTなどで確認できる. しかし, 臓器のほとんどが間質細胞で構成されている場合は, 変形が少なく, CTなどでは確認しにくいので, 摘出臓器を染色して癌部分を判断する.
  • ④春ウコンで免疫賦活すると, 免疫力によって癌細胞内の病原体を減少させ, 病原体に起因する不要な蛋白質も除去されて癌化状態は治まる. これらの免疫力による秩序の回復は, 約3ヶ月以内で終了する. 秩序が回復した細胞を図22では[回復細胞(感染体減)]とした. 癌細胞が消え, 見掛けは完全に修復して治癒と判断される状態となる. 一部の癌を除いて, 癌マーカー値も正常値に戻る. 癌の部分は復元するので, 細胞の異常増殖ではなく, 感染体の増殖で細胞が異常変形しただけである.  この過程で, 回復細胞内の病原体は, 免疫力次第で増減しながら, 長期的には減少する. 別の視点でみると, 癌化細胞⇔回復細胞⇔感染細胞を行き来しながら感染細胞に行き着くので, 図17のような減衰曲線をたどると感ずる(参照:4.2.2の3)).
  • ⑤春ウコンの免疫賦活力では, 短時間で病原体を細胞から完全に除去することはできない. 長期間, 春ウコンを摂取すると, 病原体は減少するが一部が潜伏状態となって細胞内に残る. これを, 図22では[治癒細胞(潜伏細胞群)]とした. また, 発症の前後で, 感染細胞数が飛躍的に大きくなり, 癌化のリスクが増す.
  • ⑥各細胞の機能は回復するが, 病原体が[治癒細胞]内(クロマチン構造内?)に潜伏する状態が続き, 細胞の新陳代謝のときに継体される. 細胞内の病原体潜伏量は免疫賦活や新陳代謝に伴って減少し, 徐々に安全領域に近づく(参照:4.2図17,図19). しかし, 病原体を完全に取り除いて[健康細胞]に戻すことは, かなり難しい.
  • ⑦一方, 癌が進行すると免疫力が低くなり, 癌細胞は浮遊を始める(㋓). 体液中に免疫力が多少でも残っていると浮遊癌は免疫系に淘汰される. 免疫力が極端に低くなると, 浮遊癌が親和性のある他臓器の細胞に漂着できるようになる. その場で浸潤が始まるのが転移である. 転移癌や再発癌を抑えることは難しいと言われる. これは, 初めて癌となったときより, 転移,再発のときには免疫力が極端に下がった来るので, 抑えるのがいっそう難しくなるだけのことである. 免疫力を上げると, 原発性の癌と同様に転移癌と再発癌を抑えることができる(参照:1.1.2の(3),(6),(13),(16),(18),(20)など).
  • ⑧病原体量(または病原体に対する抗体量)の増加傾向を測定して, 再発の危険性を予知する技術的可能性は大きい(参照:4.1.2の2)).
  • ⑨春ウコンでは, 短期間に感染細胞を正常細胞に戻すことができない. よって, 免疫賦活により[浸潤細胞]化を避け, 癌化予防をすることが重要となる.
  • ⑩癌と同様に, 春ウコンで抑えることができる成人病といわれる多種類の疾患は, 免疫力次第で, 癌に極めて近いメカニズムで発症⇔治癒⇔再発を繰り返すが(参照:4.3.2の4),4.2.6の2),1.3(5)), 免疫力を高めれば治癒に向かう. 癌を除く成人病は免疫レベルが高いところで発症する.しかし,癌は, 免疫力が極めて低い状態で発症するので悪化速度が速い.よって,即断即決が求められるが,免疫力を高めれば速やかに抑えることができる.

 これらのことは, 多種多数の癌が治まり, 機能回復する状況から見て推測できる. よって, [細胞数の変わるような異常分裂]ではなく, [異常に見える変形細胞が増加した], と捉えるべきなのだろう. なお, 4.2.2の1)では異常変形に触れたが, その他では, 一般論にしたがって異常分裂として論を進めてきた. なお, 脳下垂体腫瘍では, 3ヶ月では変化がなく経過観察となったが, 癌の状態を脱して抜け殻になり, 影が残っている可能性もある(参照: 1.1.2の(26)).

