ガンは癌にあらず --春ウコン免疫賦活剤が制する成人病--

第3章

第3章 春ウコンの歴史・・・・・先人の知恵

      目   次
           
  3.1 ウコンの仲間
  3.2 栽培の歴史   
  3.3 食用としてのウコン
  3.4 ウコンの伝統行事
  3.5 沖縄が世界的な主産地 

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第3章 春ウコンの歴史・・・・・先人の知恵

 3.1 ウコンの仲間
 ここで, ウコンについて少し説明しておきたい. ウコンは, 被子植物門・単子葉植物綱・ショウガ目・ショウガ科・クルクマ属に分類される多年生植物である. この属には50五十種以上の植物が知られている. ウコンは一般に高温多湿を好む南方の植物で, わが国では, 春ウコン=姜黄(キョウオウ, wild turmeric:学名Curcuma aromatica SALISBURY), 秋ウコン=鬱金(ウコン, turmeric:学名Curcuma longa L.), 紫ウコン=我朮(ガジュツ, zedoary:学名Curcuma zedoaria ROSCOE)が主に栽培されている.

 このうち, 秋ウコンは, カレーに用いられる香辛料のターメリック(turmeric)であり, 一般にウコン(鬱金)というとこれを指す. 春ウコン, ガジュツは, 主として生薬として用いられてきた. ただし, お隣の中国では, 秋ウコンを姜黄(キョウオウ, 漢名:薑黄), 春ウコンを鬱金といい, 日本とは逆になっている. いずれも, 外形はショウガのようであり, お互いが極めてよく似ているので, どこかの時点で間違いや誤解が生じたものであろう. 中国では, 春・秋ウコンとも同じに扱われているとの記述もある. 根茎の色から判断すると, 秋ウコンは橙色(だいだいいろ)に近い濃い黄色であり, 春ウコンは黄金色と言えるような明るい黄色である. 中国でいうように秋ウコンを姜黄(キョウオウ), 春ウコンを鬱金(ウコン)と呼ぶのが実態にあっているように思われる.

 これらは, いずれも花は咲くが, 種子はできず, すべて根茎で繁殖(栄養繁殖)する. いわゆるクローン植物である. また, 気温の低い地方は露地では越冬できない. 春ウコンは, 葉の裏にビロードのような繊毛があり, 秋ウコンと見分けられる. 左右2列に多数の葉をつける. 茎は葉の基部である葉鞘が折り重なったものなので, 偽茎と言われる. 高さは1m以上にもなる. 春ウコンは春開花するが開花率は低く20%程度と言われている. 秋ウコンは秋に開花する.

 根茎の成分は三者で異なる. 黄色色素クルクミンは, 秋ウコンに最も多く含まれ, 春ウコンの10倍もある. ガジュツにはクルクミンは含まれない. 一方, 精油成分では, 秋ウコンが1~5%に対して春ウコンは6%と多く, 成分も異なる. なお, 日本薬局方には, 秋ウコンは生薬として, ガジュツは医薬品原料として, それぞれ記載されているが, 春ウコンは記載されていない.

 春ウコンは生のまま擂り下ろして飲むのが最上の方法とされている. 春先には普通の状態(常温)でも冷蔵庫でも出芽するため, 生のままで保つには冷凍庫を用いる必要がある. 一般には, 乾燥したものを粉末にして利用することが多い. ウコン粉末の一部は, 糊料を加えて成型され, 錠剤製品となる. できるだけ低温で乾燥したものが成分的によいとされる. 乾燥したものは生重量の約20%前後になる. 凍結乾燥する方法もあるが, 精油部分が揮発してしまうため, 良い方法ではないとされている. 粉末になった春ウコンの品質のよいものは, 鮮やかな黄色(金色)で香りも強く, 擂り下ろした生ウコンに近い味と香りがする. ちなみに秋ウコン(ターメリック)の乾燥粉は黄色というより橙色(だいだいいろ)である.

 3.2 栽培の歴史
 栽培の歴史は古く, インドのアーユルヴェーダ植物に記載されている. アーユルヴェーダはインドで五千年以上の歴史があると言われる医療法である. インドで古くから広範に栽培されてきたことからも, インドが原産と考えられている.

 ウコンが日本や中国にいつごろどのようにして伝播したかは明らかでないが, 宮本常一著の『日本文化の形成』の中に, わが国と中国に関連してウコンが登場する. 1世紀(西暦27~90年)に王充が書いた『論衡』に[倭の国から周の国(紀元前1046年ごろ~紀元前256年)に ウコンを献じた]とあるとのことである. ただ, このことが書かれたときには周はすでになく, この記載が正しいかどうかは不明である.

 しかし, 少なくとも紀元はじめにウコンが[倭の国]日本や中国で, 重要な薬草として広く認識されていたことだけは, 確かであろう. なお, 特筆すべきは, この記述の「倭の国から周の国に“献じた”]という内容である. もし, ウコンが中国から倭の国に伝わったのではないとすると, 倭の国はどうやってインド原産のウコンを手に入れたのであろうか. 稲の伝播とも関わっている可能性も考えられ, 興味はつきない.

 中国の古典『神農本草経』にウコンが記載されているという記述が, ところどころに見られる. しかし, 『神農本草経』にウコンは記載されていなかったようである. 「神農」は紀元前2740年ごろの古代中国に登場する, 人間の体に牛の頭をもつ伝説の人物である. また, 「本草」は, 中国医学における薬物である. 『神農本草経』は, この神農が著したとされる. この本の実物はなく, 西暦500年ごろに南朝の陶弘景が本書を底本にして『神農本草経注』として出版した. この中には365種の薬が紹介されているが, ウコンの記載はない.

 『本草綱目』(ほんぞうこうもく)は, 明時代末の1596年に李時珍(りじちん)の著述により本草書の集大成されたもので, ここにはウコンが記載されている.

 漢方では, 上薬, 中薬, 下薬(または, 上品(じょうぼん), 中品(ちゅうぼん), 下品(げぼん))の三つに分類されている. 上薬は万能薬として用いられ, 中薬, 下薬は, 病気の治療に使われている. 上薬は, 毎日飲んでも大丈夫な保健薬で, 中薬, 下薬は病気のときに限って飲む治療薬とされている. 春ウコンは, その中で上薬とされていて, 副作用のない安心な薬とされている.

 琉球でウコンが栽培され始めたのはかなり古いと考えられるが, 15世紀の交易品(山田長政の頃)としてリストの中にあるので, 効能効果が認められた価値ある商品となっていたようである. また, 1609年に琉球王朝は薩摩の支配下に入り, 経済的に逼迫した. このため, その解決策の一つとしてウコンを専売品とし, 民間では栽培させないなど厳しい管理下で栽培し, 貿易品とした. また, [ウコン奉行]を設け, 買い入れ価格の数倍で薩摩に売却したということである. 薬効が大きく, 高価で取引できたためと思われる. 余談になるが, 薩摩はこのウコンをさらに高い価格で江戸や大坂で販売したという. 西洋医学が入ってくるまで, 日本でもウコンは万能薬として盛んに用いられていたようである. 「れうやく, くちににがし」と犬棒かるたにあるので, [熊の胃]を始めとして, 良薬と言われたわが国の庶民の薬のなかに, 大変苦い[ウコン]も入っていたかも知れない.

 現在は沖縄県が主産地であり, 5月に植え付け, 11, 月ごろ収穫される. 圃場を畝立てし, 50cm間隔に1本の割合で前年収穫した根茎の1塊を定植する. 本州でも栽培は可能である. ただし, 東北地方以北では地温を上げるためと雑草防除にビニールマルチをする. また, 地温が低下するため, 地中に植えたままにしておいた状態(地植え)では越冬できない. このため, 秋に茎が枯れた後, 掘り取り, 籾殻などの中に埋めて室内で貯蔵する必要がある. とくに加温する必要はない. 5月に入り気温が上昇すると発芽するので, このときに植え付けをする.

 3.3 食品としてのウコン
 調味料のカレーの主成分でもある秋ウコン(ターメリック)は, 色がよい, 味がよいだけで広範に栽培されてきたとは考えにくい. 当初はどうあれ, 長い間継続して栽培され, 利用されてきたのは本来その栄養・薬効を含めて体に良いからであったに違いない. 薬としてではなく, カレーとして常食するものにウコンを取り入れた先人の知恵は, 敬服に値する. まさに“医食同源”である. 熱帯地方の高温多湿の環境下ではとりわけ食物の腐敗が早いだけでなく, さまざまな微生物が繁殖しやすい. 当然, 病原菌やウイルス病も広まるのも速いであろう. その条件下で健康を保ち, 病菌に感染するのを防御するには, これらに対する免疫力・抵抗力を強くもつことが不可欠である. それを, ウコンに見出したのではないだろうか. しかも, 先に見たようにこの植物は栄養繁殖のみで, いわゆる品種改良が極めて困難である. 逆にいえば, 安定した品質を維持する上でこの上なくよい形質をもっているとも言える.