 細胞の異常化が始まると, その異常細胞が障害となって体液(免疫)の届きにくい部分が拡がる. その結果, 更に異常細胞の増殖が加速されることが, 癌の恐さだろう. しかし, 免疫賦活さえすれば, 癌化反応が止まる.

 癌を[細胞の異常分裂]と捉えるよりは, [異常変形した細胞の急増] と捉えた方が, [Ⓐ癌が免疫力次第で悪化⇔回復を速やかに往復する Ⓑ回復後はきれいに修復する Ⓒ生命科学の諸説(DNAポリメラーゼ機能と欠陥遺伝子説の矛盾, 感染DNAコピー説が有利, など)], との整合性が容易である.

 特に, Ⓒに関連して, 細胞にDNAを形質転換すると, インビトロではそのDNAに相当する蛋白質を大量に作ることが知られているが, これと㋐は同じことである. また, 癌はA.D.ハーシーの発見した[ファージのコピー]に極めて類似している.

3) 癌化⇔回復と悪性新生物
 癌化は, [免疫低下に伴う細胞の自己防衛増殖], または, [免疫系の指令が届かなくなり, 制御不能による異常細胞の増加]と理解する方が自然な解釈かもしれない. これは, [免疫力が届かなくなっていた細胞に免疫力が再び届くようになると, 細胞は自己防衛のための増殖を中止して正常化し, 順次, 周囲の癌細胞領域に免疫力の影響が波及する], そして, [免疫系の制御が再開して細胞内が正常状態に戻ると周囲へも影響が波及する], とみることができる. あるいは, [クロマチンの構造も有糸期状態から定常状態に戻り, 細胞分裂が止まる], との解釈もできる.

 また, 第1章の多くの例のように, 癌を消失させることができるので, 4.2.7に挙げた癌化に関する諸説は, 細胞が正常に戻る仕組みについて, 別途, 説明を付け加える必要がある.

 一方, 厚生労働省の統計では, 癌を悪性新生物に区分している. 回復したあと, 新陳代謝が遅い細胞は癌による変形が痕跡として残る場合はあるが, 免疫賦活と共に癌細胞は直ぐに変化し始め, 短期間のうちにCT検査などで癌と確認できない形態と大きさとなる. [電子顕微鏡などを使って癌細胞内に悪性新生物を発見した]という報告はないので, 癌は新生物ではなく, [免疫力が届かなくなったために起こった細胞の特殊な状態または混乱(→フォーカス)]と捉えた方が, 実態に近いと考える.

 春ウコン摂取の可否によって癌化と回復を往復する事実から, 免疫賦活機能が春ウコンなどで復活可能な状況にあれば, 癌からの回復は期待できる. 癌と判定されたら可及的速やかに免疫賦活をすることが癌対策の要点である.

 これまでは, 癌化した組織を抑えるレベルまで免疫賦活ができなかっただけのことである. よって, [癌化は免疫力低下に伴う細胞の自己防衛増殖], または, [免疫系の指令が届かなくなったための異常細胞の増加と理解する方が自然な解釈である.

4.5.10 アジュバント化学療法(骨髄抑制t))の回避理由と予防の重要性 
 癌の治癒率は図19に近い. よって, 癌の残存率は(100-治癒率)%となる. 1.1.2の(3)肺癌や(15)肝臓癌の場合, 春ウコン摂取3ヶ月後のCT検査などで, たとえ癌が確認できなくても, 残存率は8%程度だったと推測できる. 8%の量の細かい癌が残っていたので, 摂取中止と同時に再発に向かい, 3~5ヶ月で再発となったのだろう.
ここで, 術後に補助化学療法(アジュバント化学療法)を受けて亡くなった方の状況を比較してみた.

  表25 術後補助療法(アジュバンド療法)の経過

 癌が春ウコンで治まった後, 担当医の勧めで[念のため]と始めたアジュバント化学療法で4人の知人が亡くなった. (2)は春ウコンで大腸癌と糖尿病が良くなったのを見て「どうしても制癌剤治療をしたい」との医師の希望を受け容れざるをえなかったケースである. 春ウコンを併用したこの場合でも, 450日が延命の限界となった. 他の3人は癌から回復して普通の生活が始まっていたが, 医師の勧めた制癌剤療法と新薬治験期間中に短期間で亡くなった.

 また, 春ウコンで癌が良くなった後, 摂取を中止したために約3ヶ月で亡くなった次の2例がある.

  表26 末期癌から回復直後に春ウコン摂取を拒否した場合の生存日数

画像の説明

 また, (16)のように, すべてが快方に向かっていたが, 医師の「動脈瘤の処置と肝臓の状況のチェックのための手術」の要請に従ったところ, 2か月後に亡くなった. また, (17)は春ウコンを短期間しか摂取しなかったケースであるが, 手術後2週間で亡くなっている.

<要因の共通性>
 これらに共通していることが2点ある. 一つは, 各種の癌が春ウコンを摂取して3~4ヶ月以内に治まり, 医師が正常と判断できるところまで良くなることである. もう一つは, 癌が治まった後に, [免疫力を大きく下げると言われている制癌剤投与],[ストレスが大きい(免疫力低下の原因)といわれている手術]および[春ウコンの摂取中断による免疫力低下]のいずれかをした結果, 癌が瞬く間に再発して亡くなってしまったことである.

 当初は,[制癌剤は免疫を低下させるので良くない. せっかく春ウコンで元気になったのだから, 癌3大療法に戻らずに, しばらく様子を見てはどうか?]という程度の, 弱い否定的な意見しか言えなかった. 多くの犠牲を見ると, なぜ, 春ウコンで回復後に癌3大療法を回避しなくてはならないかについて, 論理的に納得できる説明する必要があると考えた.

<潜伏細胞は極端に増大>
 図16と図22で示したように(参照:4.2.2図16と4.5.8図22), 癌を発症すると浸潤が起こり, 周囲の細胞が癌化する. 春ウコンによって免疫賦活をすると, 癌化した細胞が正常な細胞に近づき, 病状は治まったようになる. しかし, 癌の病原体ウイロイドライクを免疫力によって各細胞から大幅に減らすことはできても完全に取り除くことはできず, 癌が拡がった範囲の各細胞に, 病原体が潜伏した状態が残る. 細胞の新陳代謝で徐々にウイロイドライクの潜伏数は減衰していくが, 基本的には継体する. その結果, 癌の病原体が潜伏した膨大な数の細胞数は, その状態を長期間にわたって保持する.

<アジュバント化学療法などによる骨髄抑制,免疫低下の回避が鉄則>
 春ウコンによる癌からの回復後の間もない状況で, アジュバント療法や手術によって免疫力を大きく下げると, 癌は急速に増大して病人に致命的な打撃を与える結果となる. 癌は免疫力が極めて低くなってはじめて発症するので, 速やかに免疫賦活する必要がある. また, その他のさまざまな条件で起こった免疫力低下によって癌が再発した場合にも, 潜伏細胞が膨大な数なので, 再発癌の悪化は急速に進展する. また, 開腹手術をする場合, 患部を好気状態にすることが, 癌を活性化させるようにもみえる(HIF-1の活性化か?).

 さらに, 癌の手術後に長期間の制癌剤療法や放射線療法を受けると, 免疫機構の源泉に大きな損傷を与えるので, これが[骨髄抑制]t)となり, 春ウコンを摂取しても簡単に効果を出さなくなることが, これらの療法の怖さである(参照:1.1.2(2),(28)など). 特に, 制癌剤の副作用である骨髄抑制により骨髄の働きが抑えられ, 免疫細胞(白血球など)が産生されないので, 春ウコンなどの免疫賦活物質を摂取しても賦活すべき対象がなく, 効果その期間は出ない.