 インド洋に浮かぶスリランカは, 古代インド仏教を今も国民の大半が信じるという古代インドの伝統を引いているが, ここでは三食ともカレー料理である. また, 商店の前には朝, ウコンの粉を撒くという伝統もある. ウコンが神聖視され, 大切にされてきた証ではないだろうか. なお, スリランカでは今も生薬が多く利用されているが, スリランカ第二の首都とも言われるキャンディー市の有名な生薬専門店でも春ウコンは販売されていず, 店員も春ウコンについて知らなかった.

 関連するが, インドの隣のバングラデシュでも三食ともカレー料理であるが, ダッカにある国立農業試験場の生薬の専門家も春ウコンについては全く知見を持っていなかった. このように, インドに近い国でさえ, 現在では, 春ウコンは忘れ去られた存在となっているようである. このように世界的に見て, ウコン生産・消費の大半は秋ウコンとなっている.

 クルクマ属ではないが, 親戚にあたるショウガ科のなかには, 私たちの食生活にもなじみの深いショウガやミョウガがある. こちらは, ウコンと違いかなり北方まで栽培できる. これらにも薬効があることが知られており, 単に食事を豊かにする薬味としてだけではなく, 体にいいという先祖の生活の知恵ではなかったかと思われる.
  
 3.4 ウコンと伝統行事
 ウコンに関しては, 文化的にも興味が尽きない. 商店の前に撒くことは上に紹介したが, このほか熱帯アジアでは, ターメリックで着色した米や木綿を結婚式やお祭りに多用し, お守り(魔よけ)にもしているところがあるという. たとえばバリ島の結婚式では, 新郎新婦のテーブルに「芭蕉の葉にウコンの根とチャンパカという木蓮科の花を載せた飾り」を用意するという(十数年程前の朝日新聞の日曜版). 新聞にはウコンについての説明は何もされていなかったが, ウコンには二人の末永い健康を願う思いが込めれれているのではないだろうか.

 3.5 沖縄が世界的な主産地
 薬効からみて, 太古は春ウコンが主流であったと考えられる. しかし, いつの時点からかは不明であるが, 春ウコンは秋ウコンにとって代わられた. この理由を考えてみると, いくつかあげることができる. その一つは, 春ウコンは生育が比較的容易な沖縄で栽培されているが, (秋)ウコンに比べてやや手間がかかると言われている.

 (秋)ウコンはそのまま植えておいても多年草のように増えるが, 春ウコンの方は, いったん掘り起こし植え替える必要があるとのことである.

 その他, 食味の違いも大きい. 春ウコンは極めて苦みが強い. 人によっては「この苦みが好き」, 「とくに問題ない」という人もいる一方で, 中には勧めても「どうしても飲めない」という人もいる. さらに, 春ウコンに比べて秋ウコンが多用途に利用できる点も大きい. 食品だけでなく, 黄色の染料として現在も利用されているように, 色が鮮やかで落ちにくく防虫効果もある染料としても優れた性質がある. また, ヨーロッパではパエーリャに入れるサフランの代替品としても珍重されたようである. もちろん(秋)ウコンが一定の薬効があることは広く認められている.

 これらを総合して考えると, どこかで春ウコンに代わって秋ウコンが主流を占めるようになったと思われる. 前述のようにカレーを常食とするスリランカ, バングタデシュなどで春ウコンを探したが, 全く知られていなかった. このことからも, かなり以前から春ウコンは省みられなくなっていたと思われる.

 わが国は, 江戸時代では生薬として珍重された春ウコンも, 明治以降は全くすたれてしまった. これは西洋医学の発展と軌を一にしていると思われる. 漢方医学は全くといっていいほどかえりみられなくなったからである.

 とはいえ, 効用は確かであり, 栽培地・沖縄では, 民間薬としてほそぼそながら伝えられてきた. このことが現在, 私たちが春ウコンの恩恵に与かることができる最大の理由であり, 伝えつづけて頂いた沖縄の人たちに深く感謝せずにはいられない. そして, 今後, 沖縄が健康のシンボルとして世界中から脚光を浴びるに違いないし, また, そうしなければならないと思う.

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