 骨髄抑制は, 選択する制癌剤や放射線によって内容と期間がかなり異なり, 長期間継続するものもあり, また, 骨髄以外の臓器に損傷を残すものもある. また, 個人差も大きいようである. 制癌剤投与後2ヶ月程度に現れた例を多く経験しているが, いつから始まり, いつ終わるかの制癌剤別の確認は, 今後の課題である. また, 制癌剤の効果は蓄積され, 津波のように何波も押し寄せるようである. しかし, 骨髄抑制は徐々に解消していくので, この解消状況に伴って春ウコンの免疫賦活効果が出てくる. なお, 多種大量の制癌剤や放射線療法による骨髄抑制の場合は複雑であり, この解消に長い時間がかかる. その結果, 徐々に免疫賦活効果が増加するだけなので, 生命力との際どい綱引きが続くことになり, 骨髄抑制が解消するまで生命が維持できなければ, ヒトが癌に負ける場合も出てくる(参照:1.1.2(28)).

 また, 制癌剤などによる骨髄抑制は, 赤血球,血小板,免疫細胞などの数だけの問題でなく, 抗体,補体,サイトカインなどの状況や受容体の機能低下を含めた免疫系全体に対する損傷を考えてみる必要がある.

 一方, 制癌剤を使用しなかった肺癌(1)~(6),子宮体癌, 使用し始めた段階の卵巣癌, などのへ春ウコンの効果は即効的で, 卓効があった. なお, 骨髄抑制は制癌剤や放射線治療を受けた場合に起こる症状なので, 癌とわかってすぐに免疫賦活法を始める場合には,問題視する必要がない課題である.

 春ウコンによって癌から回復することが可能となったので, 回復後に残る膨大な数の潜伏細胞を考慮して, [念のためのアジュバント療法],[癌の病巣を除去する手術],[一般的な免疫低下による癌の再発], などの回避が重要となる.

<回復後の注意>
 癌からの回復後は, 免疫賦活状態を当分は維持する必要がある. 疾患の治癒傾向を示す4.2.2図19は, 図18のような減衰曲線を画きながら感染細胞数が減少していくと推測している. また, 感染細胞内に潜伏しているウイロイドライク数も, 図19に近い速度で減少すると予測している.

 何年で安心領域に入るかは今後の課題である. まず, 抗体価が降下しているC型肝炎(参照:1.5(2), 春ウコン摂取9年で抗体価≒0)の検討から始めることになり, 次に, 回復期の癌患者の抗体価の経時変化を測定して[感染体の残存率がどの程度になれば再発が起こりにくくなるか]を見極め, 安心領域が決まる.

 今後は, 潜伏しているウイロイドライクの完全な除去方法などが, 大きな課題である. しかし, ハードルの高い課題なので, 感染細胞が拡大しないような予防が重要であり, 比較的若いときから, 適宜, 春ウコンなどによる免疫賦活を行い予防する必要がある. また, 発症して治癒した後は, 再発リスクが高いので, 免疫力を下げないような工夫を継続していく必要がある.

 

4.5.11 癌対策の要点(効用と限界)
 春ウコン摂取の可否によって, 癌化と回復を往復する. 1.1.2(3)肺癌(1)が典型的な例であり, 多くのケースで似たような状況を繰り返す. . この事実から, 春ウコンなどを使って, 免疫賦活機能を[癌を抑えることができるほどの高い水準にまで上げることが可能]であることがわかる. 現在の医療技術では回復不能と判断される状態となった癌でも, 臓器を損傷することなく癌を抑えることが十分に期待できる.

 一方, 腹水が溜まるような極端に厳しい状態になると, 春ウコンを使っても回復不能の場合がある. 残された体力によって, 回復の可否は大きく左右されるようである. また, 体力の状況だけでなく, 受けた治療履歴イ)によって各臓器の細胞や免疫系の臓器の消耗状況は大きく異なるようなので, [腹水が溜まっている]という事実だけで, 一律に回復の成否を判断することは難しいであろう. 免疫系が正常に作動可能な状態であれば, 春ウコンによって免疫賦活が可能であり, 腹水が溜まった状況からでも癌を抑えられる(参照:1.1.2(25)). また, 無理と思われるような全身の骨に転移した92歳の高齢者の前立腺癌(5)(参照:1.1.2(12))でも回復したのは, 春ウコンで免疫系が作動できたからなのであろう.

 これまで癌を抑えることができなかったのは, 癌化した細胞を抑えるレベルにまで免疫賦活することが不可能だっただけである. 手遅れになる前に, 可及的速やかに免疫賦活をすることが, 癌対策の要点である.

 また, 「余命はあと何日位なので手遅れ」と言わずに, どのような状況となっても, 春ウコンなどによって免疫賦活を試みる意味は大きい. 春ウコンの摂取の結果, 癌による苦痛の緩和や制癌剤の副作用の軽減が見られ, QOL(生活の質)が大きく改善したこともあるので, 今後, 症例数を増やして[限界と判断できる条件があるのか]を検討する必要がある.
 イ)制癌剤による骨髄抑制, 慢性疾患薬(糖尿病薬,高血圧薬,ステロイドなどによる損傷)
 

 

4.5.12 癌・成人病は恐くない? 早期発見は可能か?
 癌は免疫系に極めて敏感に反応する. また, 免疫力が下がった時点で発症する, 進行が速い疾患である. 手術・放射線照射・制癌剤投与以外に手段がないと言われている現在, 瞬間の判断が重要となる恐い病気である.

 一方, 免疫力の水準を上げる手段がわかってくると, 癌もすぐに抑えることができるので, 無闇に怖れるほどではないが, 極力速い対応が必要と考えている. 春ウコンなどを使うと, 少なくとも, 癌を始めとする多くの疾患の当面の危機はしのげる. 癌を含めた成人病らしいとわかった瞬間に春ウコンによる免疫賦活を始めると, 多くの場合, 慢性的疾患や急性的な癌を回避できる.

1) 早期発見の難しさ
 早期発見は重要なテーマである. 健常者が定期的にCT検査,PET検診などをうけることは, 医療費面でも, 現実的に無理がある. また, 数mm以下の癌は確認しにくいことが, 発見を遅らせる一因であり, また, 自覚症状が出たときには, 進行している癌が多いことも良く知られている.

 発症⇔回復を3ヶ月以内で往復する速さから, 初期で発見するためには, 数回/年の全身検診が必要となる. これは現実的には難しいので, 一般的な検診で初期の癌を見つけるのは幸運といえる. 1.1.2(8)肺癌(6)の例では, 3ヶ月以下の間隔で検査を受けていても, 肺癌を見つけたときは末期であった.

 既存の検査方法による癌の早期発見は, 確率が極めて低い. そこで, 簡便で確実な検診方法が求められる. 免疫指標を特定して癌の発症レベルを確定するためには, 多くの臨床研究から数学モデルを確立する必要があるが, 実現の可能性はある.

 また, 癌マーカーは治療経過の判定に向いているが, 癌の発見に適していないことは, その原理(癌が進み細胞膜が壊れて初めて測定ができる)からも理解できる. しかし, 免疫賦活法によって癌が治まるようになると, 治癒の判定には癌マーカー値は大変に重要なツールとなる. 特に, 1.1.2の卵巣癌(1),前立腺癌(5),肺癌(5)では, 癌マーカー値は治癒の判定で大きな意味があった. よって, 癌の治癒判定をするために, 免疫賦活法に合った新しいマーカーの開発(抗体の測定など)が重要になる.

2) 予防策が重要
 今後は, 多成分系による免疫賦活法に研究の方針の転換をすると, 多くの免疫賦活物質と特色ある免疫賦活方法が見出される可能性は極めて大きいので, 癌や成人病に対する恐怖感も減っていくだろう. また, [春ウコン療法]に限っても, 病原体不明の多くの疾患に対して, 更に大きな展望が開ける可能性を持っている. 免疫賦活法の先導役は果たせそうである

 免疫療法が進むと, 免疫低下要因が重なって体調に変調をきたしたときに, 特定の免疫レベルを測定することになるのだろう. その結果を待つまでもなく, 春ウコンなどによる予防をすることが, 有効な方法であり, 多分, 当面の最善策である.

 確実なテーラーメイド医療が確立するまでは, 春ウコン療法は, 多くの成人病に対して[副作用もほとんどない極めて優れた方法], となるだろう.

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